食事の乱れが心の栄養不足につながる?管理栄養士が語る「食事と心の関係性」と「コンビニ食の活かし方」

専門家に聞く、メンタルヘルス

誰しもが欠かせない、毎日の食事。美味しいものを食べることで幸せを感じたり、食べすぎて仕事へのやる気が起きなくなってしまったりと、心と食事は何かしら関係していますよね。

そんな心と食事の関係性について、今回は管理栄養士として精神疾患の方に向けた栄養ケアを行っている那須 由紀子さんにお話を伺いました。メンタル不調に陥ってしまったときに活用できるコンビニ食品も紹介します。ぜひ今日から手にとってみてください。

栄養の約20%は脳に使われる?食事と心の関係性とは

──精神疾患における栄養ケアに注力されている管理栄養士の方は、珍しいのではないでしょうか?

珍しいかもしれませんね。私はもともと病院の管理栄養士として働いていて、内科・外科・精神科・歯科など、全診療科を経験しています。精神疾患の方だけではなく、腎臓病や糖尿病などの身体の病気を患っている、低栄養の患者さんの栄養状態をよくして、治療効果を上げることに取り組んでいました。

その後、精神科の病院で勤めることになって、精神疾患の患者さんを見るように。そこで、栄養不足と精神疾患にはつながりがあるんじゃないかと気づいたんです。

──精神疾患の方の食事には何かしら特徴があった、ということですか?

コーヒーを1日に10杯以上飲むとか、500mlのジュースを1日に8本飲むとか、甘いものを欠かさず食べるとか。他にも、野菜をほとんど食べない方も多かったように思います。

精神疾患の方には糖質依存や偏食になりがちなケースが見受けられます。だから栄養にも偏りが出てしまい、脳が正常に機能しなくなっているのではないかと思うようになりました。

──脳が正常に機能しなくなると、心にも不調が現れる?

心というのは、いわば脳が生み出した感情や思考のこと。専門的に言えば、脳内神経伝達物質というものが感情や思考を作り出しています。栄養が偏ってしまうと、脳内神経伝達物質が上手く合成されなくなるため、心にも何らかの影響が出るというわけです。

──なるほど。栄養不足は脳を不調にさせ、それで心も不調にさせてしまう、と。

そうですね。脳は肝臓の次に栄養を使う臓器です。肝臓より脳のほうが小さい臓器なので、脳が一番栄養を使っている臓器といえます。また、摂取した栄養の約20%は脳で使われるとも言われています。

また複雑なメカニズムの内臓なので、豊富な種類の栄養が必要なんです。要するに、脳は食事の影響をかなり受けやすい臓器であるということ。そのため栄養に偏りがあれば、脳が上手く働かず、心にも影響が出てしまうわけです。

ポイントは「タンパク質」と「野菜」。コンビニで買えるおすすめ食品とは

出典:Adobe Stock

──食事と心は密接につながっている。これを知るだけでバランスの良い食事ができれば一番だと思うのですが、なかなかできないという人が多いと思います。食事の際にまずこれだけは意識してほしいというポイントを伺いたいです。

まずは「おかず」をたくさん食べてほしいと思っています。メンタル不調に陥る人の多くは、糖質過多、たんぱく質不足な食生活をしがちなケースがけっこうあるんです。タンパク質は、肉や魚、大豆製品、たまごなどに多く含まれているものです。ごはんやパン、麺類など、主食ばかり食べていると栄養が不足し、メンタルも安定しづらくなります。

──あぁ、確かに主食ばかりを食べてしまいがちです。

例えば、朝はパンとコーヒー、昼はラーメン、夜は丼ものとお酒など、精神疾患の患者さんにはこういう食事をされている方が多いんです。それだと、やっぱり栄養は偏ってしまいます。

──例えば、コンビニでご飯を買うとしたら、何を意識すればいいでしょうか?

まずコンビニに行ったら手にとってほしいのは、サラダチキンや温泉卵・豆腐・サバ缶・枝豆などのタンパク質類と野菜類ですね。ただ、それだけだと足りないと思いますので、お弁当やおにぎりをそこに付け加えてもらえればと思います。

お弁当を選ぶ際は、幕の内弁当のようなおかずがたくさん入っているものを選んでもらいたいです。コンビニのお弁当はどうしても野菜が不足してしまうので、野菜もプラスしてもらえるといいかな、と。

あとは汁物です。カップ味噌汁に乾燥わかめを入れて食べるのもいいと思います。一方で、菓子パンとコーヒーだけというのは、おかずが全然ないメニューになってしまうので、避けてほしいですね。

──外食をする場合だと、どうでしょうか?

丼ものやカレー、ラーメン、パスタなどではなく、ファミリーレストランや定食屋などのおかずがたくさんあるご飯屋さんのほうが好ましいです。もし、丼ものやカレー・ラーメン・パスタなどを食べるときには、卵や野菜などのトッピングで調整してもらえたらと思います。

うどん屋さんやそば屋さんなら、なるべく定食を選ぶようにしてください。

──食後のデザート、間食のお菓子は欠かせない!という人もいると思います。

デザートを完全に禁止すると人生が楽しくなくなってしまうので、全く食べるなとは言いません。ただ、1日1回だけにしてほしいと思っています。

デザートやお菓子の代わりに、可能であれば果物を入れた豆乳ヨーグルトを食べてもらえるとベストです。甘いものは血糖値が急激に上がり、アドレナリンが出てその瞬間は幸せですが、その後急激に血糖値が下がります。だから、また食べたくなる。要は繰り返してしまい、いつの間にか癖になってしまうわけです。

そうすると血糖値の乱高下が起こりやすくなり、メンタルも安定しなくなるので、できるだけ避けるようにしてもらうほうがいいかと思います。これらの内容については、私の執筆した以下の書籍でも詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。

佐藤純平

佐藤純平

1990年生まれ。フリーランスのライター兼ライフコーチ。うつ病で引きこもりの兄を持つ。

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