【産婦人科医がお答えします!】PMS・PMDDに悩むパートナーと、どう接するべき?

専門家に聞く、メンタルヘルス

心身の不調から、キャリアや人間関係に悪影響を及ぼしかねないPMS(月経前症候群)・PMDD(月経前不快気分障害)。この問題に頭を悩ませているのは、当事者だけではありません。

PMS・PMDDに悩む人のパートナー、家族、友人、同僚……多くの人が抱える「どう寄り添うべきかわからない」「同性同士でも接し方が難しい」といったお悩みに、産婦人科医の高橋怜奈先生が答えます!

PMS・PMDDで悩むパートナーを支えたいけれど、自分のメンタルも心配

Q1:パートナーがPMS・PMDDで苦しんでいます。サポートが必要なことはわかりますが、どうすべきかよくわかりません。余裕がないときは、自分もメンタルダウンしてしまいそうです。

まずはどういったサポートが必要か相手に聞きましょう。どちらか一方が我慢したり尽くしたりするのではなく、お互いを理解するためのコミュニケーションをとることがポイントです。

最近は生理管理アプリのペアリング機能で、生理の周期や症状をパートナーと共有できるので、活用してみるのもひとつの方法ですね。周期が共有できれば予定も立てやすいですし、気の持ちようも変わってくるはずです。

ひとつ覚えていてほしいのは、自分のメンタルを壊してまで寄り添わなくていいということ。パートナーに尽くすことで最初はうまくいったとしても、きっと長続きしません。そのうち「こんなに尽くしているのにわかってもらえない」「どうして自分のことはケアしてくれないんだろう」と、見返りを求めたり相手に期待しすぎたりしてつらくなることもあるでしょう。

寄り添うことも大切ですが、根本的な治療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。本人がPMS・PMDDだと自覚していない場合もあるので、「つらそうだね。産婦人科を受診したら症状が緩和するかもしれないから行ってみない?」と、やんわり声をかけてみるといいかもしれません。実際、パートナーから受診を勧められて産婦人科に来る女性もいらっしゃいますよ。

ただ、声のかけ方には注意が必要です。相手を責めたり受診を強要したりするような言い方は控えてくださいね。

パートナーに、生理のつらさをどう伝えたらいいかわからない

Q2:パートナーに、生理のつらさが伝わりにくいと感じています。どのように寄り添ってほしいのか、うまく伝える方法はないでしょうか?

まず、自分がつらくなる周期(生理の何日前からつらくなり、いつ治まるのか)と症状を把握することが大切です。それらを記録した日記をパートナーと共有し、「そっとしておいてほしい」「一緒にいてほしい」「外出はしたくない」など、具体的な要望を伝えてみてください。

言葉で伝えづらい方は、参考になりそうな書籍やWeb上の記事を一緒に読むという方法も。PMS・PMDDで苦しんでいるときは冷静に話せないこともあるので、体調が良いときにしっかりと話し合っておくのがおすすめです。

PMS・PMDDでつらいとき、誰しも「察してほしい」と思ったり、感情的に八つ当たりしたりしてしまいがち。しかし、それでは仲がこじれるばかりです。相手に理解してほしいなら「男性にこのつらさはわからない 」と壁をつくらずに、コミュニケーションをとることを意識してくださいね。

会社で生理に関する理解を得るにはどうすべき?

Q3:ズル休みと思われがちで休みづらいのですが、理解を得る方法はありますか?社内でPMSやPMDDの認知度を上げて、お互いフォローできる環境をつくりたいです。

生理休暇は皆さんの権利なので、遠慮せず取得してほしいのが本音です。とはいえ毎月休むのは気が引けるし、職場環境によっては休みづらいのが現実ですよね。

「単なる不調」ではなく病気だと理解してもらうために、診断書を提出するのがよいでしょう。PMSやPMDD、月経困難症などで通院・服薬している場合は、診断書を取得できます。企業によっては産業医がいるので、毎月の受診日をつくってもらうのもひとつの方法です。

PMS・PMDDの認知度向上やフォロー体制の構築には、企業側の意識改革が欠かせません。ここ1〜2年、企業から女性のヘルスケアに関する講演依頼を頂くことが増え、生理への意識が高まっていることを感じます。こういった取り組みがある企業では、生理休暇も取りやすいだろうと思います。

もし提案できそうだったら、他企業の取り組み事例をもとに、社内勉強会や講演の開催を打診してみてはいかがでしょうか。

「女性特有のことだから……」と引け目を感じてしまうかもしれませんが、男性も不妊治療や妊婦健診で産婦人科を訪れる機会があります。多くの女性が抱えている「休みづらさ」を、一部の男性も同じように感じている、もしくは今後経験する可能性があるのです。

女性ヘルスケアを理解することは男女ともに働きやすい会社づくりにつながりますから、決して無駄にはならないはずです。

同性同士の生理事情…どうやって接するのが正解?

Q4:PMS・PMDDは人それぞれ症状が違うため、同性でもどう寄り添ったらいいのかわかりません。対策があれば教えてください。

これは難しい問題ですね……。そっとしておいてほしい人もいればかまってほしい人もいるでしょうし、「大丈夫?」と声をかけられたら、「私、不機嫌そうに見えるの?」とさらに不機嫌になってしまう人もいるでしょう。サポートが必要なのであれば、本人の要望を聞くのが一番です。

また、相手との関係性によっても対処法は変わってきます。たとえば友人だったら、「PMS・PMDDでイライラしてるのかな?そういうときもあるよね」「なかなかわかってもらえず、つらいよね」と理解を示すだけで十分だと思います。

しかし職場だったら、イライラして周りに気を使わせる方にも少なからず問題がありますよね。ましてやそれが上司だとしたら、仕事に影響が出たり周囲の人がメンタルダウンしたりする危険性もあるでしょう。困ったときは、迷わず第三者に頼ってください。

生理への意識・理解は母子間でもさまざまです。母親が付き添って受診する小中学生がいる一方で、「生理痛がつらいけど、母が産婦人科はまだ早いと言うので受診できません」と相談されることも。

このように、たとえ近しい関係性だとしても他人の生理の悩みを理解するのは難しいのです。相手をうまくサポートできなかったとしても「自分の受け取り方に問題がある」「自分は心が狭いのではないか」なんて思う必要はありません。まずは自分のメンタルを第一に考えること。これを忘れないでくださいね。

白石 果林

白石 果林

1989年生まれ、さいたま市在住のフリーライター。生き方や働き方、メンタルヘルスに関心があり、インタビュー記事を中心に執筆。

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