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一人で外に出るのが怖い…不安が消えない…
映画館や劇場など、閉ざされた暗い空間で長時間じっとしているのが苦手。電車の急行や特急といった途中で下車できない公共交通機関に乗るのも嫌で、銀行やスーパーのレジ列に並ぶのもできれば避けたい。外に出るのが怖い……。動悸や息切れが起こったりトイレに行きたくなったりしたとき、すぐに逃げられない状況を避けがちである。
こんなことはないですか。複数当てはまるようであれば、「広場恐怖症」かもしれません。
広場恐怖症は、動悸や息切れが起こったとき、トイレに行きたくなるなど強い不安に襲われたときに、すぐに逃げられない、助けが得られそうにない状況や場面に恐怖や不安を抱く心の病気です。DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)では不安障害に分類されます。
広場恐怖症は「広い場所」を恐怖する疾患ではなく、ギリシャ語で広場を意味する「agora=公共の場」を恐れる病気です。
外に出るのが怖い原因とは
広場恐怖症を発症すると、不安や恐怖の生じやすい外出を避けるなどの回避傾向が高まり、日常生活に支障をきたすことがあります。軽度であれば公共施設での買い物を避けネット通販を利用するといった方法で対処可能ですが、重度になると家に引きこもりの状態になってしまうことも。
広場恐怖症であっても、家族や友人、パートナーといった身近な人の付き添いがあれば公共交通機関を利用できたり施設に出かけられたりする人もいます。
1.個人的な要因
広場恐怖症になりやすいのは、もともと不安や恐怖心が強いタイプの人です。
幼い頃から内気で人見知りが強く、何事も一人でこなすことを恐れ、親から離れて行動するのが苦手だった人や、高所や閉所、犬などを怖がっていた人などは、広場恐怖症になりやすい性格であるといえます。
2.環境的な要因
子どもの頃に経験した否定的な出来事(養育者との別れや死など)は大切な人を奪われる強いストレスを与え、広場恐怖症の発症に影響します。また、広場恐怖症を発症しやすい人は、温かみの少ない家庭や過保護な環境で育てられた人が多いといわれています。
広場恐怖症の遺伝率は61%といわれています。女性は男性のおよそ2倍発症しやすく、ほとんどの人は35歳までに発症するといわれています。また、広場恐怖症の人の30〜50%は、パニック障害も併発します。
3.予期不安の影響
予期不安とは、動悸や息切れの生じるパニック発作を一度経験した後に、「また発作が起きるのでは」と不安な気持ちになることをいいます。
予期不安が高まると脳がストレスを脅威と判断してしまい、交感神経が優位になり、ますます動悸や息切れが生じやすくなる悪循環に陥りがちです。
外出が怖い…広場恐怖症の症状
広場恐怖症の代表的な症状は、スーパーマーケットやレジの行列、途中下車が難しい電車や飛行機などの公共交通機関、美容院や映画館といった長時間拘束される状況の回避です。なかには自宅に一人でいるときに恐怖を感じる人もいます。
人が多い、あるいは逃げにくい公共の場を避ける行動が半年以上継続し、日常生活や社会生活に支障をきたしているのが特徴です。一人で外出できないことにより気分の落ち込みやイライラ、自信の低下が生じることもあります。
公共の場に出かけたときに恐怖感が高まると、動悸や息切れ、「また発作が起こるかも」と思う予期不安などが生じることもあります。一人で外出するのは難しいけれど、家族や友人、パートナーの付き添いがあればなんとか外出できる人もいます。