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不安障害やうつ病の改善にアプローチする認知行動療法とは
認知行動療法には、さまざまなプロトコル(系統だった治療手順)が存在します。うつと不安に関連する精神疾患には個別の認知行動療法が開発されており、元の考え方が同じなので、治療法として似ているところがあります。
実際に治療で取り組む内容が似ている部分に関しては、共通する内容を抜き出し、より幅広い疾患に効果的に対応できるようまとめられています。これが「不安とうつへの認知行動療法の統一プロトコル」です。
不安とうつへの認知行動療法の統一プロトコルは、アメリカのボストン大学の教授であるデイビッド・バーロウ博士が開発したものです。治療の対象である個別の精神疾患だけでなく、合併症にも効果的であるといわれています。
参考:国立研究開発法人 認知行動療法センター「不安とうつへの認知行動療法の統一プロトコル」
認知行動療法とはどのような心理療法か
認知療法や認知行動療法は、認知に働きかけることで気持ちを楽にする心理療法(精神療法)の一種です。認知には、物事の受け止め方や考え方という意味があります。ストレスを感じたとき、私たちの物事の受け止め方はネガティブに偏りがち。
認知行動療法は、物事をさまざまな方向から受け止められるようにし、ストレスに柔軟に対応できるようにするのに役立ちます。認知行動療法は、決してネガティブ思考を無理やりポジティブに変えようとするものではありません。
むしろ、地に足のついた、現実的でしなやかな考え方を身につけることを目指します。私たちは自分が思うよりも物事を主観的に判断しがちです。認知行動療法では、強いストレスがかかるときに自然に頭に思い浮かぶ考え方のくせである「自動思考」に注目し、より適切なとらえ方に調整しようとします。
参考:国立研究開発法人 認知行動療法センター「認知行動療法とは」
認知行動療法の具体的な方法
実際に精神科や心療内科で認知行動療法を行う場合は、1回30分〜50分のカウンセリングを合計12〜16回実施します。回数は心理士と患者との間で話し合って決定します。2ヶ月から半年の期間が必要なことが多いです。
心理士との個別のカウンセリングを行う方が効果的ですが、ここでは自宅でも行えるような簡単な方法のみご紹介します。認知行動療法のエッセンスを試したい方はぜひ活用してみてくださいね。
1.感情の3つの要素をふりかえる
私たちの心と体は、ストレスを受けるとさまざまに反応します。
例えば、職場の人に挨拶をしたのに返事がなかった場合。あなたは「自分が何かしたに違いない」と感じて、悲しみや不安、焦りの気持ちを覚えるかもしれません。人によっては、聞こえなかったのだろうと考えて気にしないこともあるでしょう。
このように、人によって異なる物事のとらえ方を「認知」と呼びます。認知に応じて、気にしない、その場に立ちすくむなど「行動」が変わります。何も起きないこともあれば、不安になり動悸がすることもあるように、「体の感覚」も認知や行動に影響を受けるものです。
参考元:2003年 創元社 著者 大野裕『こころが晴れるノート』p.10
2.感情をじっくり味わい、再発予防
あなたを落ち込ませたり不安にさせたりする「認知」とは何でしょうか。状況に対する認知や行動、体の感覚を頼りに、振り返ることはできたでしょうか。紙に書き出してみると、整理しやすいかもしれませんね。
感情が生じる原因となる3つの要素、認知・行動・体の感覚を理解できると、立ちすくみや動悸などの症状に対抗しやすくなります。最初はつらいですが、嫌な感情や体の感覚を味わう練習をしてみましょう。これを「曝露」といいます。
例えば電車でパニック症状が起きるようであれば、途中で下車できる普通列車から電車に乗る練習をはじめてください。徐々に特急にも乗れるように、動悸や立ちすくみなど嫌な感覚に慣れる練習をするのです。
何度か練習することがうつ病や不安症の再発予防につながります。