【トラウマの治し方】臨床心理士が解説する、日常でできる治療方法とは?

メンタルヘルス

この記事を監修してくれたのは…

トラウマのせいで、毎日が苦しい…

トラウマ(trauma)を「心の傷」という意味で最初に用いたのは、精神科医のフロイトです。心的外傷(psychological trauma)と呼ばれることもありますが、意味は同じです。

人は誰しも、生きていれば何らかの嫌な出来事や苦痛に遭遇するでしょう。その多くは時間の経過とともに薄れ、発散したり克服したりすることで消えるものです。しかし、苦痛な出来事が許容範囲を超えてしまうと、長期にわたりトラウマ、心の傷として残ってしまうことがあるのです。

実際にトラウマとなり得る出来事には、自然災害、事故、いじめ、虐待、DV、ハラスメント、身近な人の死などが該当します。トラウマの程度や症状によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されることもあるでしょう。

過去の嫌な出来事を繰り返し思い出して「苦しい」と思うことはありませんか。時間が経っても消えないようであれば、慢性化する前に治療した方が良いでしょう。

トラウマを治すには?

複雑化したトラウマの記憶は断片的になるため、体験の核の部分は思い出さないよう回避されています。しかし、回避を続けることで、トラウマとなった記憶を整理できなくなり、余計に怖くなってしまう悪循環が起こるのです。

トラウマの治療では、本人の回復力を高めるよう支援します。加えて、トラウマ体験にまつわる記憶の核の部分を取り扱い、再処理することで触れても大丈夫な記憶に変えることを目指します。

臨床心理士が解説する、トラウマの治し方

トラウマに関する治療法は数が多いため、代表的なものを3つ簡潔に紹介していきます。1つ目はグラウンディング、2つ目は持続エクスポージャー療法、3つ目は眼球運動脱感作療法(EMDR)です。

こうした特殊な治療法を用いなくても、信頼できる先生に話し、理解してもらえたと感じられれば、ある程度は良くなる場合もあります。まずは信頼できる医師や臨床心理士、公認心理師を見つけることが大切です。

1.グラウンディング

トラウマの症状の中でも代表的な、突然つらい記憶がよみがえる「フラッシュバック」の治療に効果的な方法です。フラッシュバックが起こると意識が過去に引っ張られてしまいます。グラウンディングで五感を刺激し、意識を現在に向け直すのです。

例えば「この部屋にある白いものを5つ探してください」と質問したり、ティッシュを丸めてキャッチボールしたり、冷たい水で顔を洗ったりといった方法があります。他のトラウマ治療の前に実施すると、より効果を発揮します。

2.持続エクスポージャー療法

認知行動療法の中でも、トラウマに特化した治療法が持続エクスポージャー療法です。トラウマ体験後、実際は安全だとわかっているのに避けるようになってしまった状況に向き合うことを「現実エクスポージャー」といいます。

恐れていた過去のトラウマ体験が、現在の安全な状況でも起こる程度を確認できます。また、起こったとして何が困るのかについて現実的に考えることができるというメリットもあります。

3.眼球運動脱感作療法(EMDR)

眼球運動脱感作療法(EMDR)はトラウマ治療の中でも新しい治療法といえるでしょう。WHO世界保健機関でもトラウマに効果があると認定されています。認知をより柔軟な方法へ軌道修正し治療する「認知行動療法」とは違い、認知を取り扱うことはありません。

眼球運動という目のリズミカルな動きを意識しながら過去のトラウマ体験を扱うことで、外傷記憶への慣れと再処理を進めます。持続エクスポージャー法と比べると、心の負担を抑えながら治療できるメリットがあります。

 

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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