自分に優しくなれた。うつ病漫画家やびーが発信を続ける理由

今、自分がここにいること

近年、20代の若い世代に発症する精神疾患が問題視されています。20~25歳の若年期はうつ病の好発年齢の一つといわれていますが、最近では若年者全般に注意すべき疾患です。

参考:厚生労働省「年代別・世代別の課題」

参考:若年労働者へのメンタルヘルス対策 ~セルフケア・ラインケア・家族との連携など~

テレビで活躍するアイドルやタレント・インフルエンサーも精神疾患をカミングアウトしたり活動を休止したりすることが増えました。

漫画家のやびーさんは、高校時代にうつ病を発症して以来7年間の闘病を続けています。やびーさん自身もうつ病について勉強をするまでは、得体の知れない恐怖を抱えている感覚だったといいます。

今回はうつ病について発信しているやびーさんに、メンタルダウンを経験した当時のお話や、うつ病漫画家としての現在のご活動について伺いました。

病気について学ぶことで、闘病生活が楽になった

──過去にうつ病に罹患。現在も闘病中とのことですが、メンタルに違和感を感じたのはいつ頃でしたか?

初めに違和感を持ったのは中学生の頃でした。当時はストレス源がはっきりしていたので、ストレス源から距離をおくことで回復しました。

その後、高校生になってから風邪を引く回数や楽しい気持ちがなくなることが増え、受診した結果うつ病と診断されたんです。高校生の頃から約7年ほど闘病を続けています。

──メンタル不調を実感してからすぐに受診をされたのでしょうか?

いいえ。初めは、なかなか受診できませんでした。

そもそも、本当に自分が病気なのかもわからなかったですし、病院が苦手だったこともあって……。でも、体調不良で高校の単位が危うくなったこともあり、病院へ通いはじめました。

その頃はあまり治療が進まず、高校卒業と同時に病院へ通うのを完全にストップ。大学に入ってから「このままじゃダメだ」と感じ、また病院へ通うことにしました。ここ数年は継続して受診できています。

──「このままじゃダメだ」と感じたきっかけはなんだったのでしょうか?

図書館でメンタル疾患の本を読んだことがきっかけです。うつ病に関する情報を調べているうちに、きちんと治すためにも病院へ通うことが大切なんだと思いはじめたんです。

学校の先生や周りの人たちにうつ病の知識を持っている人が少なかったこともあり、得体の知れない恐怖をずっと抱えている感覚がありました。でも、病気のことをきちんと勉強してからは、自分を客観的に観察できるようになったり、楽になる方法を知れたりしたので、闘病をする中ですごく意味があった行動だと感じています。

あの頃、病気について自分で勉強したことが今の活動にもつながっていると思います。

自分が歩いてきた道のりを“地図”にして共有したい

──現在、SNSなどでうつ病に関する漫画を発信しているやびーさん。発信を始めたきっかけについて教えてください。

漫画を描きはじめたのは大学の在学中でした。自分が闘病をする中で、欲しかった情報や知っておくべき情報を漫画にして発信しています。私もそうでしたが、闘病するにあたって病気の情報が必要であるにもかかわらず、その情報が届かない状況は意外と多いです。少しでも私のように苦しんでいる人を助けられたらと、漫画での発信を始めました。

▲やびーさんが発信されているTwitterのマンガ

──なぜ、漫画だったのでしょうか?

もともと絵が好きだったこともあるのですが、自分がうつ病になった経験を踏まえて、読みやすいだろうなと感じたのが漫画でした。

うつ病の症状の1つに集中力の低下があります。集中力が低下することで、本(文字)を読むことが難しくなる人(※)もいるのですが、私もその1人です。

私の場合は、漫画であればスムーズに読めた経験があったので、少しでも読みやすい形で情報を届けたいと思い漫画という形式を選択しました。

※参考:厚生労働省うつ病「こころの病気を知る」

──やびーさんのうつ病漫画ではご自身の経験を基にしているのですか?

