統合失調症の方にしてはいけないこと|家族の正しい接し方・治療法

メンタルヘルス

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ご家族・大切な人に統合失調症患者さんがいる方へ

家族が統合失調症を発症したと知ったとき、家族や周囲の人は大きな衝撃を受けます。また、未知の病名に対する不安や疑問、患者への接し方など家族自身のストレスは計り知れないものになるでしょう。

病気に対する不安や疑問を解消するためには、まずは家族が統合失調症に関する正しい知識を身につけることが大切です。

また、統合失調症は、患者の症状の安定や再発のしやすさに家族や周囲の人の関わりが大きく影響します。患者と家族の間で批判や否定、叱責があったり、過干渉があったりすると、患者は神経過敏となり症状が長引いたり再発しやすくなったりしてしまいます。

本記事では、統合失調症とはどんな病気なのか、具体的な症状の内容や回復の過程を記載しています。また、家族や周囲の人が患者に接するときの声のかけ方のポイントもまとめています。大切な人や家族に統合失調症の患者がいる方の助けになれば幸いです。

統合失調症の主な症状とは?

統合失調症の主な症状は、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つです。

通常は幻覚や妄想などの陽性症状が増える急性期、感情の平板化や意欲の低下といった陰性症状が生じる休息期、認知機能障害が現れやすくなる回復期の経過を辿るでしょう。

治療では回復期を経て、病前に近い状態に戻る「寛解する」ことを目指します。

1.陽性症状

陽性症状では、幻覚や妄想、自我障害などの症状がみられます。幻覚とは、現実にはないものをあるように感じてしまう知覚の異常です。見えないはずのものが見える「幻視」、聞こえないはずのものが聞こえる「幻聴」などが含まれるでしょう。

妄想は事実と異なる思い込みで、代表的なものは自分が悪口を言われていると思い込む「被害妄想」です。自我障害が起こると、自分と他人の心の境界線が不透明になるでしょう。自分の思考が筒抜けになっていると思い込む「筒抜け体験」が起こることも。

2.陰性症状

陰性症状には、感情の平板化や意欲の低下が含まれます。感情の平板化が生じると、表情が乏しくなったり言葉の抑揚がなくなったりします。勉強や仕事、あらゆる活動への意欲の低下がみられます。

陰性症状が起こると、家族からの呼びかけにも単語でしか答えられなくなり、部屋に引きこもることが増えるでしょう。このように、単純な言葉しか扱えず、抽象的な表現が理解できなくなることを「思考の貧困」と呼びます。

3.認知機能障害

認知機能の低下が起こり、普段より記憶するのに時間がかかったり、集中しにくくなったりします。判断力が低下するため、優先順位をつけたり、計画を立てることも難しくなるでしょう。仕事や勉強に支障をきたし、自分を責めてしまうことも。

認知機能障害が起こるとマルチタスクな仕事ができなくなるため、1つの仕事だけに集中させる、1対1の関係を作るなどでシングルタスクを割り振る工夫ができると良いでしょう。本人が自信を失わないよう、周りがサポートすることが大切です。

【統合失調症】発症からの経過と症状

統合失調症は前兆期、急性期、休息期、回復期の経過を辿ることが多いでしょう。回復・悪化を繰り返しながら、徐々に症状が消失し、病気前に近い状態に戻ります。これはあくまで典型的なケースであり、必ずしも皆、同じ経過を辿るとは限りません。

また、一旦回復してから再発することもあります。再発の兆候は本人には気づけないことが多いため、家族や周囲の人の見守りが重要になるでしょう。統合失調症の初期症状に似たイライラ、不眠、感覚過敏などの症状が現れたら、要注意です。

参考:4段回のステージ 統合失調症ナビ

1.【前兆期】発症の前触れが現れる

発症の前触れとして心身にさまざまな変化がみられる時期です。身体症状として不眠や頭痛、食欲不振、音や光に敏感になるなどの症状が現れることがあります。また、精神症状として焦燥感や不安、イライラが現れることも。

日中の活動意欲が下がり、仕事や学校に集中できなくなることもあるでしょう。うつ病や双極性障害に症状が似ており、統合失調症と確定診断を下せないことも多い段階です。しかし、早期に治療を開始することで、高い治療効果を期待できるでしょう。

2.【急性期】幻覚や妄想などがみられる

急性期にきてはじめて、統合失調症らしい症状が現れるようになります。不安や緊張感、音や光への敏感さが一気に高まり、幻覚や妄想、自我障害などの陽性症状が目立つ時期です。

まとまりのない会話をし、聞こえないはずのものが聞こえると、幻聴を訴えてくることもあるでしょう。家族や周囲の人が接する時は、たとえ本人の訴えが間違っていたとしても否定せず、話を最後までよく聞くようにするのが大切です。

