2020年の春から続いている世界的な「コロナ禍」。変異を繰り返す新型コロナウイルスとともに、世界情勢も私たちの暮らしも大きな変化を強いられてきました。
そんな中、不安や落ち込みなどのメンタル不調、体の不調など、うつ症状を訴える人が急増。「コロナうつ」と呼ばれるようになっています。
今回は「コロナうつ」を正しく理解するために、特徴的な症状や原因、対処法を、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長である堤多可弘先生に詳しく伺いました。
目次
「コロナうつ」とは?症状と原因
──そもそも「コロナうつ」とはどういう病気なのでしょうか。
「コロナうつ」とは、コロナ禍でメンタルや体の不調を訴える人が増加したことに対して、マスコミが使い始めた言葉です。正式には「コロナうつ」という病名はありません。コロナ禍に突入してから約半年後の2020年夏か秋位から、「コロナうつ」という言葉が使用されるケースが増えてきました。
一般的に「コロナうつ」とは、新型コロナウイルスに関連したさまざまなストレスに起因するうつ状態や不眠や適応障害など、さまざまな症状を総称します。ただし、寝たきりでなにもできなくなる「うつ病」と違い、「なんだか落ち込みやすい」「以前ほどやる気になれない」「眠りが浅い」という軽微な症状に悩むことが、通常のうつ病とは違う「コロナうつ」の特徴です。
具体的には、次のような症状が「コロナうつ」の典型的な例です。
──具体的に「コロナうつ」になる原因としては、どのようなものがあげられるのでしょうか。
「コロナうつ」はコロナ禍に関連したさまざまなストレスが原因です。これまで日常生活で抱えていたストレスに、「コロナストレス」が上乗せされることで発症します。
具体的なコロナストレスとしては、以下のようなものが挙げられます。
「コロナうつ」になりやすい状況とは?
──多くの人がコロナ禍によるストレスを受けていると思いますが、コロナうつになりやすいケースはありますか?
コロナ禍によるストレスからコロナうつになりやすいケースは大きく分けて3つあります。
1.コロナ禍の中で新しい環境へ適応するストレスが大きいケース
特に「コロナうつ」になるリスクが高いのは、コロナ禍の中で進学・就職、転職といった新しい環境に適応しなければならないケースです。リアルなコミュニケーションがないことで、「新しい環境に慣れる」ことに失敗しやすくなってしまいます。
人事用語で新しい会社や組織に早く慣れて、職場に定着して戦力となることを意味する「オンボーディング」という言葉があります。もともと新しい環境になじめず、オンボーディングに失敗する人は一定数存在するもの。特に若手の場合、夢や希望と現実とのギャップから、組織や環境になじめないというストレスが生じがちです。
しかし、コロナ禍の前であれば、自分だけがうまく行かないわけではないと気づけたり、周囲からもサポートを受けることができました。一方、コロナ禍の今は「周りの様子がよくわからない」「ちょっとした質問もしづらい」「新しい人間関係がつくれない」と、新しい環境に適応するためのコミュニケーションが絶対的に不足しているのです。
2.承認欲求を満たす場が喪失したケース
2つめは、承認欲求を満たす場が喪失したケースがあります。その場合、これまでバリバリと働いていたビジネスパーソンでも「コロナうつ」を訴える人が多くみられます。
今までバリバリ働いていた人が「やる気」を失う原因として、会社や仕事へのエンゲージメントが得られないというのも大きな影響を与えているといえるでしょう。人間は社会的動物なので、他者に貢献していることで、「自分が認められている」という承認欲求を満たすことができます。
これまではリアルな雑談の場や飲み会、食事会などのノンオフィシャルなコミュニケーションから、自分が貢献し、認められていると感じられる場面が多くありました。しかし、そういう機会を失ってしまったことで、「仕事が楽しくない」「なんだかやる気になれない」と不調を感じるようになっているのです。
3.これまでの生活習慣や働き方が大きく変化したケース
3つめは、これまでの生活習慣や働き方が大きく変化したケースです。生活が突然変化したことにより、ストレスをこれまで以上に感じる人が増えることが原因です。
例えば、ビジネスパーソンであれば、オンラインが恒常化し、今まで以上にスケジュールが過密となることでストレスが増大する。子育て世代では自粛期間中に家事や子育ての負担が一気に増え、ストレスが蓄積するなどが挙げられます。
ちなみにオンライン中心の働き方が心身に与える影響としては、スタンフォード大学の報告では以下のように指摘されています。
▼オンライン会議の心身への影響
- 画面に映った顔をずっと見ていることによる圧迫感がある
- 長時間座ったままの姿勢になる
- 運動することが減る
- 認知機能の負荷が大きく、リアルよりも神経を使う