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適応障害とは
適応障害は、生活の中で感じた強いストレスが原因となり、心身のバランスが崩れ、健全な社会生活を送れなくなってしまう病気です。今までできていたことができなくなり、さらなるストレスや不安を感じて苦しんでいる人も多いでしょう。
適応障害を改善するためには、症状や治療などの正しい知識が必要です。自分の性格の特徴を理解することで、自らを客観視し、適切な対処方法を身につけましょう。原因となっているストレスを軽減して心理的回復を早めることも大切です。
今回は、適応障害の原因や症状、治療法や適応障害に悩む人におすすめの職種などを解説します。ご自身だけではなく周りに適応障害で悩んでいる人がいる場合もぜひ参考にしてください。
適応障害になりやすい人の特徴
ここでは、適応障害になりやすい人の特徴をご紹介します。まずは自分の性格や環境を理解し、客観的に見つめ直してみましょう。適応障害の治療では「環境改善」も大切であるため、現在の環境を理解することも治療のヒントにつながります。
1.相談できる人が周りにいない
適応障害になりやすい人は、一人でストレスを抱え込みやすいという特徴があります。私たちは生きているだけでさまざまなストレスを感じていますが、多くの場合は適度にストレスを発散させて心と体のバランスを取っています。
ストレスを発散する方法の一つが「周囲の人への相談」ですが、周りに話せる相手がいない人はストレス発散の手段が少なく、抱え込みやすいといえます。客観的に指摘やアドバイスをくれる人がいないため、解決方法が広がりません。
2.仕事で追い込まれやすい・板挟みになっている
プレッシャーを感じやすい仕事をしている人は、適応障害になりやすい傾向があります。たとえば販売業や営業職などは常に数字で評価されることが多いため、普段からストレスやプレッシャーを感じやすく、自分を追い込みがちになります。
また中間管理職のように上と下、もしくは営業職のように自社とクライアントに挟まれている働き方をしている人も、ストレスを感じやすく適応障害になりやすいでしょう。同じ立場の仲間がいれば苦労を分かちあえますが、孤独に戦いつづけている人はリフレッシュをする余裕がないことも。
3.傷つきやすく、繊細な性格
感受性が高く、人一倍傷つきやすい性格をしている人は、ストレスも感じやすい傾向があります。適応障害はストレスが原因で発症するため、繊細でナイーブな人は適応障害になりやすいといえるでしょう。
相手に悪意はないのに言葉の裏側を想像してしまったり、ジョークが通じずに落ち込んだりしてしまうこともあります。真剣に悩んでいるのに周りには「考えすぎ」といわれてしまい、余計に思いつめてしまうケースも。
4.仕事やプライベートなど、切り替えることが苦手
仕事とプライベートの切り替えが苦手な人は上手にストレス発散がしづらく、適応障害になりやすい傾向があります。仕事とプライベートをしっかりと分けられている人であれば、仕事で受けたストレスをプライベートで発散して、気持ちをリセットしやすいでしょう。
しかしプライベートに仕事のストレスを持ち込むタイプの人は、せっかくの休日でもネガティブな気持ちを引きずりがちです。精神的にリフレッシュができないまま仕事に戻り、新たなストレスをどんどん積みかさねて心に余裕がなくなっていきます。
5.人からの評価を気にしやすい
人からの反応や評価に過敏で、すぐに気にしてしまう性格の人はストレスをためこみやすく、適応障害になりやすいといえます。自分の価値を自分で決めることが苦手で「人からどう思われているか」ばかりを気にしてしまうタイプです。
陰口や悪口を恐れるあまり、「人からおかしいと思われない言動は何か」という考えに縛られ、自分らしさを表現することが苦手です。ありのままの自分で生きることが難しく、常に人の顔色を伺う生活をしているため、ストレスをためてしまいます。
適応障害になってしまう主な原因
ここでは、適応障害になってしまう主な原因をご紹介します。適応障害を改善するためには「なぜ症状が現れるようになったのか」を知ることが大切です。特に適応障害はストレスが発症に結びつくため、何が自分を悩ませ、不安にさせているのかを知ることが改善のための第一歩です。
1.職場での人間関係
適応障害の原因において「職場でのストレス」が占める割合は多いですが、その中でも「職場での人間関係」は発症の原因に大きくかかわっています。上司や同僚を中心とした職場の人間関係トラブルは精神的に大きな負担となります。
パワハラやセクハラなどのハラスメント行為や、嫌がらせや陰口などの陰湿な行為で心がすり減り、心が限界を迎えて適応障害になってしまうケースも。以下の記事ではハラスメントの種類についても解説しているので参考にしてみましょう。
2.職場での急な環境の変化
異動で職場が変わったり、昇進や部署移動で職務内容が変わったりなど、職場での急な環境の変化は大きなストレスを感じさせます。環境に馴染むだけでも精一杯な上に、新しい業務内容を覚える時間にも追われ、プライベートでリフレッシュをする余裕も減りがちに。
