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双極性障害(躁うつ病)は治るもの?
うつ病と比べて、双極性障害は再発率が高い病気です。そのため、治療では「完治」することよりも、再発予防・安定した時期(寛解期)が長くなるよう目指します。
DSM-5(国際的に利用されている精神疾患の診断・統計のマニュアル)では「寛解」を、過去2ヶ月の間に双極性障害の症状や兆候が見られないことと定めています。治りにくいと言われても心配する必要はありません。多くの場合は、服薬や認知行動療法による治療で、症状のコントロールが可能です。社会生活は問題なく送れるようになるでしょう。
しかし、寛解したからといって服薬やその他の治療を中断すると、再発率が高まってしまうので注意してください。
参考元:2014年 医学書院 監修 日本精神神経学会 監訳 高橋三郎 大野裕『DSM – 5 精神疾患の分類と診断の手引』p.87
双極性障害(躁うつ病)とは?
双極性障害は、気分の高まる「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す心の病気です。躁うつ病と呼ばれることもあります。また、双極Ⅰ型とⅡ型(重度のⅠ型と軽度のⅡ型)に分かれています。
双極Ⅰ型の躁状態では、ギャンブルに全財産をつぎ込んだり、高額のローンを借りたり社会生活に大きな支障をきたすほどの状態です。双極Ⅱ型の躁状態は、生活を送るうえで支障をきたさないものの、話がよく飛んでまとまらない、過活動気味といった症状があらわれます。
双極性障害は、治療しないまま放置するとほとんどが再発する病気です。再発を繰り返すうちに、症状があらわれる間隔が短くなりやすく、重症化すると社会的な信用を失いやすくなります。そのため、早めに医療機関を受診することが必要なのです。
躁状態・うつ状態とは?
双極性障害の「躁状態」「うつ状態」と言われても、具体的にどんな症状が該当するのかイメージしにくいでしょう。躁状態とうつ状態の特徴をそれぞれまとめました。
双極性障害の患者の多くは躁状態をおかしい、異常であるとは認識できません。いつもよりも調子が良いので、これが本来の自分なのだと勘違いすることもあります。
医療機関を受診しようと思えるのは、気分が落ち込み、困ったと感じた時が多いでしょう。
躁状態
躁状態では、エネルギーに満ちあふれ気分が高まります。眠らなくても平気で、むしろ元気になるでしょう。
例えば、仕事中にアイデアがどんどん浮かんできて、なんでもできるような気になり、じっとしていられなくなります。万能感を抱き、急に自分がすごい人になった、偉くなったと思うこともあります。
おしゃべりになり、話が次から次へと飛んでしまいます。無謀な行動を取りやすくなるため、周囲の人と対立したりケンカになったり、怒りっぽくなったりするでしょう。
うつ状態
うつ状態では、エネルギーの充電が切れたように何に対してもやる気が起きません。うつ状態で眠れないと疲れやすく、元気がなくなります。
仕事上のわずかなミスも、重大なミスとして捉えてしまい、自責感や無価値感を覚えやすくなるでしょう。日常的な動作が遅くなり、できないことへの焦りからイライラしやすくなります。
第三者から見ても表情に乏しく、口数が少なく、元気がないので心配されることも。
双極性障害(躁うつ病)になりやすい性格の人
双極性障害になる以前からの性格のことを「病前性格」と呼びます。古典的な双極性障害は、社交的で競争心が強く、エネルギッシュな人がなりやすいと言われていました。
しかし、近年では双極性障害になりやすい特定の性格はなく、どんな人でも双極性障害になり得ます。本人が「病前性格」と思い込んでいる気質が、実は診断までには至らない病気の予兆である可能性も否定できないのです。
自分の性格が原因で発症したのではないか?と勘違いしたままだと、自分を責めてしまう人もいます。そうならないために、病前性格は発症にはあまり関係がないことを覚えておきましょう。
いくつ当てはまる?双極性障害(躁うつ病)の主な症状
DSM-5では、双極性障害における躁状態の症状は程度により「躁病エピソード」「軽躁エピソード」に分かれています。代表的な症状をまとめました。
うつ状態にみられる症状は「抑うつエピソード」と呼ばれています。下記の参考元URLに、詳しい症状の内容がまとめられているので参照ください。
双極性障害の重度のⅠ型は、躁病エピソードか、混合エピソード(躁病・抑うつエピソード両方ある)のどちらか一度でもあれば双極性障害と診断されます。Ⅱ型の診断には、軽躁エピソード・抑うつエピソードのどちらも必要です。
参考:【臨床心理士が解説】うつ病の症状と特徴とは?5つの主な治療方法
1.眠らなくても平気である
睡眠時間がいつもより少なくても、平気になります。例えば、3時間睡眠であっても十分休めたと感じます。徹夜後はドーパミンの分泌が過剰になり、神経が興奮しやすいからです。
興奮した状態がさらに続くと、脳内でβエンドルフィンという快感ホルモンが分泌され、いわゆる「ランナーズハイ」の状態となります。ランナーズハイの最中は疲れや痛みを感じにくく、睡眠不足のダメージに脳が気づきにくい状態なので、注意しましょう。