150人に聞いた!五月病を感じた理由とは?原因&対処法を医学博士が解説!

専門家に聞く、メンタルヘルス

mentallyでは、2022年4月に150名の男女を対象に「五月病に関するアンケート」を実施しました。

その中で「五月病を感じたことがありますか?」という質問をした結果、「ある」と答えた人の割合は61.3%でした。

アンケートの結果から五月病は多くの人が感じる可能性のあるものだとわかります。では、五月病を予防するためにできることや症状が表れたときの対処法などはあるのでしょうか。アンケート結果を元に、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長である堤多可弘先生にお話を伺いました。

そもそも「五月病」とは? 症状や予兆について解説

──「五月病」とはそもそもどのような病気なのか教えてください。

「五月病」とは、正式な医療用語ではなく、環境の変化によって起こるメンタル不調を総称した俗語です。アンケート結果にもある通り、仕事や人間関係など、4月に環境の変化が起こる人は多いと思います。

人間は環境の変化に無意識的に対応しようとします。そのため、いつも以上に気を張り、無理をしてしまいがちです。そのような状態が続くと当然疲れやストレスがたまり、メンタル不調を引き起こす人が多くなるのです。

「五月病」という名前がついていますが、5月に限ったものではありません。1年を通して、環境の変化が起こったときに似たような状態になってしまう人もいます。

──「五月病」になるとどのような症状があらわれるのでしょうか?

アンケート結果を見ても個々が感じる症状はバラバラですが、メンタル不調を総称したものが「五月病」なので、人によりけりだと言えます。

ただ、メンタル不調の中でも一般的に起こりやすいと言われているものから順に出てくることが多いです。

例えば、「不眠」「やる気が出ない」「仕事に行きたくなくなる」「食欲の変化」などが考えられます。また症状が重くなってくると、気分が落ち込んでしまったり、電車に乗れなくなったりすることも。過呼吸を起こしてしまうことも起こり得るでしょう。

──お話を伺っていると「適応障害」に近いのでは、と感じました。

そうですね。病院で受診をすると「適応障害」と診断される場合もあります。人によっては「うつ病」や「躁うつ病」だと診断される場合もあるでしょう。

症状がどのようなものであれ、4月にため込んでいた疲れやストレスが原因でメンタル不調につながったものはすべて「五月病」と呼ばれます。世間が勝手に総称しているだけで、人によって発症している病気は異なってくるのです。

──五月病の症状が出る予兆はあるのでしょうか?

予兆というよりもメンタル不調を起こす前段階のようなものですが、「食う、寝る、遊ぶ」のどこかに変化が起き始めます。これはすべてのメンタル不調に共通して言えることです。

また、自分の考えの中で、過度に「べき思考」にとらわれていたら黄色信号です。例えば、連休に入る前に仕事を終わらせる「べき」のような考え方で、自分に対してムチを打ち始めているときは少し危険だと思ってください。

五月病になる原因となりやすい人の特徴は?

──アンケートの中で、五月病を感じた主な原因として「新年度を頑張りすぎること」や「新しい環境になじめない」「人間関係にストレスを感じている」との回答が多くみられました。これは、「べき思考」にとらわれていると言えるのでしょうか。

そうですね。とにかく環境の変化に上手く順応できずに、身体と心に負荷がかかり過ぎていることがそもそもの原因です。

──「理想と現実のギャップについていけない」という原因についてはどのようにお考えですか?

「理想と現実のギャップ」と一口に言っても、おそらくさまざまな意味が含まれていると思います。例えば「条件が聞いていたのとは違う」や「ホワイト企業だと思っていたけど、もしかしたらブラック企業かも」など。

ほかにも、自分の中の理想と現実のギャップ、つまり「5月にはもう成果を出しているはずだったのに、目標には遠い」「1ヵ月間頑張ったけど、成長している気がしない」みたいなものです。

いまはSNSで周りのキラキラしたストーリーを見て、つい自分と比較してしまう人が多いため、余計に理想と現実のギャップに心が打ちひしがれてしまうことは多いと思います。

──ゴールデンウィークで身体や心は休まるように思えるのですが、連休明けに「五月病」のような状態になってしまう方がいますよね。これには何か理由があるのでしょうか?

これははっきりと証明されていないので、あくまで個人的な仮説として聴いてください。私の経験上、確かにがんばって一息ついたときに、メンタル不調を起こす方は多いです。

考えられる要因は2つあります。

要因① 休むことで不調に気づいた

ひとつは、休むことで不調に気づく場合です。4月からメンタル不調気味ではあったものの、気が張り詰めていて、気づかなかった。それが連休になって気が緩むので、初めて自覚しはじめるというパターンです。

要因② 自律神経の乱れ

もうひとつは、自律神経が乱れてしまう場合です。自律神経は大きく分けると交感神経と副交感神経に分けられます。交感神経とは身体や心を活動的にさせる神経、副交感神経とは身体や心を休ませる神経です。本来であれば人間の自律神経は1日の中で交感神経と副交感神経が適度に切り替わりながら、バランスを維持しています。

しかし4月に環境が大きく変わり、順応するために1ヵ月間がんばっていると、交感神経が優位な状態が続きます。その状態でゴールデンウィークになると今度は、副交感神経が優位になる状態が続き、自律神経のバランスがおかしくなってしまうのです。

そのため連休が明けても、副交感神経から交感神経に上手く切り替わらず、やる気が出ない、集中力が続かないといった状態になってしまうのではないかと考えています。

──五月病になりやすい人はいるのでしょうか?

性格で言えば、「べき思考」にとらわれやすい、真面目な人や努力家の人です。一方、楽観的で刹那的に生きている人はなりにくいと思います。

また私は「働く人の4大ストレス」と言っていますが、「業務内容・働く環境・人間関係・プライベート」のどれかに大きな変化が起こっている人はリスクが高いと言えます。特に4つ全てに変化がある人は気をつけていただきたいです。

佐藤純平

佐藤純平

1990年生まれ。フリーランスのライター兼ライフコーチ。うつ病で引きこもりの兄を持つ。

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