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躁状態(そう状態)とは
「最近、うつ気味な気がする」「落ち込みから抜け出せない」
このように、「うつ」という言葉を時々耳にする方は多いのではないでしょうか。うつ状態になると、憂うつ感が出たり、やる気が低下したりという症状が見られるのが特徴です。
一方、私たちはうつ状態と反対の状況に陥る可能性もあります。これは躁状態(そうじょうたい)と呼ばれるものです。躁状態が生じると、気持ちが高ぶったり、休まずに行動しても疲れることがなかったりという経験をする方も少なくないでしょう。
双極性障害は、上記のような躁とうつを繰り返す精神疾患のことを言います。
躁転とは
躁転とは、うつ状態から躁状態へと急に変化する状況を言います。双極性障害は、うつと躁のエピソード(状態)を繰り返すことが特徴です。しかし、うつが躁よりも、比較的長い場合が多いとされています。具体的には、躁に転じると周りが驚くほど躍動的になる方もいます。
ところが同じ双極性障害でも、躁転の程度には個人差があります。一目見ればわかるほどの感情の高まりが生じる場合はもちろん、誰も気づかないぐらいのケースも少なくありません。
また、躁転は薬の服用によって促される場合も存在します。例えば双極性障害の治療の中では、抗うつ薬が選択されることもあります。しかし、抗うつ薬は落ち込みを緩和する働きがあるため、エネルギーが上昇し躁に移行する場合が考えられるのです。
躁状態でよく見られる、主な症状
躁状態が生じると、うつ状態と一変します。まるで違う人のように明るくなったり、思いもよらない行動を取ったりする可能性もあるでしょう。しかし、激しい変化がないケースも存在します。例えば「なぜだか最近ワクワクすることが多い」「気分が落ち込むことが減った」という程度の軽い変化が見られることも少なくありません。
ただ、程度の差はあり得るものの躁には以下のような共通した症状が現れやすいと言われています。
1.会話がしたくてたまらない
躁状態の際は、頭の中にさまざまなアイディアやひらめきが浮かんできます。そのため、アイディアを他人に伝えたくて仕方がなくなるのです。特に相手が興味を示してくれたり、感謝をしてくれたりすると、さらに気分が良くなって会話が止まらなくなることもあるでしょう。
また誰かと会話したくて手あたりしだいに電話をかける、真夜中でも構わずに大量のメールを送る場合などがあります。しかし内容は現実的なものではなかったり、本人自身の言葉と行動が伴っていなかったりするケースが珍しくありません。
2.眠らなくても平気で過ごせる
躁のときは、眠る時間が大幅に短くても疲れを感じにくくなります。中には、24時間眠らなくても元気に動き回ることができる場合があるほどです。躁状態のときは、睡眠への欲求が低下するためです。
躁状態の方は、異常なほどに活動的です。何かをしていなければ落ち着かず、休んだり立ち止まったりするのは、もったいないと感じてしまうこともあるでしょう。
3.過度な自信がわいてくる
躁の特徴的な症状は、客観性がなくなることです。自分は特別な存在なのだと思い込んだり、不可能なことでも実現できるという根拠のない自信で満たされたりします。
気持ちが大きくなり、何かを成し遂げたいという思いでいっぱいになった結果、突然起業をすると言いだしたり、世界一周の旅に出ると宣言したりすることもあるでしょう。
4.お金の使い方が荒くなる
躁のときは、お金に対しての歯止めが効かなくなりがちです。また、高揚感や爽快感も生じます。そのため、欲しいと思ったものは迷わずに買ったり、軽い気持ちでギャンブルに手を出したりする可能性が高いのです。
お金への執着心も乏しくなり、一度に100万円以上を使い切ってしまう場合もあります。さらに手元にお金がなくなると、消費者金融で借金を重ねるケースもあり、後々トラブルを抱える方も珍しくありません。
5.他人の忠告を聞かない
躁状態の際は、自分の言動はすべて正しいと思い込んでしまいます。そのため、他人の忠告を聞かない場合があります。周りの人から見れば奇妙に感じることでも、本人にとってはごく普通であると信じているためです。
時にはみかねて、家族や友人などが注意したり、反対したりする場合もあるでしょう。しかし本人は間違っていないと捉えているため、頑固に考えを曲げようとはしません。また他人からの良いアドバイスに対しても批判し、怒りだしてしまうこともあります。
躁状態は、自分でも気づかないことも…
躁のときは調子が良くなることから、本人にとっては違和感がないことも少なくありません。むしろ病気が回復したと勘違いしてしまい、動き回るケースが目立ちます。例えば、たまっていた家事を精力的にこなしたり、意欲的に連日残業をしたりなどの行動が見られる場合も多いでしょう。また気持ちがオープンになり、交流会に参加したり、さまざまな場所へ旅行したりと、人との出会いを求めがちになります。
しかし、活発さはあくまでも躁状態がもたらしている状態に過ぎません。動きすぎて疲れてしまった結果、再びうつ状態に陥ってしまうことも珍しくないのです。
双極性障害を抱える方は、調子が良いときは躁転している可能性を意識しておきましょう。また気分が高ぶっているときも、無理しすぎることがないように気をつけておくことが大切です。
家族、恋人、友人、職場に話しておくことも検討しよう
躁状態の際は、気をつけていても行動のコントロールができない場合があるでしょう。それゆえに、周囲の人まで巻き込み、トラブルが生じることも否定できません。例えば、家族と喧嘩になる、職場でミスを多発するなどがあります。また躁の影響で信じられない行動を本人が取っていても、周りの人が躁状態であることを知らなければ、お互いの関係性がみるみる悪化する場合も珍しくありません。
躁は、時に周りの人までも巻き込む結果になることがあります。そのため、親しい人や関わる必要がある人には、自分の状況を打ち明けておくことが大切です。周りも理解をしてくれれば、日常生活のしづらさがより改善されるでしょう。
一人で抱え込まず、誰かに相談してみよう
躁状態に関しては、周りの人に話せば理解を得られやすくなるため、本人の気持ちが楽になるのは確かです。しかし親しい人には知られたくない、職場に伝えるのは不安などという思いを抱える方も多いでしょう。その結果、より孤独な状況になってしまうこともあるかもしれません。
もし周りの人に打ち明けにくいという場合は、主治医やカウンセラーなどを訪れるのがおすすめです。客観的な視点と高い専門性をもとに、さまざまなアドバイスが得られることでしょう。また、メンタルヘルス関連を扱っている企業のサービスを利用する選択肢もあります。その中には、オンラインや匿名での相談が可能なケースが数多く存在しています。
躁状態に対する問題を自分だけで抱え込むより、何かしらの方法でオープンにするほうが心理的に軽くなる場合が少なくありません。自分に合った方法で、自身をケアすることを心がけましょう。
※この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。