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ストレスが溜まりすぎて、生活に支障が出たら…
私たちはあらゆるストレスと共に生活をしています。ストレスの原因になるのは、将来の不安やお金、人間関係、健康など多岐にわたるでしょう。
また、ストレスはわかりやすい原因を自覚していないものや、温度や湿度、音、匂い、眩しさなど感覚的なものも含まれます。生きている限り、ストレスから完全に解放されるのは不可能に近いといえるでしょう。
そのため、私たちは受けたストレスを逃がしたり、発散させたりしながら生活しています。しかし、ストレスの許容量が限界を超えると、体と心にさまざまな変化が起き始めます。
ストレスから考えられる病気(精神科の病気)とは
ストレスが原因で発症する病気で、代表的なものは急性ストレス障害です。急性ストレス障害は1ヶ月以内に改善しますが、それを超えて改善しないと適応障害と診断されます(ICD-10)。適応障害の有病率は日本の全人口における2〜8%と推定されます。
急性ストレス障害では、うつ病の症状と似た「うつ症状」があらわれます。しかし、急性ストレス障害とうつ病は別の病気です。ストレス障害は原因の解決に関わらず1ヶ月以内に症状が軽減しなければなりません。
しかし、原因が簡単に解決できず、適応障害に移行する人もいます。治療が長期に及ぶ可能性があります(それでも6ヶ月以内の改善が適応障害の条件です)。何にストレスを感じているのかを理解し、医療と連携しながら改善を目指すのが大切です。
ストレス障害において、少し特殊なのが「心的外傷後ストレス障害」です。今回はその特徴も紹介します。
参考:新橋スリープ・メンタルクリニック「ストレス性障害(適応障害)」
急性ストレス障害とは
急性ストレス障害は、衝撃的なことを経験すると発症します。夜に眠りづらくなったり、イライラしやすくなったり、経験した時のことを思い出してしまったり、日常生活に支障をきたす不快な症状が1ヵ月ほど継続して改善していくことが特徴です。6ヵ月以上症状が続く場合は、急性ストレス障害という病名を離れ、心的外傷後ストレス障害と診断されます。
命の危機を感じたり、重篤なけがを負ったりするという重大な出来事だけでなく、裏切りや挫折などで大きなストレスを受けた際に発症することも。衝撃的な出来事に直面した際の強い恐怖や無力感、戦慄に関する反応が発症に起因します。
ショッキングな出来事を心の中で何度も繰り返し、思い出してしまうことで、不安が増大していきます。
次項では、急性ストレス障害の詳しい症状を解説します。急性ストレス障害の症状に悩んでいる人は、早めの受診を心がけましょう。
また、直接ではなく、間接的にでも外傷的出来事を体験した場合、急性ストレス障害が発生することもあります(例えば、人間が死に直面する場面を見てしまった、該当するシーンをテレビで観たなど)。
参考:新橋スリープ・メンタルクリニック「外傷後ストレス障害、急性ストレス障害」
急性ストレス障害の主な症状
急性ストレス障害の代表的な症状として、睡眠障害や集中力の低下、怒り・易怒性(ささいなことをきっかけに周囲へ不機嫌な態度で反応する状態)などがあります。ほかにも大きな音や刺激に対して過剰に反応する「驚愕反応」も発症しやすい傾向にあるでしょう。
また、急性ストレス障害の患者は、前提として外傷的出来事(トラウマになるほどの衝撃的な出来事)の体験をしています。
人によって急性ストレス障害の症状はさまざま。ひとつでも症状が当てはまる場合は現状を甘く見ずに、医療機関の受診をおすすめします。社会生活が困難になる前に、改善の意識を持ちましょう。
1.睡眠障害
急性ストレス障害では、睡眠障害を訴える人が多い傾向にあります。ストレスとなった出来事を思い出してしまって寝つけない、やっと眠れても悪夢で起きてしまうなど、良質な睡眠をとれない日が続き、睡眠不足に陥ります。
眠れないストレスから心に余裕がなくなったり、睡眠不足が原因で他人に強く当たったりすることも。十分ではない睡眠時間を日中に確保しようとするため、昼夜逆転に陥ることもあります。
2.集中力の低下
何度もつらい記憶が呼び起こされて、長時間集中できないといった症状もあらわれます。普段しないようなミスが続いたり、仕事の失敗が原因で周りに迷惑をかけたりすることもあります。
フラッシュバックという、つらい出来事を思い出すことが起きると集中力が切れてしまうのです。何度も集中しなおす必要があるので、なかなか本来のパフォーマンスを発揮できません。
3.怒り・易怒性
急性ストレス障害では、怒りと易怒性が高まります。ささいなことでイライラしたり、怒ったりするので、良好な人間関係を築くのが困難になりやすいでしょう。
今までの人間関係が失われたり、コミュニケーション不足に陥ったりすることもあります。音や動きに敏感で、健康なときよりストレスが溜まりやすいため、怒り・易怒性のポイントが増えるのも関連しています。
4.外傷的出来事を体験したことがある
急性ストレス障害は、外傷的出来事を体験したことがある人が診断の対象になります。衝撃的な出来事を体験していないのに、急性ストレス障害のような症状が出ている場合は、別の病気の可能性があります。
また、急性ストレス障害の原因になる衝撃的な出来事の後、3日~1ヵ月にわたり他の症状が出ている際に診断されます。外傷的出来事の核心部分の記憶を失っている可能性もありますし、人に話すことで再体験を起こしてしまう可能性があるので、医者や心理士への共有は慎重に行うべきでしょう。