解離性同一性障害(多重人格障害)とは|原因・症状・治療法を徹底解説

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解離性同一性障害(多重人格障害)とは

解離性同一性障害(Dissociative Identity Disorder)とは、ひとりの人に、本人とは全く別の複数の人格が交互に現れる精神疾患です。自分の人格が一つにまとまっている感覚(自己同一性)が弱くなったり、失われたりするのが特徴です。

アメリカ精神医学会の精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-5)では、解離性同一性障害は、解離症群・解離性障害群に分類されています。昔は多重人格障害と呼ばれていました。

災害や事故など、ショックな出来事があった時に、その場にいるのに現実ではないような感覚になる程度であれば、経験したことがある人もいるかもしれません。これも実は「解離」の一種です。ショックな出来事を生々しく体験しないようにするための、心の正常な反応です。

周囲の人から自分がやったことのように思えない行動を指摘され、社会生活に支障をきたしているようであれば、解離性同一性障害である可能性が高いでしょう。

解離性同一性障害(多重人格障害)の診断基準

アメリカ精神医学会のDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)では、解離性同一性障害は下記の状態であると定義されています。文章は理解しやすいように少し表現を変えています。

  • ひとりの人に、本人とは全く別の複数の人格(交代人格)が交互に現れる。何かに憑依されたような状態になることもある。
  • 自分の人格が一つにまとまっており、自分の意思により行動している感覚(自己同一性)が弱くなったり、失なわれたりする。意識や感情、感覚や運動機能などが本来のその人とは全く別の状態になる。
  • 自分の名前や重要な個人情報、事故や虐待などショッキングな出来事に対して、一般的な物忘れでは説明がつかないような物忘れを繰り返す。
  • 上記の症状が現れることで、社会生活に支障をきたしている。症状の状態は、本人の所属する文化・宗教で正常とされる範囲を逸脱している。
  • 上記の症状は他の精神疾患や、アルコール・薬物の影響によるものではない。

二重人格と多重人格の違い

二重人格と多重人格は、どちらも本人とは別の複数の人格が交互に現れる心の状態を意味します。精神医学の分野で正式には解離性同一性障害といわれています。

解離性同一性障害のうち、一般的には二つの人格が交互に現れるものを二重人格(Dual personality)、三つ以上の人格が交互に現れる場合には多重人格(multiple personality)と呼ばれます。

本人の元々の人格を「主人格」ないし「基本人格」、主人格から切り離されて生まれた新たな人格は「交代人格」と区別して呼ばれることが多いでしょう。

参考:好書好日 13人の人格を持つharuさんインタビュー 「生きづらさ」を後ろから支えてくれた彼らと生きる

解離性同一性障害(多重人格障害)は顔が変わるのか?

解離性同一性障害では、主人格とは別の性格を持つ「交代人格」が代わる代わる現れるのが特徴です。主人格が無口で大人しいタイプでも、交代人格は社交的で元気なタイプであるといった状況はよく起こります。

解離性同一性障害の性質上、周囲の人から見て、まるでその人ではないかのように顔(表情)が変わって見えてしまうことはあり得るでしょう。

突然まるでその人ではあり得ないような振る舞いが増えたら、それは解離性同一性障害の兆候である可能性があります。ただ、気分の上がり下がりのあるうつ病や双極性障害といった他の精神疾患が隠れていることもあるので、注意しましょう。

解離性同一性障害(多重人格障害)の主な症状

アメリカ精神医学会のDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)では、解離性同一性障害は「解離症群・解離性障害群」に分類されています。下記の主な症状は解離性障害群によくみられる症状の一部です。

解離性同一性障害は、解離性障害の群の中で最も深刻な疾患です。解離性同一性障害の患者は女性が多く、ほとんどの人が幼少期に何らかの虐待(特に性的な虐待)を受けた経験があるといわれています。

参考:公益財団法人 日本精神神経学会 解離性障害とは、どのような病気ですか?

