この記事を監修してくれたのは…
目次
強迫性障害とは
皆さんの周りには、単なる潔癖症や完璧主義では説明できない、物の並べ方や配置にこだわる人はいませんか。
サッカーの元イングランド代表のデイビッド・ベッカムもその一人でしょう。彼はすべてのものが真っ直ぐ並んでいるか、ペアでなければならない思いにとらわれています。
妻のヴィクトリアは「うちの冷蔵庫は3つあり、1つ目は食品用、2つ目はサラダ用、3つ目は飲み物用。飲み物用の冷蔵庫の中は左右対称に物が並んでいて、もし何かが3つあれば、夫はそのうちの1つを冷蔵庫から出してしまう」と語っています。
これらは性格でも癖でもありません。強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)という心の病気なのです。
参考:MOVIE WALKER press「セレブの間では強迫性障害がステータスに?」
強迫性障害の原因とは
強迫性障害は、几帳面で完璧主義な人がかかりやすいといわれています。人間にもともと備わっている自己防衛システムや、職場・家庭などの環境要因が影響しています。
どれか1つの要因で強迫性障害になるというよりは、複数の要因が複雑に絡み合うことで発症に至ると考えたほうが良いでしょう。
1.自己防衛システムの影響
自己防衛システムとは、さまざまな災難や危険から身を守るために備わっているものです。昔は、赤痢やペストなどの感染症で死なないよう汚物を避け、身を守る必要がありました。
現代は、ワクチンが普及し医療も発展しているので、昔ほど神経質になる必要はないでしょう。しかし、自己防衛システムがまれに過剰に反応してしまうことがあるのです。
2.環境的要因
医療従事者や操縦士など、少しのミスが大きな損害につながる職種、職場環境は強迫性障害の発症因子となります。また、家族に心配症で完璧主義者が一人でもいると影響を受けて、本人も心配性かつ、完璧主義な特徴を持つ強迫的な性格になることが多々あります。
定年退職や結婚、出産による専業主婦など環境の変化も要因となり得るでしょう。ヒマな時間が増えると、自分でもばかばかしいと思うような不安、つまり強迫観念が思い浮かぶ機会も増えるのです。
強迫性障害の主な症状
強迫性障害では「強迫観念」と「強迫行為」という2つの特徴的な症状がみられます。
強迫観念とは、自分でも「バカバカしい」「気にしなくて良い」と分かっていながら、自動的に思い浮かび、頭から離れなくなってしまう考えのことです。強い苦痛や不安をともなうでしょう。
強迫行為とは強迫観念を振り払おうと、何度も確認したり、手洗いを繰り返したりすることをいいます。
1.確認強迫
確認強迫と洗浄強迫は強迫性障害の患者に最も多くみられる症状です。外出時に鍵をしたか、ガスコンロの火を消したか、コンセントを切ったかなど、さまざまなことが不安になり何度も確認してしまいます。
例えば、ゴルフ道具や貴重品の確認がルーティンとなっている人もいます。確認強迫のせいで、1日の大半を確認に費やさしたり、ほかにやるべきことに集中できなくなったりすると、強迫性障害の可能性が高まるでしょう。
2.洗浄強迫
洗浄強迫は強迫性障害の症状のひとつで、感染症や汚れが気になるため物に触れられず、手洗いを何度も繰り返してしまいます。
感染症を恐れて1日中手袋をはめ、こまめに手洗いをしないと安心できない人もいるでしょう。家族にも手洗いや消毒を強要する人もいます。外出先から戻ると、30分以上手洗いがやめられなかったり、1時間以上も風呂から出られなくなったりします。
3.加害強迫
実際にはしていないことを、したのではないかと不安になるのが加害強迫の患者の特徴です。例えば、すれ違いざまに人の肩にぶつかりけがをさせたのではないか、車で人をひいてしまったのではないか、といろんなことを心配します。
物理的な加害以外にも、相手に対して暴言を吐いてしまったらどうしよう、と心配することもあるでしょう。また、仕事で自分のミスにより他人に危害が及ぶのを恐れることも。
4.縁起強迫
不安や心配ごとに関連する不吉なイメージが頭に浮かび、それを打ち消すための儀式を繰り返すのが縁起強迫です。よくあるのは「4と9は不吉な数字である」という思い込みでしょう。
外出の際、時計の数字が4時44分や9時9分だと何か不吉なことが起こるような気がして、出かけるのを控えることがあります。ほかにも、家を出るときは必ず右足から、と決めている人もいます。
5.収集癖
集めたものをどうしても捨てられず、部屋の中が足の踏み場もなくなる人は強迫性障害の収集癖があるでしょう。また、今ゲットしないと二度と手に入れられない、と不要なものを集める人もいます。
家からゴミが溢れ出し、近所に迷惑をかける「ゴミ屋敷」の住人は収集癖の可能性が高いでしょう。物を手放すこし後悔するのを恐れているのです。
6.不完全恐怖
不完全恐怖とは、全てが完璧でないと気がすまない強迫の症状の一つです。ルールにのっとり間違いなく物事をこなそうとするため、「これでよし」と自分が納得できるまで意味のない行動を繰り返します。
完璧でないと悪いことが起こるかも、と恐れる人もいます。自分が正しいと納得できないと気が済まないのです。
7.強迫性緩慢
強迫性緩慢は不完全恐怖を、頭の中だけで行っている人のことをいいます。はたから見ると、身動きもせず何か考え込んでいるように見えるのですが、本人の頭の中では確認の嵐が起きているのです。
外出したい気持ちがあっても、着替えようとすると「この服は今の季節に合っているか」と考えてしまいます。「人からどう見られるか」といったことも気になり、じっと考え込んで、いつまでも外出できなくなることもあるでしょう。