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大切な人や身近な人が悪夢障害だと診断されたら…
「最近、繰り返し悪夢を見る」という訴えを家族や友人、恋人から聞いたら、あなたはどう対応しますか。「気のせいだよ」と励ますでしょうか。あまり症状がひどく長引くようであれば、病院の受診を促す場合もあるかもしれません。
追いかけられる、生命に危険が及ぶような夢を繰り返し見ており、目覚めた後も周囲の人に詳細を語れる場合は「悪夢障害」の可能性があります。大人の悪夢障害は、PTSDやうつ病、統合失調症などさまざまな精神疾患と併存して生じます。
原因により対処法が異なるため、まずどんな病気なのかを知っておくことが大切です。本記事では、悪夢障害とは何か、その原因や対処法を説明しています。病気の理解の参考になれば幸いです。
「嫌な夢ばかり見る…」悪夢障害の症状とは
悪夢とは、強い不安や差し迫った恐怖を感じる夢のことをいいます。
何かに追いかけられたり、自分の生命に危険が及んだりするようなリアルな夢です。通常の悪い夢であれば、目覚めてからぼんやり思い出されるだけですみますが、悪夢障害では目覚めてからも夢の内容を詳細まではっきり覚えているのが特徴です。
悪夢をみている最中に発汗や頻脈、口呼吸になるなど、自律神経のうち交感神経が優位なときの症状が現れる場合もあります。夜驚症(やきょうしょう)のように絶叫や体動は伴いません。
悪夢障害はレム睡眠の最中に起こりやすいといわれていますが、明確な理由はわかっていません。人間の睡眠サイクルは90分間ですが、その最後のほうで生じるのがレム睡眠です。一晩のうちに3〜5回現れ、急速眼球運動が生じます。
DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)では、睡眠覚醒障害群に分類されています。悪夢障害は子どもに多いですが、多くは脳の発達過程により起こるものなので大きな心配はいりません。まれに大人になっても続く場合があり、精神疾患の影響も考えられるため注意が必要です。
悪夢障害の原因
悪夢障害の有病率は小児期から青年期にかけて上昇し、1.3〜3.9%の養育者が就学前の子どもは悪夢を「頻繁にみる」「いつもみる」と証言しています。男女ともに10歳から13歳にかけて有病率が上昇します。女性は20歳から29歳にかけて有病率が高まり、男性よりも2倍高いのが特徴です。
大人が悪夢障害を発症する場合は、過去の心的外傷後ストレス障害(PTSD)がきっかけとなることがあります。PTSDによる悪夢は過去の外傷体験を再現するような夢であることが多く、同じ内容の夢を繰り返し見ます。
参考:ハートクリニック 「悪夢障害(Nightmares Disorder)」
1.気質的要因
大人の悪夢障害の気質的な要因のうち、代表的なものは心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。そのほかにも、悪夢障害を誘発しやすい精神疾患としてうつ病、不安障害、統合失調症が挙げられます。うつ病の中でも冬季うつは悪夢を見やすい疾患です。
不安障害は不安や緊張感が強い人がなりやすいため、悪夢を見ることが増えます。統合失調症の場合も、幻覚や妄想といった陽性症状の多い急性期には悪夢にうなされやすくなるでしょう。
2.環境的要因
就寝前のパソコンやスマホの使用、タバコやアルコール、カフェインの摂取など、脳の覚醒を促す習慣があると睡眠リズムが乱れやすくなり、悪夢を見る確率が高まります。夜勤や交代制勤務なども睡眠リズムの乱れに影響を及ぼしやすいです。
考え事やストレスがある場合も、脳が興奮状態に入ってしまい、就寝前にリラックスモードへ切り替えにくくなります。悪夢を見る回数を減らすためには、睡眠の質を悪くする生活習慣を改善する必要があるといえます。