どんなときでも希望はある。漫画家と心療内科医が語る「ヘルシーに生きるためのご自愛のススメ」

ウェルビーイングを保つために大切にしていること

「どうぞご自愛ください」

仕事の連絡や手紙などの結び言葉として使われる「ご自愛」という言葉。一般的には他人を気遣うために使いますが、自分に対してご自愛をする方法を紹介している本があります。それが『万年不調から抜けだす がんばらないご自愛』です。

今回お話を伺ったのは、著者・竹内絢香さんと監修した心療内科医・鈴木裕介さんのお二人。本を出版することになったきっかけやご自愛をすることの大切さについて語り合っていただきました。


何をするのもおっくう。うつっぽい症状を繰り返さないために


──本日はよろしくお願いします!突然ですが、『万年不調から抜けだす がんばらないご自愛』でご一緒されたお二人は何がきっかけで知り合ったのですか?

鈴木裕介さん(以下:ゆうすけさん):Twitterでしたよね。

竹内絢香さん(以下:竹内さん):そうでしたね。ゆうすけさんを知ったきっかけは、私も所属しているクリエイター・エージェントである株式会社コルクの担当者から紹介してもらったことでした。「お互いメンタルヘルス系の本を出しているし、相関性があるから話してみたら」って。それでTwitterのDMを送りました。

ゆうすけさん:そうそう、竹内さんから連絡してくれましたね。ぼくの本を読んだ感想も書いてくれていたと思います。

竹内さん:ゆうすけさんも私の本を読んだ感想をTwitter上に書いてくれていましたよね。当時私は気分が落ちていたこともあって、話を聞いてほしいなという思いもありました。

──気分が落ちていたというお話がありましたが、具体的にはどのような状態だったのでしょうか?

竹内さん:ゆうすけさんにお会いする前は、たぶんうつだったんじゃないかなと。受診してはいなかったので、正確なことはわからないのですが……。何をするのもおっくうで、朝ベッドから出られないとか、カーテンが開けられないとか。あとは食欲も全然なくて、すごく痩せてしまったり、お風呂にも入れなかったり。人に会うこともできなかったので、本を読むか漫画を描いて過ごしていました。

当時は、「仕事が忙しいからだ」と見て見ぬ振りをしていたんですよね。前作の『がんばらなくても死なない』が販売された頃にはある程度回復していたので、ゆうすけさんとお会いし、相談させてもらいました。

──うつっぽい症状を繰り返さないためにでしょうか?

竹内さん:そうですそうです。どうしてそのような状態になってしまうのか、自分の人生観も含めて、会って早々にお話したのを覚えています。いま思うと、急にそんな話をされてびっくりしたんじゃないかな(笑)。

ゆうすけさん:いやいや、面白い人だなと思いましたよ。

竹内さん:そう感じてくれる寛容さ!ありがたいです!

ゆうすけさん:竹内さんは、普段はすごく温厚だし、善良ですけど、怒るときはものすごく怒るんですよ。

竹内さん:そうなんです。私、髪が逆立つぐらい怒ることもあって(笑)。

ゆうすけさん:そういう怒りってどこから来るのかって話をよくしたりして、楽しかったですね。

教えてもらったことを即漫画化。描くことで自分を俯瞰できる

──竹内さんは、実際に鈴木先生に相談してみて、どのように思われましたか?

竹内さん:やはり専門的な知識があるプロフェッショナルに話を聴いてもらうのは、価値があることなんだなと実感しましたね。お医者さんだという信頼感もありますし。

あと、ゆうすけさんは常に「何を話してもいいよ」というスタンスで話を聴いてくださるんです。「こういうことを話したら、困らせちゃうかな」と思わなくていいというか。

私はそれまで自分のメンタルの調子が崩れていることを認められずにいました。病院に行かなかったのも、「病名がついてしまったら周りから腫れ物に触るように扱われるんじゃないか」とか「周りに置いていかれて負けてしまう」とか、そんなふうに思っていて。でもゆうすけさんは「全然大丈夫だから! なんでも話していいよ」というスタンスで初回から接してくれました。

ゆうすけさん:仕事で慣れているというのもあると思うけど、ぼくはどんな話をされても困ったり引くこととかはないですよ。

竹内さん:ジャッジせずに、本当に私の話をそのままキャッチしてくださる感じがしました。どんなに暗い話題でも「全然大丈夫だよ」と言い続けてくれたから、「私はそれに乗っかればいいや」と思えて、素直に話すことができたんだと思います。

──へぇー!「何でも話していいよ」というスタンスで話を聴いてもらうことはなかなかないですよね。

竹内さん:そうなんですよ。だから正直に言えば、最初はすごく変な人だと思っていました。「こんなこと話しても受け入れてくれるんだ」って(笑)。

ゆうすけさん:そんなふうに思っていたんですね(笑)。実は昔、深刻な状況に苦しんでる友達の話をうまく聴けなかったり、関わりきれなかったことが何度もあって。「大事な人の力になれなかった」と悔しさがずっと残っているんです。それで、ピンチに陥った身近な人の役に立てるような人間になりたかった。だから竹内さんのように、他の人に話せないようなことまで自分に話してもらえるのは信頼の証だと思うので、誇り高い気持ちになりますね。悔しい経験も無駄ではなかったと思えます。

竹内さん:すごくいい話!

──竹内さんは、鈴木先生から教わったことを漫画にしてTwitter上で発信されていましたよね。

竹内さん:はい。私は漫画を描くことで自分を俯瞰して見ることができるんです。それに、描いたトピックについてはあまり気にならなくなる。だからゆうすけさんとお会いして話を聞いたときも、漫画にしてTwitterに載せていました。

ゆうすけさん:話したことをすぐに漫画にしてくれていましたね。

竹内さん:発信してみたらかなり反響があって。自分のために描いていたんですけど、読者の方も同じような思いを抱えているんだなって。

ゆうすけさん:それが『万年不調から抜けだす がんばらないご自愛』の大元でしたね。

竹内さん:そうそう。Twitterで発信をしていたのを、出版社の方が見て声をかけてくださったんです。ほとんどゆうすけさんに教えてもらったセルフケア方法だったので、監修を依頼しました。そうしたら2秒後ぐらいに返事が返ってきて。

ゆうすけさん:「いいよー」って(笑)。

竹内さん:「いやいや、軽っ!」と思いました(笑)。

ゆうすけさん:お友達と本を作れるなんて、すごく楽しいじゃないですか。それに自分の伝えたことが本として形に残るとありがたいんですよね。友達や患者さんに渡せるので。それにぼくが書いた本よりも、コミックエッセイのような本の方が読みやすいことも多いんです。

竹内さん:確かに。「読みやすい」って言ってくださる方が多くて、嬉しいですよね。

ゆうすけさん:実際ぼくは友達や患者さんに30冊ぐらい渡しています。

竹内さん:ええ、すごい!私も地味に配っています。

佐藤純平

佐藤純平

1990年生まれ。フリーランスのライター兼ライフコーチ。うつ病で引きこもりの兄を持つ。

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