どんな欠点も個性だと考えてみる。旅する起業女子・杉野遥奈が自分を守るために選んだ生き方とは

ウェルビーイングを保つために大切にしていること

近年、会社員からフリーランスに転身するビジネスパーソンは増えています。

フリーランスに転身するビジネスパーソンの中には、「自己実現をするため」「時間や収入に囚われずに働きたいため」など、会社員としての働き方が自分に合っていないと考える人も多いようです。

今回インタビューをしたのは、会社員時代に2回のメンタルダウンを経験し、フリーランスに転身した杉野遥奈さんです。現在は、株式会社STARTYの代表として活躍されています。

「会社員時代は何事にも120%努力しないと価値がないと思っていた」と話す杉野さんが、フリーランスに転身した理由や、自分を守るために大切にしている価値観をひもといていきましょう。

120%努力しなきゃ。2回のメンタルダウンを経験した会社員時代

──杉野さんは過去にメンタルダウンを経験されたとのことですが、当時の状況を伺ってもよろしいでしょうか?

サイバーエージェントに勤務していた頃、2回のメンタルダウンを経験しました。

1回目のメンタルダウンは1年目の頃です。もともと、大学生時代から旅が大好きだった私はいつか旅暮らしをしたいと考えていました。そこで、IT系のスキルを身につけながら、若手の頃から成長できる環境が整っているに入社しました。

でも、いざ入社をすると日々の業務に集中してしまい、いつの間にか仕事のことしか考えられないように……。頭では常に仕事のことを考えている状態が半年ほど続き、睡眠や休みを十分取らない日々を過ごす中で、いつのまにか自律神経失調症などのメンタルダウンに陥ってしまったんです。

──「旅暮らしをしたい」という目的も忘れるほど、仕事に集中していたのですね。

そうですね。当時は旅暮らしのために入社したことを忘れるほど、仕事人間になっていました。自分への期待値がとても高く、理想の自分にならなきゃ……と無理をしていたのだと思います。

──ちなみに、杉野さんにとっての理想の自分像とはどんなものでしたか?

任されたタスクを時間内に終わらせるだけでなく、プラスアルファとして周囲に気を遣って行動ができる人間です。当時は、とにかく効率よく仕事ができる人間になりたかったですね。

人によって、「任されたタスクを期限までにこなせばいいや」「80%の力でがんばればいいや」など、自分にとって心地のいい努力の仕方があります。その頃の私は、何においても120%がんばらないと価値はないと考えるタイプだったので、睡眠時間や休みを削ってでもがむしゃらにがんばっていました。

でも、そんな理想の自分を追い求めすぎたり、現実の自分とのギャップに苦しくなったりしたことで、結果的にメンタルを崩すことになりました……。

──なるほど。その後、2回目のメンタルダウンを経験されたとのことでしたね。

はい。2回目のメンタルダウンは2年目の頃、新規事業立ち上げの責任者に抜擢されてからです。その頃、ちょうど仕事を辞めて旅暮らしをするかどうか迷っていた時期だったのですが、せっかくのチャンスなので責任者としてがんばることにしました。

しかし、思った以上にプレッシャーが大きかったことや、もともと自分の興味がある分野からかけ離れている事業だったこともあり、メンタルがだんだん弱っていきました。

メンタルダウン回復のきっかけは周囲の人の温かさ

──1回目のメンタルダウンから回復したきっかけはなんだったのでしょうか?

1回目のメンタルダウンでは、なんとか理想の自分に近づこうという思いで寝る時間もなく働いていて、笑えなくなったり突然涙があふれてきたりなど、いろいろな影響がありました。それに気づいてくれた同期や先輩が「さすがにがんばりすぎだよ。有給を使って休みを取ったら?」と気を遣ってくれて……。

入社してから有給をあまり使っていなかったので、1週間の休みをとって1人でタイに行きました。久しぶりに旅をしてみると、改めて自分は旅が大好きだと実感しましたし、なんで体調を崩してまで働いていたんだろうと我にかえることができたんです。

自分を俯瞰的に見られるようになったので、メンタルダウンから少し回復できました。

──タイから帰国して問題なくもとの業務へ戻ることができたのですか?

お休みをいただいたあと、先輩が部署異動を提案してくれました。入社してから元々自分が得意だと思っていたマルチタスクが苦手だということに気がついたのですが、先輩も私の得意・不得意に気づいていたようで……。

「がんばろうとしているみたいだけど向いていないことは誰にだってあるから、新規営業の部署に異動してみない?」と私を引っ張ってくれました。

──部署が変わってからはどうでしたか?

部署が変わってからは自分の得意分野に全力疾走することができたので、仕事でも結果を出せるようになり、だんだんとメンタル不調からも回復していきました。

──それはよかったですね!2回目のメンタルダウンは新規事業立ち上げの責任者になってからとのことでしたが、どのようにして乗り越えたのでしょうか?

2回目のメンタルダウンになった大きな原因は、自分の本心では興味のない事業を成功させるために無理をして必死に働く必要があったからだと思っています。とはいえ、「自分でやると決めたんだから」と責任を感じて1人で苦しんで葛藤していたとき、別の部署で親身に話を聞いてくれる先輩が「やりたくないことのために心と身体を削るべきじゃないから、辞めるなり休職するなり考えてみたほうがいいよ」と言ってくれて……。

そのアドバイスに救われて、改めて自分の人生に向き合って様々な選択肢を考えた結果、会社を辞める決断をしました。

──1回目も2回目も周囲の人のアドバイスに救われてきたのですね。

その通りです!周りに恵まれていたおかげで、メンタルダウンから回復できたのだと思っています。

メンタルダウンしているときは、つい「今目の前にある世界が全て」だと感じてしまい、客観的に物事を考えられませんよね。そんな状態で冷静な決断をするのは難しいので、周りの人達が気付いてあげて声をかけてあげる。そんな環境作りが組織やコミュニティにとって大事なのでは、と思っています。

ともだ

ともだ

関西在住のフリーライター。うつ病の既往あり。HSP気質な自分を受け入れながらマイペースにフリーランスとして活動中。好きなものはお寿司◎

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