てんかんとは?症状・原因・治療法・対策まで、臨床心理士が徹底解説!

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てんかんとは?

てんかんは、突然意識を失って反応がなくなるなどの「てんかん発作」を繰り返す神経疾患です。乳幼児から高齢者まで誰でも発症する可能性があり、80%は18歳以前に発症するといわれています。発病率は100人に1人と、決して珍しい病気ではありません。

通常、私たちの脳の神経細胞(ニューロン)は、規則正しいリズムで電気信号を発して活動しています。てんかん発作が起こる時は、脳の神経細胞に激しい電気信号の乱れが生じます。てんかんの発作は一過性のものであり、発作がおさまれば元の状態に回復するのが特徴です。

てんかんは、治療により抗てんかん薬を服用すれば発作の抑制が可能です。60〜70%の患者は社会生活を支障なく送れるようになります。お薬以外にも手術などの治療方法があります。

てんかんは抑うつ状態や幻覚・妄想状態といった精神症状が生じる可能性があり、他の精神疾患と混同されやすいため注意が必要です。また、発達障害と合併症をおこす場合もあります。

参考:厚生労働省 てんかんとは

参考:大阪大学医学部付属病院 てんかんに伴う精神症状について

てんかん発作とは?

てんかん発作は、脳の神経細胞に激しい電気信号の乱れが生じることにより起こります。

てんかん発作の症状は脳の神経細胞の信号が乱れる部位や、広がり方によって「部分発作」と「全般発作」に分けられます。部分発作は脳の一部から起こり、全般発作は脳の全体から起こります。

発作が起きると、てんかん患者の全員が意識を失い反応がなくなるとは限りません。例えば、信号の乱れが生じる脳の部位が運動野であれば、意識は保てるものの片方の手足がけいれんします。単純な部分発作であれば呼びかけに反応できる人もいるでしょう。

てんかん発作は場所や時間を選ばず発作が起こるのが特徴です。自動車の運転中に発作が生じれば、大きな事故につながる恐れがあります。そのため、早期治療や発見が大切になります。早期発見するためには、てんかん発作の種類を知っておくことが役に立ちます。

てんかん発作の主な症状

私たちの脳は部位によりさまざまな役割を担っています。てんかん発作が起こる脳の部位は「大脳」です。大脳は前頭葉や側頭葉、頭頂葉、後頭葉の4つに分かれています。部分発作では大脳の一部に発作が生じるため、どの部位に発作が生じるかで現れる症状も変わります。

また、大脳の中央には溝があり、右半球は左半身を、左半球は右半身の神経を調節しています。脳の右半分に発作が生じれば、症状は左半身に現れます。体のどの部位に、どのように発作が現れたのかを注意深く観察すると発作の源を発見する手がかりになるでしょう。

参考:脳の機能と発作の関係 epiサポ てんかんといっしょに暮らす

参考:様々なタイプのてんかんの症状 EPARKくすりの窓口

1.単純部分発作

単純部分発作では意識障害は起こりません。患者に意識があるので、発作が起こってからおさまるまでの記憶は保たれます。単純部分発作が起こると手足がつっぱるような感じがしたり、けいれんしたりする運動機能の障害が現れます。

また、目がチカチカする視覚異常や、音が響いたり聞こえにくくなったりする聴覚異常も生じやすくなるでしょう。自律神経系に異常をきたすこともあり、頭痛や吐き気がでてくることもあります。

記憶の異常が起きると、はじめて見た場所を既に見たことのあるように感じる「既視体験」や、見慣れている風景を見たことのないように感じる「未視体験」が起きることも。

2.複雑部分発作

複雑部分発作では、意識障害が起こります。急に意識がなくなり倒れることは少ないですが、意識が徐々に遠のき、周囲の状況がわからなくなることがあるでしょう。

意識障害が起きていても周囲の人からはいつも通りに見えますが、本人は発作が起きている間の記憶がありません。高齢者だと発作中の出来事を覚えていないのを「物忘れ」と勘違いされてしまうケースがあるため要注意です。

また、口をもぐもぐさせたり、辺りをふらふら歩き回ったりする目的のない行動を繰り返す場合があり、これを「自動症」といいます。

3.二次性全般化発作

単純部分発作や複雑部分発作の症状からはじまり、次第に全般発作の症状が起きる場合もあります。二次性全般化発作は、意識をなくし手足をつっぱらせた後、ガクガクさせて全身けいれんに至る発作です。

全般発作と症状が全く同じなため、部分発作との区別が難しい症状です。治療薬を選択する際、全般発作かそれとも部分発作なのかの区別は重要になります。

4.全般発作

てんかんの症状の中でも代表的な「強直間代発作」が起こるのが全般発作です。突然意識を失い全身の手足をつっぱらせ、硬くする「強直発作」が数十秒から1分続きます。その後、筋肉の収縮と弛緩を繰り返し手足をガクガクさせる「間代発作」が現れます。

ほかにも、何かしていたり会話をしたりしているときに、5秒から30秒程度の短時間意識がなくなる「欠伸(けっしん)発作」も全般発作の1つです。一時的にそれまでしていた動作を停止したり、口をもぐもぐとさせたりするのが特徴です。

5.てんかんに伴う精神症状

てんかんを持つ患者は、てんかん発作以外にも精神症状を併発している場合があります。てんかんは脳の機能異常により起こるものであるため、精神的にも影響を及ぼしやすいといえます。

いつ発作が起きるかわからないてんかんを抱えるストレスにより抑うつ的になることもあるでしょう。抗てんかん薬を服用している場合、薬の副作用で幻覚妄想状態が生じることもあるため、精神症状があれば医師に相談するのが大切です。

参考:てんかんに伴う精神症状について 大阪大学医学部付属病院 てんかんセンター

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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