【適応障害とは】主な原因・症状・治療方法|臨床心理士が徹底解説!

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何をするにも気力が湧かない…

出社のために準備しなければならないのに、ベットから起き上がれない。何をするにも気力が湧かない。こんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。

上司からの叱責、大きな仕事を任されたプレッシャーなどで出勤前になると頭痛がしたり、気分が落ち込んだりしたら要注意です。

女優の深田恭子さんが「適応障害」と診断されたことが話題になりました。深田さんに限らず、ストレスフルな環境に身をおき続ければ、誰でもなる可能性があるのが適応障害です。

適応障害とは

適応障害とは環境の変化に適応できず、心身のバランスが崩れ、社会生活に支障が出ている状態をいいます。きっかけとなるストレス要因がはっきりしており、ストレス要因から離れると症状が良くなりやすいのが特徴です。

アメリカ精神医学会の『精神障害の分類と診断の手引き(DSM-5)』では、ストレス要因となるものが始まって3ヶ月以内に発症し、ストレス要因が解消されてから6ヶ月以内におさまるものと定義されています。

職場にパワハラ気質の上司がいて、平日は気分の落ち込みや頭痛がする。しかし、休日はいつも通り過ごせて趣味も楽しめるといった場合は、適応障害の可能性が高いといえるでしょう。

長期間ストレスにさらされると、適応障害からうつ病になることもあるので注意が必要です。そのため、早めにストレス要因を取り除き、適切に対処するのが望ましいでしょう。

適応障害の主な原因

環境の変化が適応障害のきっかけになることが多いでしょう。仕事や家庭、学校など環境の変化によるストレスが生じた時に、ストレスを適切に解消できなかったり、柔軟に対応できなかったりすると、適応障害発症のリスクが高まります。

環境の変化が影響して生じる心身の不調に「5月病」があります。医学的な視点から見れば、5月病も適応障害であるといえるでしょう。4月は転勤や異動、入学、進級など環境の変化が大きいので、適応障害を生じやすくなるのです。

1.個人的要因

適応障害になる要因の1つに、レジリエンスの低さがあげられるでしょう。レジリエンス(resilience)には、回復力や弾力という意味があります。

レジリエンスはストレスフルな場面で、ストレスを跳ね返したり柔軟に対処したりする力がどの程度あるのかを現す用語です。精神医学では、ボナノ博士が「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」と定義しています。

レジリエンスが低いとストレスフルな状況に柔軟に対処できず、ストレスを溜め込みやすくなります。同じ状況下でも、レジリエンスが高い人は適応障害になりにくく、低い人ほどなりやすいでしょう。

参考:カオナビ レジリエンスとは? 心が折れやすい人の特徴、レジリエンス向上の重要性、組織のレジリエンスを高める方法について

2.環境的要因

環境の変化があると適応障害を発症しやすくなるでしょう。仕事上の転勤や異動、人間関係のトラブル、仕事量の増加、特別な仕事を任されるプレッシャーなどが該当します。

ほかにも夫婦の不仲、義両親との関係、育児・介護の負担といった問題も要因になります。また、受験の失敗、友人関係のトラブル、いじめも含まれるでしょう。

3.その他の要因

その他の要因には、がん治療を含む身体疾患によるストレスが該当します。

大病を患うと心身にかかる負担は大きなものになります。今後の治療への漠然とした不安や気分の落ち込み、不眠など、一時的に日常生活に支障が出ることがあるでしょう。

不安や落ち込みは、ショックを受けたときの通常の反応と言えますが、長引く場合には注意が必要です。

適応障害の主な症状(行動・言動)

適応障害の症状は、うつ病の症状とよく似ています。適応障害とうつ病を見分けるポイントはいくつかあります。

うつ病は発症のきっかけが1つに特定できないことが多いでしょう。慢性的なストレスにさらされた後に発症し、ストレスから離れてもすぐには良くなりません。

薬物療法により脳の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの量を増やすと、気分の落ち込みやモチベーションの低下が改善され、良くなることが多いです。

適応障害は、発症のきっかけがはっきりしています。特定のストレスにより発症し、原因から離れれば良くなります。薬物療法が効かないのが特徴です。

株式会社リヴァ うつ病と違うの?適応障害の正しい理解や治療法について

1.精神症状

適応障害になると気分が落ち込んだり、不安になったり、涙もろくなったりします。気持ちが焦り、イライラして怒りっぽくなることもあるでしょう。

仕事や家事、学校などの活動に対して意欲が湧かず、集中できなかったり、考えがまとまらなくなったりします。これまでできていたことができなくなるので、自信がなくなってきます。

気持ちが落ち込み、やる気が湧かないので仕事にも集中できず、できないことが増えてイライラし、また落ち込むという負のループに陥りやすくなるでしょう。

2.身体症状

寝つきが悪くなったり、途中で何度も目が覚めたり、早朝に目が覚めてしまったりと睡眠の問題がでてきます。肩こりや腰痛、頭痛、疲れが取れない、だるいなどの症状が現れることもあるでしょう。

急に動悸がしたり、息苦しくなったり、めまいがしたりすることもあります。食欲はありすぎるか、なさすぎるかの両極端になりがちです。下痢や便秘も起こりやすくなります。

3.行動面の症状

ストレスフルな環境から逃げられない状況では、下記のような症状が現れることがあります。

仕事に行きたくないので、遅刻や欠勤は増えます。家族や周囲の人に暴言を吐いてしまい、喧嘩ごしになります。暴飲暴食や危険な運転をすることも。ギャンブルや買い物でお金を使いすぎてしまうこともあるでしょう。

実生活に少しずつ支障が出始めたら…

はじめは適応障害でも、途中でうつ病になることもあるので気をつけましょう。

実は発達障害、自閉スペクトラムが隠れていたなんてこともあります。自閉スペクトラム症の人は環境の変化が苦手なので、異動や転勤で環境が変わるとパニックを起こしやすくなるのです。

不眠が2週間以上続いたり、休日も気分が晴れず布団から起き上がれなかったりするなら、うつ病の可能性もあるため早めの受診をおすすめします。

 

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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