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6.淡々とした作業をすることが苦手
ADHDの「多動性」「衝動性」の特性が強い人は、落ち着きのなさやルールの逸脱が生じやすいことから、事務や経理など、作業内容や勤務場所が固定される仕事を苦手とする傾向があります。例に挙げた仕事は細かく、正確な処理も必要なため、ADHDの「不注意」の特性を持つ人とも相性があまりよくありません。
ミスを繰り返したり、決められた業務をやり遂げられなかったりすると、本人のやる気や努力不足、能力の問題だと誤解されることもあります。結果、ADHDの人をさらに悩ませることになるのです。
7.約束を守る・締め切りを守ることが苦手
約束や締め切りを守るためには、約束や仕事の内容、締め切り日などを記憶することはもちろん、やり遂げるための計画力や集中力が必要です。
しかしADHDの「不注意」の特性が強い人は、物事を記憶する前に他のことに注意がそれてしまう傾向があります。無関係の情報を処理できず、計画をうまく立てられない人もいるでしょう。そのため本人に悪気はなくても、大事な約束を忘れたり、締め切りに間に合わなくなったりするのです。
ADHD(多動性障害・注意欠陥障害)が発症する原因
ADHDの原因は、はっきりとわかっていません。有力な説として考えられているのは、脳の前頭前野という部分の働きに生まれつき偏りがあるということです。
前頭前野とは、考える・記憶する・判断する・感情をコントロールするなど、人間に欠かせない働きをする脳の機能のことです。情報を伝達するドーパミンという物質が前頭前野に届くことで、スムーズに動く仕組みになっています。ADHDの人の脳では、このドーパミンがうまく前頭前野に届かないため、不注意・多動性・衝動性の症状が現れるのです。
ADHDは遺伝的な要因や、母親の妊娠中の喫煙や過度なストレスといった環境要因も影響する可能性があることがわかっています。低出生体重児として生まれるとADHDの発症率が2倍に増加すると報告されていることから、周産期の要因も関連しているといえます。
ADHDは、本人の努力不足や親のしつけによるものではありません。脳機能の偏りや、複数の要因の相互作用によって、ADHDの症状は現れるのです。
ADHD(多動性障害・注意欠陥障害)の治療法
ADHDは、脳機能の偏りによって生じる先天的な疾患であるため、完治することはありません。しかし心理社会的療法や薬物療法により、生活に支障が出ない程度に症状を和らげることは可能です。
ADHDの心理社会的療法のひとつに、家庭や職場の環境を整える「環境調整」があります。期日を守れるように同僚にリマインドしてもらう、物忘れやミスを減らすためにタスクを紙に書くなど、工夫を積み重ねることで日常の困りごとを減らしていくのです。
もうひとつの治療法として、思考や行動のクセを見直し、生活のしづらさを和らげる「認知行動療法」が挙げられます。医師やカウンセラーのもと、ADHDの症状や対処法についての理解を深め、集中力を持続させる方法や整理整頓の仕方、対人関係の築き方、怒りの扱い方などを学びます。
治療を続けても生活が改善しない場合は、薬物療法もあわせて検討・相談してみましょう。薬は脳機能の働きを助ける役割を持ち、ADHDの症状を一時的に改善してくれます。症状によって使う薬の種類や効果が異なるので、専門医の相談のうえ、用法・容量を守って服用しましょう。
生活に支障が出たら、専門医を受診しよう!
大人でも子どもでも、ADHDの完治は難しいものです。しかし、ADHDの傾向があるからといって社会で生きていけない、活躍できないということはありません。
たとえば衝動的な行動をとる、作業に集中できないというADHDの症状は、新しいことにすぐに挑戦できる、アイデアが溢れ出てくるなどの強みであるともいえます。あなたの生まれ持った特性をうまく発揮できる職業や環境がきっとあるはずです。
できないことにとらわれて、つらさを感じるときは専門医を受診しましょう。ADHDへの理解を深め、成功体験を積み上げていくことで、あなたにとって生きやすい方法がきっと見つかるはずです。
※この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。