メンタル回復のきっかけは、意外なものだった。投資家・山口豪志がとった傾向と対策

今、自分がここにいること

うつ病などの精神疾患の症状が落ち着き、安定した状態に回復することを「寛解(かんかい)」といいます。精神疾患の治療では寛解の状態がゴールとなり、薬物療法などさまざまな治療法が選択されます。

しかし、寛解までの期間は人それぞれ。同じ治療法を選択していたとしても、人によって「回復した」と感じるまでの期間には差があります。また、自分に合った治療法を選択しなければ、寛解までの期間が長引くことも。(参考:厚生労働省「うつ病とは」、こころの健康情報局 すまいるナビゲーター「うつ病ABC」)

「回復のきっかけは意外なところにあるのかもしれません」

そう語るのは、エンジェル投資家・起業家の山口豪志さんです。山口さんはメンタルダウンにより、2年ものあいだ不眠に苦しみました。今回は、山口さんが不眠から回復したきっかけや、二度と不眠にならないために気をつけていることなどを伺いました。

メンタル不調に苦しむ人の回復のきっかけをつかむ一助になれば幸いです。

うそをつくことが苦しかった。不眠に苦しんだ2年間

──簡単に自己紹介をお願いいたします。

エンジェル投資家・起業家の山口豪志です。最近は、SYG(Success for Your Goal)という、約30〜40社の企業を率いるチームの総帥として活動しています。

──はじめてメンタルダウンを経験したときのことを教えてください。

2019年から2021年の2年間、メンタルダウンから不眠になった経験があります。夜10時に眠っても、30分後には目が覚めるんです。そこからはずっと時計の針と追いかけっこ。結局、気づけば外が明るくなってきているといった日々を2年間続けました。

これまでさまざまなトラブルを経験し、波乱の人生を送ってきたのですが、不眠ほど辛いことはありませんでした。

──山口さんがメンタルダウンを生じた原因はあるのでしょうか。

僕の場合は人間関係が大きな原因でした。

当時、僕は複数の会社を経営していました。中でもウェイトを占めていたのが共同経営をしていた会社でしたが、その会社が資金難で……。共同代表をしていた人から「今月で会社を辞めてほしい」と言われたんです。資金の問題はどうしようもないとわかっていたので、仕方がないと代表を辞任しましたが、その後も営業顧問として会社をサポートすることになりました。

社長を辞め、営業顧問になったあと、どのように社員たちと関わったらいいのか……。その人間関係に悩んだことが大きな原因だと考えています。

──社員たちとの関わり方に悩んだことについて、もう少し詳しく伺ってもいいでしょうか?

はい。大きな問題は「会社の資金がギリギリだから代表を降りた」と言えなかったことですね。社員たちは僕の紹介で入社した人も多く、フレンドリーな関係性だったのですが「豪志さん、もっと営業頑張ってくださいよ〜(笑)」なんていじられることも多くて……。

実態としては売上を作るために色々と画策していましたし、かなり稼働はしていたのですが、会社が資金難だなんて社員に打ち明けられるわけありませんよね。当時、僕は東京と香港と長崎県の壱岐島で3拠点生活をしていたので「ごめん、ごめん。島での釣りが忙しくてさ〜」なんて、うそをついて誤魔化していました。

──かなり無理をされていたのですね……。他にもストレス源となる出来事はあったのでしょうか?

これは僕の考えですが、人間にとってストレスとなる問題は「お金の問題」か「人間関係の問題」の2つに分類できます。当時は代表を降りたことでの経済的ダメージは、もちろんありました。でも、僕ビジネスマンとしてはとびきりなんで(笑)。お金の問題はすぐに解決できました。

ただ、社員たちとの人間関係は本当に難しかったです。そもそも、僕は誰かにうそをつくことが苦手なのですが、この頃は会社のためにうそをつく必要があった。それが僕にとってかなりのストレスでしたね。

回復のきっかけは意外なところに転がっているかもしれない

──2年間不眠が続いていたとのことでしたが、医療機関を受診されたのでしょうか?

家から近いという理由で、一度だけ病院に行きました。でも、病院の先生と合わなかったこともあり、それきりです。

その後も市販の睡眠薬を服用しましたが、結局治りませんでしたね。

──不眠が治ったきっかけについて教えてください。

あまり大きな声で言える話ではないですが……。僕の場合は医療脱毛をしたことがきっかけでした。

──脱毛ですか!?

