【臨床心理士が解説】ADHD(発達障害)の大人に対する適切な接し方とは?

メンタルヘルス

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ADHD(発達障害)とは

発達障害にあまり詳しくない人でも、「ADHD」や「アスペルガー症候群」といった言葉は聞いたことがあるかもしれません。最近、雑誌やテレビで取り上げられることが多い言葉です。

実は、発達障害といってもいろいろな種類があります。「ADHD」も発達障害の種類の1つです。ADHD(注意欠陥・多動性障害)には不注意や多動性、衝動性といった特徴がみられます。

幼少期にADHDの傾向があっても、周囲のサポートでうまくカバーされている場合はADHD症状による問題が顕在化せず、大人になってから社会生活に支障をきたすことがあります。近年、これらは「大人の発達障害」と呼ばれるようになりました。

参考: Medical Note ADHD(注意欠如多動性障害)とは?大人と子どものADHDの特徴や男女比

ADHD(発達障害)の特徴・性格

ADHDの代表的な特徴は多動性や不注意、衝動性です。多動性により、デスクワークといった長時間じっと座っている作業は苦手です。不注意により忘れ物やケアレスミスが多く、複数の仕事を抱えるとタスクが抜け落ちてしまうことも。

ほかにも、衝動性により会議でつい人の話に口を挟んでしまったり、よく考えずに行動に移してしまったりすることがあります。衝動買いも症状のひとつです。

大人の発達障害とは?臨床心理士が語る、発達障害の種類・それぞれの特性

1.ケアレスミスが多い

ADHDの人は、パソコンの入力作業や軽作業でミスをしてしまいがちです。自分ではきちんと見直しているつもりでも、なぜかミスしてしまいます。原因はADHDの不注意傾向であることが多いです。

大事な作業であっても、気持ちが乗らなければ集中できず気が散ってしまうのです。そのほかにも、ASD(アスペルガー症候群)の感覚過敏の問題が背後に隠れていることもあります。重い視覚過敏があると改行ごとに現在位置を見失い、行を追えなくなる場合があります。

2.忘れ物やなくし物をしてしまう

耳から聞く情報や並行作業の苦手さから、会議の話の流れについていくことや、メモをとるのが苦手な人が多いです。また、ADHDの特性である不注意や整理整頓の苦手さから、大事なものをすぐになくしてしまいがち。

全てメモしようとせず要点のみまとめる、会議の前にあらかじめ事前情報を確認しておくなどの方法で短期記憶のカバーが可能です。また、物の定位置を決めておき、朝ドアノブに持ち物をかけておくことで物忘れを減らすことができます。

3.約束や期日が守れない

不注意傾向により、その日やるべきことや予定をすぐに忘れてしまうことがあります。また、ADHDの衝動性や過集中傾向により、わかっているのに期日が守れないこともあります。予定がわかっていても目の前のやりたいことに熱中してしまうのです。

ADHDの場合は、予定を守ることを最優先にするため、常に自分を刺激しておく工夫が必要になります。パソコンを開くと自動的にカレンダーも開くように設定したり、スマホであればウィジェット化でページを開くとすぐ情報が目につくようにしたりできると良いでしょう。

4.じっとしているのが苦手

ADHDの多動性の特徴から、じっと座って作業に集中することは苦手です。デスクワークをしていても10分おきに席を立ちたくなってしまったり、ついネットで作業に関係ない記事を検索してしまったりしがちです。

精神科医と相談しながら、必要に応じて薬物療法も検討することで多動性のコントロールがしやすくなる場合もあります。服薬も視野に入れることで、症状を調整し生活しやすい環境を整えることができます。

5.衝動的に行動してしまう

会議や複数人がいる場で衝動的な発言をしやすく、アイデアや疑問が思い浮かぶと即座に口に出してしまいます。発言がリアルタイムな内容であれば良いのですが、すでに終わった議題やまだ話題になっていないものであっても口にしてしまうので不自然な印象を持たれがちです。

ADHDとASDの両方の特性がある人だと、1体1であれば論理的で目的のある話ができても複数人となると混乱し、話の流れが見えなくなってしまうことがあります。

家族、職場、恋人、友人など、大切な人がADHDと診断されたら…

家族や恋人がADHDと診断された場合、とくに身近にいる人に気をつけてほしいのが「カサンドラ症候群」です。2003年にイギリスの心理学者であるマクシーン・アストンによって提唱されましたが、医学的な正式な診断名ではないものです。

カサンドラ症候群とは、家族や恋人が発達障害の1つであるASDのために、コミュニケーションや情緒的な相互関係を築くことが難しく、身近にいる人に不安や抑うつなどの心身の不調をきたす状態のことをいいます。

発達障害と診断される場合、ASDとADHDなど複数の特徴があてはまることがあります。家族や恋人が、いったん何かに熱中すると話しかけても返事をしてくれない……、理屈は通じるが気持ちに共感してもらえないなどの問題が発生しやすいのです。

周囲の人が発達障害の接し方を知っていれば、ひと段落つくまで放っておくこう、といった対策をとることができます。知らないとお互いストレスを溜め込むことになりかねないため、身近にいる人が発達障害の正しい知識を身につけておくことは大切です。

参考:大阪メンタルクリニック 梅田院 カサンドラ症候群とは

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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