そうですね。最初の頃は、自分の経験を基に漫画を描いていました。「私の場合はこういうふうにしたら上手くいったよ」という生活のコツを発信していたんです。

でも、発信を続ける中で、自分で勉強をした内容や、ほかの人の体験談を基に漫画を描くことも増えました。

──やびーさんは漫画だけでなく、「やさしい言葉」も発信されていますね。

はい。漫画では基本的に病気の情報を届けることを目的にしていて、得体の知れない病気について少しでも理解を深めてほしいとの思いがあります。私の場合、病気について情報を得たことで安心できた部分が大きかったので、同じように悩んでいる人に私が歩いてきた道のりを“地図”にして共有したいです。

Twitterでの発信は苦しんでいる人をサポートすることを目的としています。私のようになかなか受診ができない人も世の中にはたくさんいますよね。もちろん、闘病に関する治療はお医者さんや専門家に任せるべきですが、受診や治療のハードルはとても大きいです。

だから、私が過去に休学した経験や、病院に行った時の経験などを踏まえて発信することで、専門家に頼るまでの心のブロックを和らげたいと思っています。

「やびー」としての活動で、誰かだけでなく自分も助けている

──約7年間闘病しているやびーさんですが、うつ病とうまく付き合っていくコツはあるのでしょうか?

自己管理のコツをつかむことが大切だと思います。例えば、私は予定を入れるとき、前後2日間はお休みにしています。人と会って話をすると体力を消耗してしまうためです。無理に予定を詰め込んでしまうと、体調を崩してしまうことがあります。

人によって、必要な管理やペースは違うと思いますが、自分に合った管理方法を身につけることで、しんどい日には休む仕組みを作れると思うんです。

うつ病には日内変動があると言われていますが、私も朝はしんどくて夕方は元気なことが多いです。なので、大切な予定は夕方以降に入れるなどの工夫をしています。

──漫画での発信やイラストのお仕事などを続けるために気をつけていることはありますか?

体調が悪くなったり、メンタルに波ができてしまったりすることは仕方がないと思っています。だからこそ、自分の病気のことをきちんと伝え、休むときは休むことを大切にしています

また、体調を崩したとき「ごめんなさい、ありがとう」を伝えたら、あとは謝りすぎないことも大切ではないでしょうか。私の場合は、体調を崩してしまうことは仕方のないことだと受け入れ、申し訳ない気持ちを引きずりすぎないことで、少し気持ちが楽になりました。

──「やびー」として発信を始め、自分の中で変化したことはありますか?

そうですね。1つは、SNS上で「ありがとう」と感謝の言葉をいただいたり、存在を認められたりしたことです。私の中でもすごく意味のあった変化だと思います。

もう1つは、やびーとして発信をするときにもう1人の自分になりきれることです。私は今でもメンタルの波がありますし、落ち込む時もあります。そんな時、かけてほしい言葉や知りたい情報をやびーとして発信する。やびーになりきることで、自分に対して優しい気持ちになったり、冷静になれたりするんです。

誰かを助けたいという気持ちを自分にも向けてあげられることは、やびーとして発信をする中でいい影響を与えていると感じています。

うつ病を経て、完璧主義な自分が変わった

──うつ病になってから自分の中に生まれた変化はありますか?

やびーとして活動ができていることはもちろんですが、完璧主義を改善できたように思います。うつ病になったことで、完璧に物事をこなすことは難しいと理解できましたし、人からのお願いを絶対にこなさなきゃ!という思いを少し和らげることができました。

今まで、頼まれごとをしたときに、自分の中で吟味せずにOKしていました。即答で「やります!」みたいな(笑)。でも、一旦自分の体調と相談する段階を入れられるようになったので、かなり生きやすくなったと思います。

今までは少し無理をしすぎていたのかもしれません。

──最後に、メンタル不調を抱えている人へメッセージをお願いします。

動けない、働けない自分に対して「自分はダメだ。がんばってない」と思う人は多いかもしれません。でも私は、みんなめちゃくちゃがんばっていると思います。

例えば、ご飯が食べるのがしんどい中で食べるか食べないかを選択することや、お風呂に入ることや寝ることがしんどい中でも生きていること。それだけで、すごく体力や努力が必要なことだと思うんです。

症状で自分を責めてしまうことがあるかもしれません。病気になる前の自分と今の自分を比べてしまうこともあるかもしれません。でも、みんながめちゃくちゃがんばっている事実は絶対に覚えていてほしいと思います。

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ともだ

ともだ

関西在住のフリーライター。うつ病の既往あり。HSP気質な自分を受け入れながらマイペースにフリーランスとして活動中。好きなものはお寿司◎

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