1.現実味がない感じがする(離人症)

離人症とは、自分の身体と精神が切り離されたように感じる症状をいいます。まるで幽体離脱したかのように自分の身体を背後から眺めているような感覚になったり、現実なのに夢の中にいるように感じたりします。

現実にある身の回りの物が生き生きとそこにあるように見えなくなり、人工物のように感じることもあるでしょう。生花が造花のように見えたと訴える人もいます。現実味がない感じがしているのは、あくまで自分だけだと認識しているため、統合失調症の幻覚・妄想とは区別されます。

参考:東京都立 松沢病院 解離性障害の症状

2.記憶がなくなる(解離性健忘)

患者がこれまでの人生で経験したことがないようなショッキングな出来事に遭遇した時、出来事の前後の記憶を思い出せなくなることがあります。これを「解離性健忘」といいます。自分の名前や年齢を忘れ、これまで生活してきた記憶を全部失ってしまうほどの状態であると「全生活史健忘」と呼ばれます。

解離性同一性障害の健忘は、精神的に負担にならない日常的な記憶でも起こることがあります。昨日、誰に会ったかや、どんな服を着ていたかなども忘れてしまうのです。もちろん、これらの症状は認知症や泥酔の影響とは区別されます。

3.記憶がない間に突然、失踪する(解離性遁走)

全生活史健忘に自宅や職場からの移動を伴う場合は解離性遁走(かいりせいとんそう)といいます。自分の身元やこれまでの記憶を全て忘れ、突然疾走して新たな場所で生活を始めてしまう場合があります。

解離性同一性障害の人に起こりやすく、失踪している間に人格交代が起こっている場合も少なくありません。そのまま失踪先で暮らし続ける人もいれば、ふいに帰ってはくるものの、失踪前の記憶はないなどさまざまなパターンがあるでしょう。

4.微動だにせず、反応しない(解離性混迷)

解離性混迷とは、精神的に耐えがたいショッキングな出来事が起こった後に生じる、解離性障害の症状の一種です。呼吸や眼球の動きは見られるため、眠っているわけでも意識障害を起こしているわけでもありません。

混迷が起こると、意識があるにも関わらず光や音への反応が弱まったり、なくなったりします。周囲が呼びかけをしても反応することはありません。長時間、ほとんど動けないまま横たわるか、座ったままの状態が続きます。周囲からはフリーズしたように見えるでしょう。

5.歩けなくなる(解離性運動障害)

解離性運動障害とは、ショッキングな出来事の後に生じる、身体の運動機能の障害です。一時的に手足の運動機能が低下し、歩き方が不自然になったり、支えなしで歩くのが難しくなったりします。

事故で骨折のような大きなけがをし、治癒した後も歩行困難が続く場合は、解離性運動障害が起きている可能性があるでしょう。精神的なストレスにより生じる症状ですが、患者本人は身体障害が原因だと感じやすいでしょう。しかし検査をしても、異常は見つかりません。

6.身体がけいれんする(解離性けいれん)

解離性運動障害に伴い、解離性けいれんが起こることもあります。解離性けいれんとは、ショッキングな出来事の後に生じる身体の麻痺や脱力、けいれん、手足の痛みをいいます。

また、声を出せなくなる失声症や、発音がうまくできなくなる構音障害、物が二重に見える複視などが伴うこともあるでしょう。解離性けいれんの機能障害は精神的なストレスにより生じるものなので、脳の機能異常が原因のてんかんとの発作とは区別されます。

7.身体の感覚が鈍くなる(解離性知覚脱失)

解離性運動障害や解離性けいれんに伴い、起こる可能性が高いのが解離性知覚脱失(かいりせいちかくだっしつ)です。ショッキングな出来事の後に、一時的に感覚の鈍りが起こる場合があります。

患者は寒暖差や痛みを感じにくくなるため、身に覚えのないけがに、後から気づくでしょう。慢性的なリストカットが続いている患者であれば、自分の知らない間に手首を切っていたり、痛みに鈍いため深く切り込んでいたりして大けがに発展する恐れがあります。

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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