はい(笑)。2021年の春ごろ、妻や友人のすすめで脱毛に行きました。

女性にとっては脱毛は一般的になっていると思うのですが、男性で脱毛をしている人ってまだまだ少ないですよね。だから、持っている情報量も少なかったですし、右も左もわからん!みたいな状態で……。

1時間半の施術中、僕はずっと緊張状態だったんです。痛いし、怖いし、ドキドキするし。その施術が終わった途端「ああ、よかった、終わった」と、ピンと張り詰めていた緊張が一気に溶けたのがわかりました。

そのまま家に帰って布団に入ったらぐっすり。それで不眠が治ったんですよ(笑)。

※治療法・回復には、人それぞれ個人差があります。不眠にお悩みの方は医療機関を受診いただき、適切な治療を受けることを推奨します。

──山口さんの場合は極限状態を経験したことが、結果的に緊張の糸を切ることにつながったのですね。

恐らく、そうだと思います。きっかけは突拍子もないものですが、この経験がなかったら僕は今でもずっと不眠状態が続いていたかもしれません。

病院や薬など人によって適切な治療法はあると思いますが、僕にとってのきっかけが脱毛体験だったというだけです。回復のきっかけは意外なところに転がっているかもしれませんね。

──ありがとうございます。山口さんはメンタルダウンの経験をブログで発信されていますね。自身の経験を大勢の人へ発信しようと思ったきっかけはあるのでしょうか?

僕は業界内でそこそこ名前が知られていますし、隠し通すことは不可能だと思ったからです。いつ言おうかな……と迷っていたのですが、実はメンタルダウンの間は文章を全然書けなかったんです。

メンタルダウンから回復して、文章が書けるようになったタイミングでブログを発信しました。

──ブログを書けたことが回復の証明だったのですね!

そうですね。もともと文章を書くことは得意だったのですが、書けなくなったときはどうしようかと思いました。

僕のブログが同じように苦しむ誰かの役に立てばいいなと思います。

>>山口さんのメンタルダウンの経験を綴ったブログ

傾向と対策を知って自分のいる環境を変えることが大切

──不眠から回復して半年がたった今、また不眠になることはあると思いますか?

もうないですね。

──なるほど!断言できる理由はあるのでしょうか?

傾向と対策はどのような問題にもあると思っています。僕の場合、社員たちにうそをつかなければいけなかったことが原因でメンタルダウンに陥りました。僕だけの会社で僕だけが社長であれば、社員にうそをつくことはなかったと思います。

だからこそ今は、うそをつかなければいけない状況に身を置かないように意識しています。これから先、僕が社員を抱えることはないですし、社長になることもない。

今、SYGの「総帥」として活動していることが対策の一つとも言えますね。一企業にコミットするのではなく、企業集団で同じ方向へ歩んでいく。自分に合った方法で社会を変えていきたいです。

──これまでの経験を分析して、対策を万全にされているんですね。

そうですね。僕が波乱の人生を歩んできたのは「ギフト」だと思っています。自分で言うのもなんですが、僕、超優しいんですよ(笑)。

これは、人の痛みを人一倍経験しているからだと思っています。誰かの痛みや辛さがわかる。僕が優しくなれたことは、これまで経験したさまざまな痛みのおかげです。

──とても素敵です。最後に、山口さんと同じように悩んでいる人へメッセージをお願いします。

仮にメンタルダウンを経験してしまっても、命さえ失わなければ何度でもやり直すことはできます。だから、やってみたいことがある人は怖がらずに挑戦してほしいです。

先ほども申し上げた通り、僕の考えとして、人間のストレスや問題の原因はお金か人間関係の2種類だと思っています。あくまでも僕の考え方ではありますが、「お金は稼いで、嫌な人とは離れる」ことが大切です。

お金の問題は稼ぐことで解決します。嫌な会社や嫌な上司・同僚がいるのであれば、離れるのが一番です。無理をして一緒に居続ける必要はありません。自分を責めすぎず、生きていけたらいいんじゃないでしょうか。

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ともだ

ともだ

関西在住のフリーライター。うつ病の既往あり。HSP気質な自分を受け入れながらマイペースにフリーランスとして活動中。好きなものはお寿司◎

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