半径5メートルから変えていく。フリーライター・ゆぴが語る、ADHD・HSPと共存していく方法とは

ウェルビーイングを保つために大切にしていること

注意欠如・多動性障害(ADHD)は、主に「不注意」と「多動・衝動性」がみられる発達障害の概念です。一般的に20人に1人はADHDであると言われ、ADHDの性質を持っていると診断される子どもも増加しています。

参考:文部科学省「令和元年度 特別支援教育に関する調査の結果について」

参考:Woman type「【脳内科医監修】「20人に1人はADHD」でも、発達障害の診断は不確かなものが多い? :脳の学校代表 加藤俊徳さん」

「社会不適合というのは、その社会が悪いわけであって、個人を指す言葉ではないと思うんです」

そう語るのは、注意欠如・多動性障害(ADHD)・Highly Sensitive Person(HSP)の性質を持ちながら、フリーライターとして活躍されているゆぴさん。

今回はゆぴさんに、特性を持ちながら生きやすい環境を作るための工夫や自分を守るための工夫についてインタビューしました。

やってもできないのは私だけ?自分の性質が特異だと気づいた大学生時代


──ゆぴさんが注意欠如・多動性障害(ADHD)だと気づいたきっかけを教えてください。

友達からADHDの存在を教わったことがきっかけです。

ADHDは遺伝による影響が大きいと言われていますが、私の両親や親友など周りの人たちも私と同じような性質があります。そのため、小さいころから遅刻や忘れ物が多かったり、物を壊しやすかったりしましたが、それが特異であることに気づいていませんでした。

特に母は私とそっくりで、週に3日ほど習い事の送り迎えなどをしてもらっていたのですが、ほとんど開始時間に間に合ったことがなくて……(笑)。遅刻がデフォルトでしたね。食器を落として割るのも日常茶飯事なので、うちの食器は全部プラスチック製です。

参考:メディカルノート「ADHDと遺伝―親がADHDの場合、子どもに遺伝する確率は?」

──なるほど。では、ADHDの症状で困った経験は少なかったのですね……!

中学校や高校のころまでは「忘れ物はない?」「遅れないようにこの時間の電車に乗るといいよ」など、両親や先生からのサポートもあり、困ったり悩んだりする機会は少なかったです。

でも、大学に入ってから少しずつADHDによる支障が出てきました。

──どのように支障が出てきたのでしょうか?

とくに就活の時期ですね。大学生はみんな怠惰なものだと思いながら生活していたのですが、就活の時期になると周囲の友達がいきなりしっかりしはじめて……。

私は、今日がどの会社の面接なのかもわからず、面接にも遅刻して、スケジュール管理がボロボロでした。みんな怠惰な自分を装っていただけで、やればできるんだと衝撃を受けた出来事でしたね(笑)。

就職をしてからも、自分の性質をうまく誤魔化しながら働いていましたが、「周囲が当たり前にできていることがどうしてできないのだろう」と悩んでいました。そんなとき、友達にADHDのことを教えてもらい、病院に行ったら診断を受けました。

──診断を受けたのですね。実際に自分がADHDだと知ったときはどのように感じましたか?

正直、驚きはまったくありませんでした。でしょうね、という感じで(笑)。

ただ、自分がダメなわけじゃなかったんだと安心しました。それまでは、自分が不注意だから、ドジだから、と自分を責めてしまいがちでした。でも、診断を受けたとき、お医者さんから「ADHDは治るものではないので、うまく付き合っていくしかないです」と言われ、よかった……と感じたのを覚えています。

──ゆぴさんは人より繊細な気質を持ったHighly Sensitive Person(HSP)でもあるとのことですが、HSPであることに気づいたきっかけについても教えてください。

SNSを通じてHSPという概念を目にしたことがきっかけです。

昔から音や光に敏感だったり、人と会うだけで疲れて10時間以上寝込んだりすることが多かったのですが、HSPの特徴が自分にピッタリと当てはまっていました。単なる性格だと思っていたものに名前がついていたことにびっくりしましたが、ADHDを知ったときと同じように安心したことを覚えています。

生きづらい毎日を変えるための工夫はメモとツールのフル活用!

──会社員になってから、ADHDやHSPなどの気質によって苦労したことや困ったことはありましたか?

私は今まで3社でのお仕事を経験していますが、新卒で入社した会社では苦労しました。アナログな会社で営業職だったこともあり、遅刻に厳しかったり、社風が堅かったり……。いろいろと自分の性質による支障はあったと思います。自分は社会不適合者だと悩むこともありました。

ただ、2社目の広告代理店では大きく働き方が変わりました。個人の裁量が大きく、夜中まで働いているような部署だったので、会議に遅刻する人が多かったり、朝の出社時間がみんなバラバラだったり。そこでは、私の性質はあまり目立っていなかったように思います。

社会不適合者なんて言葉はありますが、2社目を経験してから、その“社会”という名の環境を自分で変えることができれば、不適合者ではなくなることを学びました。

──なるほど。2社目はゆぴさんにとって働きやすい環境だったのですね!

そうですね。昔イタリアにいったときも同じような経験をしたことがあります。イタリアでは電車がアナウンスなしに1時間遅れることがあるのですが、誰も文句を言わずに「ハハハ」と笑っていたんです。そんな光景、日本では考えられないですよね。

結局のところ、環境が生きやすさを決めるのではないかと思います。

──会社員からフリーランスに転身したのも、自分の性質や生きやすさと関係があるのでしょうか?

