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何かあったわけではないけれど「死にたい…」
漠然と死にたい・消えたいと思ってしまう経験は、誰しもあるのではないでしょうか?一時的な感情であれば問題ないのですが、長期間続いている場合は注意が必要です。
WHO(世界保健機関)が定める「世界自殺予防デー」に合わせて、9月10日から16日の1週間は厚生労働省が毎年「自殺予防週間」と定めて啓発活動を行なっています。
本記事は、希死念慮・自殺念慮について注意すべきポイントと必要な支援につながる方法をまとめています。
コロナ禍によるテレワークや自宅学習の機会の増加により、悩んでいる人の顔が見えにくくなっている今だからこそ、改めて自分や身の回りの人の違和感・SOSのサインがないか、見直してみましょう。
参考:厚生労働省「令和3年度の広報の取組みについて(自殺対策)」
希死念慮とは?
死にたいと思っているが、具体的に死ぬ方法までは考えていない状態を「希死念慮」といいます。
「死にたい」と誰かに伝えられれば、周囲も死にたい気持ちがあるのだと理解できるでしょう。しかし、死にたい気持ちは口にしないものの、ただ漠然と死を願っている場合もあります。
ストレートに死にたくなることがあるのかを聞くのがためらわれる場合は「いなくなってしまいたいと思うことはありますか?」「消えてしまいたいと思うことはありますか?」といった聞き方をしてみましょう。
そして、気持ちに共感しつつ、必要な支援につながるようサポートするのが大切です。
自殺念慮とは?
希死念慮をひとりで抱え込む状態が続くと、自殺念慮に発展するおそれがあります。死にたいと思い、この世から去るための具体的な方法を考え始めていたら「自殺念慮」の状態だといえるでしょう。
もし、身近な人が死ぬ方法を具体的に考えていそうであれば、まずは事情を聞きましょう。急に身辺整理を始める、身なりに構わずふさぎ込むようになるといったサインが現れたら要注意です。
緊急性が高いと判断できる場合は、迷わず専門機関に相談してください。
声をかけるときは、なるべく私( アイ)を主語にしたアイメッセージを心がけます。「死にたいと思っているようで(私は)とても心配しているよ。あなたの話を(私は)聞きたいと思っている」と主語を私にして話すのがポイントです。
希死念慮(自殺念慮)の主な3つの原因
希死念慮(自殺念慮)は主に、個人的要因や家族的要因、社会的要因が考えられます。複数の要因がお互いに影響しあって希死念慮につながることが多いでしょう。
個人的要因にはうつ病をはじめとする精神疾患が、家族的要因には家族内のDVや虐待が、社会的要因には失業や就労困難が含まれます。
死にたい気持ちになるけれど、特に思いあたる理由もなくて困惑している人が、実はうつ病だった!ということがあります。希死念慮の原因により、その後の対処法が変わってきます。
1.個人的要因
個人的要因は、主にうつ病や双極性障害、統合失調症や境界性パーソナリティ障害、アルコール依存症、薬物乱用などが含まれます。特にうつ病は希死念慮と関係の深い心の病気です。
うつ病になると、気分の落ち込みや体の疲れが生じ、思うように働けなくなったり、動けなくなったりすることがよく起こります。これまで当たり前にしていたことができなくなるので、自責感が生じ、思いつめやすいことから「消えてしまいたい」と希死念慮につながります。
2.家族的要因
家族的要因には、家族内の不和やコミュニケーション不全、DV、虐待が含まれます。コロナ禍によるテレワークや自宅学習の影響で、家族が自宅で共に過ごす時間が増え、それに伴いDVや虐待の件数も増加しています。
職場や学校など逃げ場・心のよりどころが失われつつあり、必要なサポートも受けづらくなっています。
家族が危機状態に陥ってしまう背景には、下記の社会的要因の影響も大きいでしょう。
参考:読売新聞オンライン「児童虐待通告が初の10万人超え、DVも過去最多…外出自粛が一因か」
3.社会的要因
例えば、コロナ禍の失業による経済的負担は、社会的要因に含まれます。
失業により家計が悪化すると、家族の関係も険悪になりがちです。焦りが生じると視野が狭まるため、生活保護や自己破産ではなく、周囲に迷惑をかけずにいなくなった方がマシだと思い詰めてしまう人もいます。
希死念慮の発生は社会的な問題と密接に関係があります。社会的孤立や悩みを抱え込む前に、早い段階で相談するのが大切です。
希死念慮(自殺念慮)に関するQ &A
世界保健機関(WHO)は、2017年に「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識」を発表しています。付録4に「自殺に関する迷信(myth)と事実(fact)」というタイトルでQ&Aが記載されていますので、ここでいくつか引用します。
Q「自殺について語る人は自殺するつもりはない」
A 自殺について語る人は、外側に向けて助けや支援を求めているのかもしれない。自殺を考えているきわめて多くの人が、不安、うつ、絶望を感じており、自殺の他に選択肢がないと考えている可能性がある。
Q「自殺の多くは何の前兆も無しに突然起きる」
A 自殺のほとんどの事例で自殺前に、言葉や行動に周囲の人が気づくような兆候(warning sign) を示していた。もちろん兆候無しに起きる自殺もある。しかし、周囲の人が気づくような兆候とは どのようなものかを理解し、それに注意を払うことが大切である。
引用:厚生労働省「自殺対策を推進するために メディア関係者に知ってもらいたい基礎知識(2017年版)」