3.【休息期】感情の平板化や意欲の低下が起こる

急性期が始まって数週間後に休息期に入るといわれています。陽性症状がおさまるにつれ、感情の起伏が乏しくなる、無気力で何もしたくなくなる、引きこもるなどの陰性症状が中心の休息期に入ります。

家族や周囲の人からすると、部屋に閉じこもり、いつも寝ており何もしていないように見えるため「このままで良いのだろうか」と不安になる時期です。気持ちが不安定で、ちょっとした刺激で急性期に戻りやすい時期のため、外出を促したり話しかけたりするのは避けるのが無難でしょう。

4.【回復期】症状がおさまるが、認知機能障害が現れることも

休息期は数週間から数ヶ月単位で経過し、回復期に入るといわれています。回復期に入ると、陽性症状や陰性症状は徐々におさまるでしょう。一方で、物事へ集中したり記憶したりするのが難しくなる「認知機能障害」がおこることがあります。

認知機能障害が生じると、周囲のさまざまな情報に対して、とるに足らないものを無視して必要な情報のみに集中することができなくなります。会話中に周囲の物音が気になり、落ち着きがなくなるといった症状がみられることもあります。

ご家族に知っていただきたい、統合失調症の方への接し方

統合失調症の治療では完治よりも、症状が消失しほとんど病気前と同じ状態に戻る「寛解」を目指していきます。寛解の状態まで達すれば、発症前と同じように生活することが可能でしょう。寛解するためには、身近な家族や周囲の人のサポートが欠かせません。

統合失調症は再発リスクの高い病気といわれています。特に発症初期の5年から10年の間は注意が必要です。再発を繰り返すほどに症状が重くなり、回復するのも難しくなってきます。だからこそ、再発の兆候は見逃さないようにしましょう。

よくある最初の兆候は、発症初期の兆候によく似ています。不眠やイライラ、音への過敏さが現れたら、すぐに病院を受診するようにしてください。

ご家族から本人への接し方として大切なことは、まず家族自身が病気に関する正しい知識を身につけること。そして病状のステージに応じた対応を心がけることです。基本的には、程よい距離感であたたかい見守りの体制が取れると良いでしょう。

統合失調症の方にしてはいけないこと

家族や周囲の人が患者に接するときの表情や口調、態度などを「感情表出」といいます。英語のExpressed Emotionの頭文字を取りEEと略されます。患者に対して批判的に接したり、過保護になったりすることを「高EE」と呼びます。

高EEの状態が続くと、患者のストレスが蓄積され、再発のリスクが高まるでしょう。家族や周囲の人の接し方が悪いから高EEなのだと捉えないようにしましょう。家族や周囲の人が必要な支援につながったり、心理教育を受けたりして正しい接し方を知ることでEEを下げるのが大切です。

参考:家族の対応ABC すまいるナビゲーター統合失調症

1.批判的になりすぎる

何もしないでゴロゴロしている患者をみて、家族がつい批判的な言葉をかけてしまうことがあります。家族自身が「いつまでこの状態が続くのだろうか」と不安になるからでしょう。

統合失調症の休息期では感情の平板化や意欲の低下が生じるため、ゴロゴロせざるを得ない時期もあることを理解しましょう。数週間から数ヶ月単位で回復期に移ること、そのために休養が何より必要だということを理解するのが大切です。

2.過剰な励ましをする

統合失調症の回復期や寛解の状態であれば、リハビリや社会復帰の際に励ます言葉をかけるのが有効なこともあります。しかし、がんばりたくてもそうできない時期に励まされるのは苦痛でしょう。

無理に家事や運動をさせようとしたり、外出させようとしたりするのはやめましょう。本人が自分の意志で「やってみたい」と言い出すまで待つようにします。皿洗いやゴミ捨てなど、負担の少ない家事から順番に、一度にたくさん任せないのがポイントです。

3.過保護・過干渉をしすぎる

患者のことを心配するあまり、過保護や過干渉になりすぎることにも注意しましょう。家族や周囲の人は、病気だから自分がいてあげないといけないと思いこみがちです。一人で患者を抱え込みすぎるとこういった問題が生じやすいでしょう。

家族が医師や看護師、心理士などの専門家の力を借りて、一人にならないようにするのが大切です。専門家に相談してみることで気持ちや考えが整理され、解決に向けて誰と何を協力すべきかが明確になるはずです。

統合失調症の方に言ってはいけないこと

統合失調症の患者は、これまでに体験したことのない不安を感じています。幻覚や妄想により周囲の人への不信感が増し、苦しみ、閉じこもりがちでしょう。そのため、身近にいる家族が私たちはあなたの味方であるというメッセージを送り続けることが安心につながります。

まずは本人の苦しみや葛藤を、話を聞くことで受け止めましょう。批判的、否定的な言葉を言い換えて、前向きな柔らかい表現にするだけでも、伝わるメッセージはだいぶ変わるでしょう。

