無気力症候群とは|休日に動けないなど、主な症状・原因・対処法を解説!

メンタルヘルス

この記事を監修してくれたのは…

休日に動けない…何が原因?

お正月やGWなど、長期のお休みが続いた後の出勤はつらいものです。多くの人は1〜2週間ぐらいで元の生活リズムを取り戻すでしょう。一方で、1ヶ月経過しても休日に起き上がれないくらい無気力な状態が続き、苦しむ人もいます。

仕事に対するやる気が起きず、何かしようと思っても動き出せない。休日になると、お昼過ぎまで眠ってしまう。漠然とした将来への不安がある。やりがいや生きがいがない感じがする。月曜日の前の日になると、憂鬱になる。こんなことはありませんか。

休日に気が抜けて体調を崩す人は、普段気を張って生活している可能性が高いでしょう。生真面目で完璧主義な人ほど、がんばりすぎて、突然プツンと糸が切れたように無気力になってしまうのです。もしかしたらその症状は「無気力症候群」かもしれません。

無気力症候群とは

無気力症候群にはいくつか種類があります。

1つは学生無気力症候群(スチューデントアパシー)で、アメリカの心理学者であるウォルターズ教授が命名しました。2つめに「退却神経症」があります。こちらは日本の笠原嘉という精神科医が名付けました。

どちらも学生の無気力状態を現しますが、意欲がわかない問題は、大学生に限らずさまざまな年代や状況で起きる可能性があります。

元々は周囲の期待に応える「良い子」であった人が多く、受験や就職試験を勝ち抜いたものの、学業や仕事に対する目標ややりがいを失ってしまうことで陥ります。

無気力症候群の主な症状

無気力症候群は競争社会や他者との相対比較に疲れてしまい、不適応を起こした状態です。

社会の中で自分の職業的役割や進むべき方向性を定めることができない「アイデンティティの拡散」の問題が背後に隠れていることもあります。アイデンティティの拡散とは「なりたい自分」や「なりたくない自分」、「なれそうな自分」の折り合いがつかなくなり、何者にもなれず思い悩む状態を指します。

1.本業に対して無気力になる

うつ病の場合は仕事や家事、プライベートの活動いずれに対してもエネルギーが枯渇し、無気力になります。一方で、無気力症候群の場合は学業や仕事など本業に対して無気力になる「選択的退却」なのが特徴です。そのため、単なるなまけと勘違いされがちです。

悪い方向に変化すれば引きこもりになる可能性はあります。しかし良い方向に変化すれば、バイトや副業など本業以外の活動に取り組むことでさまざまなものの価値観に触れることができます。この経験が「なりたい自分」を定めるのに役立つこともあるでしょう。

参考:サイコセラピー研究所 無気力症候群とは?原因、症状、改善方法、うつとの違い

2.症状に無自覚である

無気力症候群の人は、周囲の人にぬけぬけとした印象を与えます。本業以外の活動は楽しめているため、つらさを自覚しにくいのです。本人は何となく「やる気が起きないなあ」と感じており、悩みの正体から目を背けているケースが多いでしょう。

また、周囲の人にやる気がないとバレたら、「ダメな人」とレッテルを貼られるのではないかと恐れている場合もあります。症状が長引くと大学の留年や中退、仕事の休職や退職につながる恐れもあるため、早めに困っていることを自覚するのが大切です。

無気力症候群の主な原因

無気力症候群はうつ病や不安障害などそのほかの精神疾患と比べると、疾患としてあまり確立されたものではありません。

無気力症候群に陥りやすい人には、「受身的な良い子」、「失敗を恐れる完璧主義者」、「コミュニケーションをとるのが苦手」といった特徴がみられます。女性よりは男性に多いといわれています。

参考:せせらぎメンタルクリニック 無気力症候群の原因|どんな人が、どうして無気力症候群になるのか

1.受身的な「良い子」だった

無気力症候群に陥りやすい人は、もともと「受身的な良い子」だった人が多い傾向にあります。自分が「やりたいこと」より周囲の人の「やって欲しいこと」を優先してきたため、一時的な採用試験や受験を突破できても、その後のモチベーションが長続きしないのです。

また、自己完結型の問題解決をしようとする傾向が目立ちます。人に干渉されずに結果を出したい人が多いため、長期的な仕事を周囲の人と協力しながら行うのは苦手です。

2.失敗に敏感な完璧主義者

失敗に敏感なため、「提出しても大丈夫」と思えるまで1人で仕事を抱え込んでしまいます。間違いを人に指摘されるとプライドが傷つくので、分からないことを人に質問したり教えてもらったりするのも苦手です。

失敗するぐらいなら、はじめから挑戦しない方が良いと考える人もいるかもしれません。周囲の人からは「何を考えているのかわからない人」と思われやすいでしょう。内面に不満や葛藤をため込みやすいので、ある日突然感情が爆発して、意欲消失してしまいます。

3.コミュニケーションが苦手

他人とコミュニケーションをとったり、人と触れ合ったりすることが苦手な人が多いです。そのため、学校や職場の人間関係から孤立しやすくなります。自己完結できる、内向型的な能力や活動を評価される仕事でないと実力を発揮しにくいでしょう。

対処法はある?無気力症候群の治療法

無気力症候群は精神疾患ではないため、特効薬はありません。治療方法をあげるとしたら、生活習慣の改善と人生の目標の見直しが鍵となる可能性が高いでしょう。

1.生活習慣の改善

規則正しい生活ができないと、朝の講義に参加したり、決まった時間に出社したりするのが難しくなります。生活リズムを整えるないことには、本業に集中できません。

まずは決まった時間に起きる、3食きちんと食べる、1日1回は外に出ることを意識してみましょう。本業以外のバイトや副業も制限せずに、さまざまなことに挑戦してみた方が良い影響があります。

参考:Mentally やる気が起きない・やる気が出ない時に見つめ直すべき9つの生活習慣

2.人生の目標の見直し

本業に対するやる気を取り戻すためには、自分が本当にしてみたいことを見つけるのが大切です。そのためには、自分の人生の目標を見直す必要があるでしょう。いきなり考え出すのは難しいので、まずは紙に自分の今の気持ちや状態を書き出してみるのも1つの方法です。

着るものや食べるもの、行く場所など、小さなことから自分で決断する習慣をつけるのも良いでしょう。

参考:Mentally 自分の人生、自分のために生きる方法|自分の人生を生きたい全ての人へ

生活に支障が出たら、専門家につながろう

無気力症候群について専門家に相談したい場合は、大学生であれば大学の学生相談室を利用するのをおすすめします。大学の学生相談室には臨床心理士や公認心理師が在籍しており、学業や進路について無料で相談にのってくれます。

社会人の場合は、もしかしたらうつ病など他の精神疾患の可能性もあるため、まずは医療機関を受診するようにしましょう。医療機関でカウンセリングが可能であれば、無気力を改善し、本業に対するやる気が取り戻せるよう相談することも可能です。

無気力症候群の人は、そもそも困っていることを自覚できず、専門家につながるのが苦手な人は多いです。ちょっとしたことでも、まずは人に相談してみることが大切です。

 

この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

関連記事

特集記事

TOP