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どうしても、自分を認められない…卑下してしまう…
社会的に輝かしい成功を収めているにもかかわらず、自分に自信が持てない。評価されるほど優秀でないと感じ「いつか無能さがバレるのでは」と恐れている。失敗は全て自分のせいに、成功は全て周りのおかげにしてしまう。
上記の特徴があてはまるようであれば、あなたは「インポスター症候群」の可能性があるといえます。インポスター症候群は病名ではなく心の傾向をあらわす言葉です。
著名人の中では、『ハリー・ポッター』シリーズ映画版でハーマイオニー役をつとめたエマ・ワトソンも、インポスター症候群の特徴に似た心理傾向に悩まされたと語っています。
彼女はイギリスのタブロイド紙『The Sun』で「自分が良い仕事をすればするほど、自分に褒められる資格なんてないと感じた」と述べました。
参考:VOGUE 「あの偉人も!? ビッグな彼らがインポスター症候群を克服するまで。」
インポスター症候群とは
インポスター症候群(impostor syndrome)とは、自分の能力によって成功しているにもかかわらず、「成功したのはスキルや努力のせいではなく運のせい」「過大評価されている」などと考える傾向のことをいいます。
インポスターには英語で「詐欺師」という意味があります。まるで詐欺師のように実際以上に自分を大きくみせて、周囲の人を欺いている気分になってしまうのです。なお、インポスター症候群は精神疾患ではなく個人の心理傾向を意味します。
1978年に『成功した女性達におけるインポスター現象』がイギリスの心理学者であるポーリン・R・クランスとスザンヌ・A・アイムスによって発表されたのが始まりです。
当時は女性特有の心理状態といわれましたが、その後の研究で男女差のない現象であることが明らかになっています。
参考:マドレクリニック 「インポスター症候群 (Impostor syndrome)」
インポスター症候群の主な特徴
インポスター症候群になりやすい人は、成功している客観的事実があっても、自分のおかげと思えません。本人の努力による成功でも、自分に自信がないため認めることができないのです。
自己卑下をやめられない背景に、「自己不信感」が隠れていることがあります。この点については原因のところで詳しく説明します。失敗は全て自分のせいに、成功は運やタイミングのおかげにする「認知の偏り」が影響していることもあります。
1.客観的にみて成功している
インポスター症候群の人は、第三者から客観的にみて成功している状態であることが多いでしょう。仕事で一定の地位を獲得していたり、目覚ましい業績をあげていたりする人が多いのです。
それにもかかわらず、成功したのは自分のスキルや努力のせいではなく運のおかげだと考えます。謙遜も過剰になると自己卑下に変わってしまいます。インポスターの傾向が強まると、仕事の昇進を辞退する、会議で発言しないなど仕事に支障が生じることも。
2.自分の成功は偽物だと思う
自分の成功は努力ではなく運のおかげだと考えます。そのため、「偽物の成功によって周囲の人をだましている自分はペテン師だ」という感覚がつきまといます。周囲の人から賞賛されるたびに、「自分は褒めてもらえるほど有能でないのに」と思い悩むのです。
そのため、「いつか自分の無能さがバレるのではないか」と常に恐れを抱いています。周囲の人の期待に応え、無能さがバレぬよう、完璧に仕事をこなさなければならないと思い込んでいることも多いです。
3.自己卑下の傾向がある
実際の能力と自己評価にズレが生じることを、「ダニング・クルーガー効果」といいます。有能な人ほど自分の無知を自覚しているため、自分を過小評価する傾向にあるのです。
また自己評価する際に、ある特定の分野で評価が低いと感じた場合に、全体の印象まで悪い方向にゆがめてしまうことを「ネガティブハロー効果」といいます。インポスター症候群の人は、「自分に自信がない人が有能であるはずがない」と考え、自己卑下します。
参考:Theory 「ハロー効果(光背効果)とは ポジティブハロー効果・ネガティブハロー効果も解説」
4.失敗を恐れ、成功を重荷に感じる
インポスター症候群の人は、自分の無能さがバレてしまうことを心配し、失敗を恐れます。成功したとしても、周囲の人のイメージと自己評価のギャップがますます深まると考えるため、これも恐ろしく感じます。
私たちは仕事や家庭で、何もかもうまく操れていないと失敗とみなしがちです。「完璧でなければ失敗である」という思考です。一方で周囲の人はうまくやれていると考えます。この傾向には完璧主義と、認知の偏りが関係していることが多いです。