大人のADHDの人への適切な接し方とは?

2016年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の中で、障害のある人に対する合理的配慮の内容が定められました。会社は負担の重すぎない範囲で、本人から配慮が必要だと意思表示があったときに対応することが求められるでしょう。これを「合理的配慮の提供」といいます。

以下に大人のADHDの人への適切な接し方を、会社の場面を想定してまとめています。働くときだけでなく、家族や恋人、友人といった周囲の人にも役立つような内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

大人の発達障害とは?臨床心理士が語る、発達障害の種類・それぞれの特性

1.本人の強みを生かした仕事を任せる

本人から業務上の困りごとの申し出があったとき、強みを生かした仕事を任せる方が、会社の利益にも結びつくことが多いです。本人にあった仕事を振ることも、合理的配慮にあたるのです。

人と関わるのが苦手でこだわりの強いASDタイプの人には1人で黙々と進められる、正確性を求められる仕事を任せましょう。1つの物事を考え集中するのが苦手なADHDタイプの人には、アイデアや行動力が求められる仕事を任せてみるのも良いですね。

参考:at GP しごと LABO 発達障害のある方でも向いている・できる仕事について解説!

2.ミスをしても叱責せず、理由を尋ねる

大きな声できつく叱責しても、本人のミスは改善されません。ケアレスミスが起こるときにADHDの特性が影響しているなら、なぜミスが起こったのか一緒に悩むほうが状況の改善に役立ちます。

ADHDのケアレスミスは飽きてしまう、焦ってしまう、不注意、忘れてしまう、やる気が出ないなどさまざまな理由で生じます。作業手順の調整によるやる気にコントロールや、ダブルチェックで改善していきましょう。

参考:六本木ペリカンこころクリニック 【心療内科Q/A】「大人のADHDです、ケアレスミスを減らす工夫とは…?」【大人の発達障害】

3.見え方や聞こえ方が違うことを理解する

大人のADHDの中には聴覚過敏や視覚過敏のある人がいます。エアコンや外の車の音、オフィスの人の声などの音が普通の人より騒音に感じられたり、パソコンの液晶画面が眩しく感じられたりすることがあります。

聴覚過敏はノイズキャンセルイヤホンで、視覚過敏はパソコン画面の設定で解消できます。本人が困っていそうであれば、イヤホンの使用を許可することも合理的配慮にあたります。

4.業務上必要なサポートがあれば行う

ADHDとASDに共通する特徴に、曖昧な表現の苦手さと、場当たり的な行動のしやすさがあります。本人も気をつけなければなりませんが、周囲の人のサポートも必要です。「いつでも良いよ」や「だいたい」、「ほどほど」などの言葉を用いないで具体的に説明するのが意思疎通のコツです。

また、予定の管理が苦手であるため、スマホやパソコンのGoogleカレンダーで会社の人とスケジュールを共有しておき、変更があれば注意し合えるような環境を作れるとなお良いでしょう。

5.程よい距離感で接する

大人の発達障害があると、飲み会のような会社の行事は苦手なことが多いです。大勢の人が集まる場はうるさいので、聴覚過敏の人は疲れてしまいます。また、複数人が会話をしていると、どの会話に合わせて喋れば良いのかわからず混乱するのです。

親睦を深めたいときは、なるべく少人数の集まりに呼ぶ方が本人も安心できます。話しかけるときは、相手の方を向いて目を見る、ゆっくり喋りかけるなど、「今あなたに話かけています」とサインを出すだけでも話しやすさが変わることが多いです。

大人のADHDの人への間違った接し方

大人の発達障害について正しい知識を身につけていないと、誤った対応をしてしまいがちです。ADHDに限らず、発達障害の人は強く叱るだけではフリーズしてしまい、ミスや指摘にたいして適切に対処することができません。

その人の特性によって、生じるミスの種類も適切な対処法も異なります。できれば避けたい接し方は、以下の4つです。

1.他の社員の前で怒鳴りつける

他の社員の目の前で、予告なく突然早口でまくしたてるように怒鳴りつけるといった指導は、ADHDの人に向けて出なくても避けたいところです。早口で大きな声で怒鳴られると、本人には「叱られている」という情報しか届かず、混乱しフリーズしてしまいます。

ミスをしてしまった場合でも、落ち着いて原因究明に努め、次に同じミスが起こらないようにするにはどう工夫すべきか話し合える環境を整えることが大切です。叱っても人は成長しません。長い目でみたサポートをお願いします。

2.相談や意見をはねつける

本人が必死に困り感を訴えているのに「たいしたことない」とはねつけるのはやめましょう。周囲の人にとっては共感しがたい感覚であったり、経験したことのない悩みであっても、本人の困り感を尊重しましょう。

日頃から友好関係をきずき、「何か困ったことはないか」と声をかける習慣を作ってもらえると、困ったときに相談しやすくなります。馴れ馴れしくない、程よい距離感で見守るのがコツです。

3.業務上必要なサポートを与えない

上記に関連しますが、業務上必要なサポートは積極的に与えましょう。業務上必要なサポートを会社判断で与えないことは、障害者差別解消法の合理的配慮の不提供にあたります。

合理的配慮には、聴覚情報が苦手な発達障害の従業員に対し、社内のチャットツールの文章で伝える、マニュアルや手順書などで作業手順を参照できるような工夫が含まれます。合理的配慮の一例として参考にしてみてくださいね。

参考:d-career 発達障害のある方の「合理的配慮」事例集

4.いじられキャラとして接する

ADHDの人は、おっちょこちょいの傾向があるため、いじられキャラとなりやすいです。いじられる度に笑顔で接していても、内心は深く傷つき、自尊心を低下させていることもあります。本人のミスや失敗をからかうのはやめましょう。

困った時は、専門医や臨床心理士に相談してみよう

幼少期や学生の頃の症状が軽かったり、本人の努力や周囲の人のサポートにがあったりして問題が表面化しておらず、大人になってはじめて発達障害と診断される人は多いです。

特に大人の発達障害で大切なことは、苦手なものを治したりできるようにしていくのではなく、苦手をどう工夫してカバーしていくかや本人の強みを生かすかです。困ったときに専門医に相談できると、知能検査や問診を受けることができ、患者や周囲の人の発達障害への理解につながります。

また、社会生活上での困りごとの対処法や特性のコントロールについて、薬物療法や臨床心理士による心理療法で対処していくことも可能です。受診するメリットは大きいです。ぜひ怖がらず、積極的に利用してくださいね。

この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。

あーちゃん

あーちゃん

1992年生まれ。臨床心理士(公認心理師) 指定大学院を卒業し資格を取得後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。小学校や高校のスクールカウンセラーとしても活動中

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