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学習障害は、大人になってから発覚することも?
学習障害が認知され始めた現代。大人になってから学習障害と発覚する人が増えています。実は、仕事やプライベートで起こる困難が、学習障害によるものだったという事例もあります。
しかし、学習障害の症状は「勉強が苦手」や「やる気がない」などとひとくくりにされ、自分では気づきにくいのです。今回は、学習障害の主な特徴や原因についてまとめました。
学習障害(LD)とは?
学習障害とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうちいくつかの習得・使用に困難を示す発達障害です。
学習障害には、教育的な立場でのLD(Learning Disabilities)と、医学的な立場でのLD(Learning Disorders)の2つの定義があります。
教育的な立場では文部科学省の定義から、全般的な知的発達に遅れはないものの「聞いたり話したり、推論したりする力など学習面での能力の遅れ」を指します。
医学的な立場では多くの場合「読み書きの特異的な障害」「計算能力など算数技能の獲得における特異的な発達障害」を指します。
学習障害は知的発達に遅れが見られないことから平成22年までは障害者自立支援法に当てはまりませんでした。その後、平成23年に障害者基本法が改正され、精神障害者保健福祉手帳の対象になりました。
参考:厚生労働省e-ヘルスネット「学習障害(限局性学習症)」
大人の学習障害、主な特徴
大人の学習障害は主に「読字障害」「書字障害」「算数障害」の3つが挙げられます。症状は人によって異なります。職場で同じ失敗を繰り返したり、電話で話しながらメモを取れなかったり、企画書やレポートを書けなかったりするなど日常生活のさまざまな場面で現れます。
ここでは、学習障害の主な特徴についてご紹介します。
1.文字を読むことが極端に苦手
文字を読むことが極端に苦手な「読字障害」は、学習障害の中で一番多く見られる症状です。別名でディスレクシア(dyslexia)と呼ばれます。ディスレクシアは、ギリシャ語で「読むのが困難」という意味です。
読字障害の特徴は、以下の通りです。
- 「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」など形態が似た字を理解できない
- 「っ」「ゃ」「ょ」を認識できない
- 冗談やことわざのような、抽象的な概念の理解はさらに難しい
- 文章を読んでいると、どこを読んでいるのかわからない
- 無意識に飛ばし読み、適当読みをしてしまう
- 音声にして耳から入る情報は、理解しやすい場合がある
家族の2人以上が読字障害である場合も多く、アメリカ国立小児保健・人間発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development:NICHD)によると、アメリカ人の15%が読字障害を抱えています。
参考:ディスレクシア・ツールキット 傷害保険福祉研究情報システム
2.読んで意味を理解することが難しい
前述した読字障害には「読んで意味を理解することが難しい」症状があります。原因は、情報を伝達し処理する脳の機能がスムーズに働いていないためです。
また読字障害の人は、文字の見え方にも特徴があり、読んで理解することが難しい原因につながっています。文字がぼやける、黒いかたまりになっている、逆さまに見える、図形に見えるなどです。
さらに、読字障害を抱える人は音韻認識が弱いため、ひらがなやカタカナのひとつずつは理解していても、漢字(単語)になると理解できなくなってしまうこともあります。
漢字の音読みと訓読みの使い分けができなかったり、単語や文節の途中で区切った読み方をしたりするなど、変わった読み方がさらに理解困難を招きます。
3.文字を書くことが極端に苦手
「文字を書くことが極端に苦手」「書いてある文字を写せない」などの書く能力に困難がある症状を「書字障害」と呼びます。別名はディスグラフィア(dysgraphia)です。
書字障害の人は、自分では文字を正確に書いているつもりなのに鏡文字になってしまったり、文字を書く速度が極端に遅かったりと、文字を書く動作が全般的に苦手です。