自分の力で挑戦してみたかったから、好きな仕事をしてみたかったからなど、フリーランスを選択した理由はたくさんあります。

その選択がADHDやHSPと直接関係しているわけではありませんが、フリーランスになってから自分の性質について気づいたことや学んだことは多かったです。

──具体的には、どんな学びや気づきを得たのですか?

自分で自分の性質を理解して対策を打ったり、環境を構築したりしなければ、ずっと生きづらいままだという気づきです。

ADHDやHSPであることがマイナスに働くときもありますが、「ADHDだから許してほしい」「HSPだから気を遣ってほしい」などのスタンスでいると、周囲からの見られ方や性質のイメージが悪くなってしまうと危惧しています。

私は「あの人はADHDだから遅刻しても仕方ないか」「この人はHSPだからあまり刺激的な話をしちゃダメだよね」と気遣われたり、面倒くさがられたりするのは嫌なので、自分で自分の得意・不得意を理解して、自衛していくことがとても大切だと学びました。

──なるほど!具体的にどのような対策を講じられているのでしょうか?

例えば、私は朝起きることが苦手なので予定を午後から入れるといった対策です。納期や時間を守ることも苦手なので、カレンダーに「集合30分前」「納期1日前」など一歩手前の予定を入れることもあります。

ほかにも、クライアントさんに余裕を持って納期を提示してもらう、前日までに納品されなかったらリマインドをしてもらうなど、周囲の協力も得ながら工夫しています。

──日常生活でも工夫していることはあるのでしょうか?

ADHDでも性質の幅は広いと思うのですが、私の場合はとにかく忘れっぽい性質が強くて……。例えば、ホテルでチェックインの時間や館内の案内を口頭で言われても覚えられず、結局案内用紙を見て確認するみたいな。

なので、とりあえず記録をすることは日常生活の中で習慣にしていますね。私の場合は、その記録をnoteとして発信しています。

ゆぴさんの記録「ゆぴの10分日記」

もう1つは、現代のツールを使いまくることでしょうか(笑)。毎日のメモをNotionで管理できるようにしたり、決まった予定はすぐにGoogleカレンダーへ入れたり。自分の脳みそをまったく信用していないので、信用できるツールに頼ることも工夫している点だと思います。

本当に自分が悪い?自分の外側にある原因を探すことが大切

──仕事や日常生活でいろいろな工夫をしているゆぴさん。ADHDやHSPの性質が人間関係に影響することはありますか?

人間関係については、すごく不思議だなと感じたことが1つあります。

あるとき、友達に「私って遅刻ばっかりするし物忘れも激しいのに、一緒にいるのが嫌にならないの?」と聞いたことがあるんです。その友達は「全然気にならないし、それよりも一緒にいる楽しさのほうが大きいから!」と言ってくれて……!

自分の性質を受け入れて愛してくれる人がいるんだなと知りました。これは仕事も同じで、自分の性質を知っていても仕事を任せてくれる会社や人は必ずいると思うんです。

私が2021年8月に出版した書籍『書く習慣』も、実は2回も締め切りを延ばしてもらい、本来の締め切りから3ヵ月遅れていたんです(笑)。ありがたいことに編集担当さんに「それでも書いてほしい」と言っていただき、無事に本を出すことができました。

──そんな裏話があったのですね!(笑)。

ADHDではない人からしてみれば、納期くらい守れ、遅刻しないよう頑張れと思うことかもしれませんが、いくら努力しても頑張っても、ひとりでできることには限界があります。生きやすく、働きやすい環境を作り、自分を受け入れてくれる優しい人たちと一緒に歩いていくことが大切だと思います。

──最後に、ADHDやHSPの性質から自分を責めたり、悩んだりしている人へメッセージをお願いします。

私からお伝えしたいことは2つあります。1つは自分の内側から原因を探す必要はないことです。

誰しも、「遅刻をせず、忘れ物をせず、パーフェクトに仕事をこなしたい」みたいに理想の自分像を持っているのではないでしょうか。そして、「それができないのは自分がダメだから」と自分を責めている人も多いかと思います。

そうやって自分を責めそうになったら、一旦自分の外側の原因を探してみてください。例えば、気象病を持っている人が、低気圧の日に不調になるのは自分が弱いからではなく、天気が悪いからですよね。ADHDやHSPも同じです。私は、どれだけ努力してもどうしようもないことは、自分のせいではなく性質のせいにしていいと思っています。そうすると、過度に自分を責めずに、「ここで努力しても仕方がない」とポジティブに諦めることができるから。

もう1つは、環境次第で自分の弱みが弱みではなくなることです。私は1社目の営業職時代、過去最高に社会不適合者レベルがマックスでしたが、その後の広告代理店やWebメディアの仕事では「なんだ、私って仕事できるじゃん」と感じることができました。周りの反応や自分への評価も1社目のころとはまったく違っていて、社会不適合というよりも「自分を取り巻く社会」が自分に合っていなかっただけなのだと気づきました。

そして、その社会というのは自分の半径5メートルくらいの範囲の話なので、環境を変えれば、自分の弱みが弱みではなくなることがあるかもしれません。私はよく「弱みを晒して自分の王国を作ろう」と言っています。自分の弱みを発信していれば、今の自分のままでも愛してくれる人や、共感してくれる人が必ずひとりは現れるはずなので、自分の王国を作るつもりで環境を整えていってみてください!

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ともだ

ともだ

関西在住のフリーライター。うつ病の既往あり。HSP気質な自分を受け入れながらマイペースにフリーランスとして活動中。好きなものはお寿司◎

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