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自分が「失感情症(アレキシサイミア)かもしれない」と思ったら…
最近、何をしても楽しくない。新型コロナウイルス感染症による自粛ムードの影響もあるけれど、それだけではない気がする。これまで楽しいと思えていた映画や音楽、小説ですら、以前のように楽しめない……こんな経験はありませんか。
人と話していても、話のあらすじは頭に入ってくるもののどこか他人事のようで共感できない。自分の心身の調子もよくわからず、疲れをためこんでは体調を崩す機会が増えた。上記にあてはまる項目が多ければ、もしかしたら失感情症(アレキシサイミア)の傾向があるかもしれません。
失感情症は病気ではないものの、放置していると心身症を発症する恐れもある状態です。早めに対処することで心身の健康度を高め、感情豊かに過ごせる日々を取り戻しましょう。
失感情症(アレキシサイミア)とは?
失感情症とは、ハーバード大学のシフオネス医師が提唱した概念で、自分の気持ちを自覚したり表現したりするのが苦手な状態を指します。神経性胃炎や過敏性腸症候群など、心身症を発症する仕組みを研究する中で発見されたものです。
近年では相手の気持ちを推し量り理解する「共感性」の欠如により生じる、対人関係の問題との関連が研究されています。
失感情症の傾向のある人は精神的ストレスがたまっていても気づけず、限界を迎えて身体症状化しやすい傾向を持っています。そのため、心身症を発症しやすいといわれています。
失感情症の状態になる原因は、脳の論理的思考をつかさどる左脳と、感覚的思考を補う右脳をつなぐ脳梁(のうりょう)の機能不全です。失感情症の発症には遺伝と、身近な養育者との間の感情的な交流の経験があるかどうかに影響を受けるといわれています。
参考:厚生労働省 eヘルスネット「失感情症(アレキシサイミア)」
感情がない人は存在する?失感情症の特徴とは
失感情症(アレキシサイミア)の状態にあるひとは、自分の感情や身体感覚を人に説明するのが苦手で、そういったものより客観的な事実やデータに目が向きがちな傾向があります。
周囲の人からは人間味がなくロボットのように見えるため交流が難しく、特に身近な家族やパートナー、友人との関係の間でトラブルに発展することもしばしば起こります。
1.自分の感情を言葉で人に説明することが苦手
失感情症の人は、自分の感情を言葉で人に説明することが苦手です。人からはポーカーフェイスで何を考えているのかわからないと思われがちで、本人も自分が実際何を考えているのか上手に説明ができません。
「楽しい」とか「ワクワクする」といった言葉の意味は理解できるものの、実際にそういう感覚になるとどのような感情が自分に湧き、体の感覚がどのように変化するのかは実感できない傾向があります。
2.想像力が制限されている
感情や身体感覚に気づくことが苦手なので、想像力やインスピレーションが試されるような仕事は苦手です。特に「大体こんな感じで、後はあなたの好きにして良いよ」などと指示されると、何をどうして良いのか分からなくなってしまいます。
人の気持ちを想像して推し量り、共感することも苦手です。そのため家族やパートナーなど周囲の人は「なぜ分かってくれないの」と不満をためこみがちになり、対人関係トラブルに発展することもしばしば。
3.感情や身体感覚よりも、客観的事実に目が向きがち
出来事に対する自分の感情や身体感覚よりも、客観的事実に目が向きがちな傾向もあります。自分を客観的に見すぎて、まるで自分がそこにおらず、夢の中のように背後から観察している感覚になることも。
例えば映画を観ても、あらすじや起きた出来事は語れますが、「怖かった」「ぞくっとした」などの感情や身体感覚には焦点化しにくい特徴があります。記憶に感情や身体感覚が伴わないため定着しにくく、見聞きしたものの記憶はすぐに薄れてしまいます。
感情を感じなくなる3つの原因
感情や身体感覚を意識したり言葉にするのが苦手な失感情症の状態になる原因としては、養育環境の影響や心身相関の影響、自閉スペクトラム症であることなどがあげられます。
もともと遺伝的にストレスへの弱さを持っている人が、養育環境の中で感情を通わせる交流の機会を得られない場合に、失感情症の状態になる可能性が高まります。
1.養育環境の影響
失感情症の人は、幼少期に身近な養育者から虐待やネグレクトを受けていたり、両親が不仲であったりして、自分の欲求を飲み込み感情抑制的な「良い子」でいざるを得なく過ごしたケースが多いです。
そのため、大人になってもどう対処すればいいのかわからない状況に直面したり、嫌な感情が湧いてくる場面になったりすると、防衛反応として心がシャットダウン反応を起こし、固まってしまうことがよくあります。