精神的につらくても「環境が変わって疲れたからといっても仕事は仕事。休むわけにはいかない」と自分を追い込みやすく、どんどん心が疲れてしまいます。元から休日に息抜きをすることが苦手な人であれば、より適応障害を発症しやすくなるでしょう。
3.仕事量が過度・責任が重い
過度な仕事量を請けおっていたり、残業が続いている人は適応障害になりやすいです。部下をまとめたりプロジェクトを仕切っていたりなど、責任とプレッシャーがある立場にいる人も強いストレスを感じやすいでしょう。
繁忙期やトラブル時などの突発的な仕事量・残業の増加であれば乗りきれる人でも、普段からずっとつらい環境では心がくじけてしまいます。同僚が退職・異動をしたのにもかかわらず新しい人員が補充されない場合でも、個人への負担が重くなりストレス増加の原因に。
4.家庭内でのトラブル
適応障害には家庭内でのトラブルも関連が深いとされています。夫婦や兄弟、親子、義両親との関係性がかかわっている場合が多いでしょう。また子どもがいる家庭では、夫婦間での教育方針の違いによるトラブルもストレスの要因になります。
例えば夫婦仲が悪い場合は、家に帰るだけでストレスを感じるため、家の外で受けたストレスを発散することが難しくなります。仲が悪いとさまざまな問題を家庭内でシェアすることも困難になり、常に一定のストレスを感じている状態になることも。
5.恋愛・友人関係のトラブル
職場以外の人間関係でもトラブルが起これば強いストレスを感じます。代表的なものが恋愛・友人関係のトラブルです。恋人に浮気をされたり振られてしまったり、友達に仲間外れにされてしまったときなどが当てはまります。
今まで信頼していた相手からの裏切りは、心を深く傷つけます。日常のさまざまな場面でつらい出来事を思い出してしまったり、人を信頼できなくなってしまったりするでしょう。友人関係のトラブルには学校内でのいじめも含まれます。
適応障害の症状とは
適応障害の症状は人によって程度が違います。日常生活程度なら問題なく営める人もいれば、外出が困難なほど重い症状に悩んでいる人もいるでしょう。
ここでは、適応障害の特徴的な症状を5つご紹介します。適応障害は、症状が強く続くとうつ病に移行しやすい疾患です。早めに気づいて医療機関を受診するためにも症状の特徴を知り、自分の状態と照らしあわせましょう。
1.気分の落ち込みや感情の起伏が激しい
適応障害では感情の起伏が激しくなり、気分が落ち込みやすくなります。物事を必要以上に悲観的に捉えてしまったり無謀な口論をしたりなど、健康な状態であればしない行動を取りがちです。そのため、自分自身の変化にショックを受けて自己嫌悪になってしまうことも。
不安や怒りなどのネガティブな感情に敏感になり、心配をしてくれている人にも攻撃的な態度を取ってしまいがちです。抑うつ気分にも悩まされ、今まで興味があったことへの関心や意欲が喪失してしまいます。
2.動悸や焦燥感に襲われる
日頃から不安が強まりやすい状態になり、緊張が高まると動悸や息切れに悩まされます。焦燥感をおぼえ、緊張して手が震える、汗をかくなどの症状も特徴的です。動悸や焦燥感は自分でコントロールできません。
焦燥感が強まると、呼吸が苦しくなったり腹痛・下痢の症状が出たりします。他には咳やのどの締め付け感など、不快な症状に悩まされます。精神的にも肉体的にも疲労がたまるため、状況に応じた冷静な判断ができなくなってしまうこともあるでしょう。
3.意欲が低下する
適応障害ではストレスが原因で気分が落ち込みやすく、意欲低下が見られます。しかし、うつ病とは違い、ストレスになっている原因から距離をおいたり、解決したりすることで低下した意欲が改善されると考えられます。
意欲低下は、適応障害の症状の中でも特に「抑うつ気分」の状態が強い人に現れやすく、身体的な症状として倦怠感を併発している場合も。今まで興味があったものに興味がなくなるため、対人関係や社会生活に支障をきたす可能性があります。
4.涙もろくなる
職場や学校で突然涙を流してしまったり、物事を悲観的に捉えて泣いてしまったりなど、適応障害では涙もろくなることが特徴的です。自分で涙のコントロールができず、泣きたくないと思っても自然と涙がこぼれてしまいます。
「周囲に心配をかけてしまっているかもしれない」「迷惑だと思われているかもしれない」と考えると余計に涙が込みあげてしまうケースも。感情や涙を制御できない自分を責め、ますますネガティブ思考に陥ってしまう場合もあります。
5.強いストレス
適応障害は発症の原因となるストレスが明確であることが特徴です。そのため、原因となるストレスが持続しているケースが多いとされています。また適応障害により健全な社会生活が困難になるため、新たなストレスが生じることも特徴です。
日常生活の中で起こった出来事や環境にうまく対応できず、ストレスや不安を感じます。本来の自分であればできることができなくなり、自暴自棄になってしまうことも。他人や過去の自分と比べてしまい、強いストレスを感じます。