この記事を監修してくれたのは…
目次
妄想癖が止まらない、被害妄想してしまう…
私たちは幼少期に空想や妄想を巡らせますが、大人になると次第に減少します。しかし、なかには、社会に出て自立している状態でも「妄想」に悩まされ、日々心を痛めている人もいるでしょう。
今回は、妄想が止まらない疾患「妄想性障害」の特徴や対処法などをご紹介します。妄想のタイプごとの特徴を理解しながら、客観的に自分を見つめなおし改善に近づいていきましょう。
妄想性障害とは?
妄想性障害とは、「事実とは違った思い込みが1ヵ月以上持続している状態」を指す精神疾患のことです。ただの間違った思い込みなら、間違いを指摘されたり矛盾点に気付けたりすれば考えを改められる場合が多いですが、妄想性障害では、矛盾を理解していても妄想の内容を信じてしまいます。
妄想の内容は「大切な人に裏切られる」「誰かにストーカーをされている」などの現実的にありえる内容から、「傷あとを残さないまま内臓を抜かれる」のような非現実的なものまでさまざまです。
妄想性障害の患者は、社会で役割を果たせるほど正常な思考を保っており、自分の妄想が事実だと信じて疑いません。そのため治療には専門医との良好な関係が必要です。一般的に、成人中期から後期にかけて発症をする可能性がある疾患です。
妄想性障害の主な原因
一般的に、成人中期から後期にかけて発症の可能性がある妄想性障害。ここでは、妄想性障害の主な原因や症状をご紹介します。当人にとっては、現実と妄想の区別は付きづらいもの。特に最近の自分の思考や周りからの反応に違和感を感じている方は、記憶や感情と照らしあわせながらご参考にしてくださいね。
1.人に対して恨みを抱きつづけてしまう
ある人物に恨みを抱きつづけている状態は、妄想性障害の初期症状であると共に発症の原因でもあります。喧嘩や裏切りなどが原因で心に大きな傷ができ、「許せない」という気持ちがふくらんだ結果、妄想性障害を発症する可能性があります。
自分の恨みの感情が勘違いや誤解から生じているとわかった後でも恨みが収まらず、妄想上の被害を受けたと感じてしまう場合も。
2.人に利用されてる・使われてると感じてしまう
「他人に自分の存在が軽く思われている」「利益のために都合よく利用されている」と感じてしまい、対人関係にトラブルが起きる可能性があります。信じていた相手から一方的に裏切られたような気持ちになり、恨みに繋がってしまうケースも。
また「利用されている」と思ってしまったことがきっかけとなり、妄想性障害が発症する場合もあります。当人は心の中で思ったことを直接相手にいわないことも多いため、ショックを受けていることを周りは気づかないまま過ごしてしまいがちです。
3.人を信じていいのかわからなくなっている
妄想性障害では、身近な人への不信感が募ります。パートナーや友人や家族などの近しい相手を信じていいのかわからなくなり、相手の誠実さを疑問に思ってしまいがちです。
恋人や夫婦の場合は浮気や不倫を疑い、関係性に亀裂が生じてしまうこともあるでしょう。曖昧な証拠を真実だと思い込み、確信を持って相手を責めてしまうケースも。不信感が高まった際には傷害事件に発展する可能性もあります。
妄想性障害の種類
ここでは、妄想性障害の代表的な種類を4つご紹介します。一言で妄想といっても内容のタイプはさまざまです。客観的に見て不自然な妄想をしてしまっていないか、振りかえりながら読んでみてくださいね。
1.誇大型
誇大型では、自分には大きな才能があると思い込みます。また歴史の上で重大な発見をしたと確信します。有名人や芸能人と親密な関係性があると妄想することもあり、自分の虚偽の地位や名声を真実だと思い込むことも。
また著名人と自分を照らしあわせて混在することで「本当は自分の実績なのに、違う人物が自分の代わりに成果を発表している」と信じるケースもあります。
2.被害型
被害型では、自分が何かしらの被害者になっているという妄想が特徴的です。たとえば「大きな陰謀の対象になっている」「スパイやストーカーをされている」「非難中傷をされている」「嫌がらせを受けていると確信する」などが挙げられます。
妄想の内容を真実だと信じているため、警察や裁判所などの機関に訴えて対応を求める場合も。被害者として正当防衛を行う権利があるとも思っているため、妄想の中の加害者へ暴力行為を行うこともあります。
3.身体型
身体型では、自分の体に何かしらのネガティブな変化が表れていると妄想します。たとえば「体の中に寄生虫がいる」「異臭がする」などです。想像上の感染症を作りあげ、未知の病気にかかったと思い込むケースもあります。
また自分の見た目が変化するという妄想も。体の一部が変形したり、顔の造形や体型が醜くなったりという妄想に悩まされます。当人にとっては確信を持った妄想であり、鏡を見ても妄想を訂正することができません。
4.被愛型
被愛型では「他人が自分に好意を持っている」と思い込みます。行為の種類は恋愛感情であり、当人は相手の気持ちに応えようとして犯罪行為に手を出す可能性もあります。たとえば監視や盗聴、ストーカーなどが代表的です。
電話や手紙などのコミュニケーション手段を通して、どうにかして相手と接触を試みようとします。当人にとっても想い人であった場合は「自分と相手は両想いなのだ」と信じて疑わず、事件に発展する場合もあるため注意が必要です。
治療法はある?妄想性障害の治し方
妄想性障害の患者は、社会で役割を果たせるほど正常な思考を保っており、自分の妄想が事実だと信じて疑いません。そのため、治療には専門医との良好な関係が必要です。
妄想性障害では、他の疾患がないかを含め、診察・検査した後に診断されます。治療においては、患者の気持ちに配慮することで治療への疑いを抱かせない治療者が適任です。
妄想性障害の治療目的は、妄想による生活の支障を減らすことです。妄想があると、不眠や興奮などの症状が出現し、自身は消耗し周囲との関係も悪化します。それらの症状を改善するために抗精神病薬の内服、場合によっては入院治療が必要なこともあります。
長期的な目線では、カウンセリングや診療を重ねて、妄想に支配されるのではなく、妄想とうまく付きあう状態を目指します。
生活に支障が出る前に、カウンセリングを受けよう
今回は、妄想性障害の特徴や治療法などをご紹介しました。
妄想性障害では妄想以外に特筆する症状はなく、患者は健全な社会生活を送っているように見えます。また、妄想が関わらなければ対人関係でも特にトラブルは起きません。
だからこそ本人にとっては「自分が異常な妄想をしている」とは気づきにくいもの。周りの声にも耳を傾け、生活に支障が出る前に専門医を受診し、カウンセリングを行いましょう。症状改善への第一歩は、自分だけではなく周りの大切な人との関係性のためでもあるのです。
※この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。