1.何ばかなこと言ってるの

統合失調症の急性期では、患者が現実にはあり得ないことを信じ込んで、まとまりのない会話をしているようにみえるでしょう。家族からしたら不気味でしょうがないので、つい「盗聴なんてされてないよ」と本人の訴えを否定してしまうことがあります。

しかし、現実にはないものをあるように感じてしまい苦しいのが幻覚や妄想といった症状なのです。まずは本人の苦痛に理解を示し、軽減してあげることが安心につながります。「盗聴されてると思ったら、それは怖いよね」と共感の言葉をかけてあげてください。

2.いつになったら働けるの

いつになったら働けるのかは、本人も分からなくて苦しんでいます。ここでも、相手の苦しみに共感の姿勢を示すのが大切です。「外に出なきゃと思っているけれど、最初の一歩が踏み出せないんだよね」と共感の言葉をかけてあげるだけでも患者は救われます。

気持ちを受け止めてもらうことで安心して休養に専念でき、結果的に症状の回復が早まるというメリットもあります。短期的な目標と長期的な目標を立て、本人が今できることを着実に続けさせるのが大切です。

3.あなたは病気だから無理

同じ内容でも、言い方一つで印象は大きく変わります。

言い回しが否定的になっていたり、攻撃的になったりしてないか注意しましょう。薬を飲むのを続けて欲しいとき「薬をやめたら再発するよ」と言い放つのか「薬を飲み続ければ、元気に暮らせるよ」と声をかけるかでは印象がだいぶ違いますよね。

本人が食器を洗うのを手伝ってくれたら「そんなことしなくて良いから、早く働いて」ではなく「助かる。ありがとう」と声をかけるだけでも、本人の自信につながります。

臨床心理士が伝える、家でできる治療法

家族や周囲の人の中には、多くの時間を患者のケアに割かねばならずストレスが蓄積し、身体的・精神的不調を訴える人が少なくありません。家族の心身の安定は、患者の安定にとって必要不可欠です。

休養やリラックス、趣味の活動などを通して上手にストレス発散しましょう。時には、専門家に相談してみることも大切です。心身の不調が現れる前に、早めに心配事は解消しておくことが大切です。

統合失調症情報提供ガイド(家族心理教育編) 国立精神・神経医療研究センター

1.話を最後まで聞く

患者の話を途中で遮ったり、否定したりしないようにしましょう。話の辻褄が合わなくても、質問責めにするのは控えます。まずは本人の話をそのまま受け止めましょう。「幻聴がつらい」と言われたら「幻聴がつらいんだね」とオウム返しで受け止める方法が効果的です。

慣れてきたらオウム返しに加えて、相手の気持ちを想像し伝える応用も可能です。「幻聴がつらくて、不安で怖い気持ちでいっぱいだった?」と尋ねてみても良いでしょう。

2.できたことを褒める

できたことを褒め、多少のミスには目をつむります。皿洗いや洗濯物をたたむなど、難易度の低いものからお願いしてみて、クリアできたら「ありがとう、助かる」と感謝の気持ちを伝えましょう。

たとえ時間がかかったとしても、本人なりのやり方とペースに任せましょう。どうしても助けが必要な時だけ手を貸すのがポイントです。このちょっとしたお願いと感謝の言葉が、患者に自信を与え、やる気を引き出します。

3.本人にできることは任せる

回復期に入ってきたら、少しずつできることは任せていくのも大事です。できることが増えると自信がつき、社会復帰に向けてリハビリを行うモチベーションを維持しやすくなります。

家族の中で話し合い、特定の家事を本人に任せるといった役割分担をするのも良い方法です。自分は家族の役に立っていると自信がつくことで、本人の自己肯定感も高まります。役割が達成できたら、感謝の気持ちを伝えることも忘れずに。

4.穏やかで優しい雰囲気づくり

家族や周囲の人も、自分たちの生活や時間を犠牲にすることなく暮らしていくのが大切です。家族教室や家族会に参加すると、同じ病気の家族を持つ人たちと交流ができ、孤独感の軽減に役立ちます。家族や周囲の人もストレスを溜めない工夫をしましょう。

患者の身近にいる家族や周囲の人がゆったりした気持ちでいること、笑顔でいられることが患者の心の安定にもつながります。付かず離れず、必要な時は手助けできるような、穏やかで優しい雰囲気づくりを行いましょう。

家族だけで抱え込まないことが一番大切

身内が病気を抱えている人たちが集まり、ご自身の気持ちを共有する機会が得られる場が「家族会」です。もちろん、統合失調症の家族会も存在します。家族だけで抱え込まないためにも、家族会はぜひ活用いただきたいセルフケアの一つです。

公益財団法人全国精神保健福祉連合会が主催する「みんなねっと」では、身内に精神疾患を持つ家族が参加できる家族会を都道府県別に検索できますので、ぜひ活用ください。

参考:みんなねっと 公益財団法人全国精神保健福祉連合会

この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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