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カウンセリングで用いられる傾聴とは何?
「傾聴」とはコミュニケーション技法のひとつで、カウンセリングでは欠かせないスキルです。傾聴することで話し手の気持ちに寄り添い、考えや心情を深く理解できます。より密度の濃いコミュニケーションがとれるため、絆を深め信頼関係を築くこともできるでしょう。
傾聴力は個人のカウンセリング以外にも、周りの人とのコミュニケーションやビジネスなどさまざまな場面で活かせるスキルです。たとえば、ビジネスの場で顧客の話を傾聴し相手が何を求めているのかを正しく理解できれば、適切な商品やサービスを提供できるでしょう。顧客満足度や信頼度が高まり、良好な関係構築にもつながります。
この記事では傾聴とは何かを解説し、傾聴の具体的なやり方をご紹介します。カウンセラーやコーチなど人の話を聴く職業の方はもちろん、傾聴力をつけて周りの人と円滑なコミュニケーションをとりたいと考える方はぜひ参考にしてください。
傾聴とはどのようなコミュニケーション技法?
相手の話をただ聞いているだけでは傾聴とは言えません。傾聴とは「聴く」という文字のとおり、「耳」と「目」と「心」を使ってじっくり話を聴くことです。傾聴するときに注意しなければならないのは、話の途中で個人的な判断をもとに話を遮ったり、批判したりしないこと。もし同意できない話題が出てきたとしても、まずは相手の気持ちに寄り添い、ありのままに話を受け止めることが大切です。適度にうなずきや相づちを入れながら共感する気持ちを示しましょう。
傾聴ができていると、話し手に「自分の話を聴いてもらえている」という安心感が生まれます。緊張感や警戒心が解け、自然な流れで本音を引き出しやすくなるでしょう。話を進めるうちに話し手自身の感情や考えが整理されていきます。「自分は本当はどう考えているのか」「なぜ悩んでいるのか」など自分自身への理解が深まり、迷いがなくなったりこれから進むべき道が見つかったりするでしょう。
大切な決断や判断を他人の指示やアドバイスに委ねることなく、自分で納得できる結論を導き出せるため、自信と成長にもつながります。
積極的傾聴の意味
「積極的傾聴(アクティブリスニング)」とは、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズが提唱した概念です。聴き手が主体的に働きかけ、話し手をより深く理解しようとするための傾聴を積極的傾聴といいます。
ロジャーズは自らがカウンセリングを行った多くの事例(クライアント)を分析しました。そして積極的傾聴をするにあたって「自己一致」、「無条件の肯定的関心」、「共感的理解」の3つの要素が重要であると示しました。
参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「傾聴とは」
自己一致
自己一致とは聴き手の心が安定し、ありのままの状態であること。話し手の気持ちや考えを深く理解するためには、聴き手自身も真摯な態度で聴くことが大切です。自分の感情に嘘をつかず、フラットな状態で話を聴きましょう。もし相手の話にわかりにくいところがあれば、そのまま受け流さず聞き直したり確認したりすることも必要です。
無条件の肯定的関心
無条件の肯定的関心とは、相手の話を善悪や好き嫌いの評価を入れずに受け入れること。たとえ同意できなくても否定したり批判したりしてはいけません。「あなたはこう考えるのですね」と受け入れます。そしてなぜそう考えるようになったのか、そこに至るまでに起こった出来事など、背景に関心を持ち肯定的に聴きます。肯定的な関心を持って聴くことで、相手は「受け入れられている」と実感でき、安心して話ができるのです。
共感的理解
共感的理解とは、相手の話を相手の立場に立って共感しながら理解しようとすること。相手が見ているものや感じているもの、考えていることなどを受け止め、想像することが大切です。
傾聴の具体的なやり方
傾聴とは何かを理解できたら、傾聴を実践してスキルを磨いていきましょう。
ここでは傾聴の具体的なやり方を説明します。傾聴は、相手の特徴や話の内容、場面などに合わせて適切な方法で行うことが大切です。傾聴のやり方を正しく理解し、効果的な傾聴のスキルを身につけましょう。
1.相手の気持ちを汲み取る
相手の気持ちを汲み取り、今何を考えているか、どんな精神状態なのかを理解しましょう。話の内容はもちろん、声のトーンや表情、目線の動き、仕草などさまざまな要素に気を配りながら話を聴いてください。
怒りや悲しみといったおおまかな感情だけでなく、不安、焦り、いらだち、恥じらい、憧れなど細かい心の動きまで丁寧に読み取ることを意識しましょう。
2.問題点を少しずつ明確にする
相手の精神状態を把握できたら共感する気持ちを示しましょう。たとえば、相手が「毎日帰りが遅くて大変です」と言ったら、「帰りが遅くて大変なんですね」とそのまま繰り返したり、「長時間働いているんですね」と別の言葉で言い換えたりします。共感の気持ちを示すことで「しっかり伝わっている」「理解してもらえている」という安心感を与えられ、本音を引き出しやすくなります。
相手が心を開き始めたら、話の続きを促して問題点を少しずつ明確にしましょう。「これまでもそうでしたか?」「もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」と自然に話の続きを促し、話し手が抱える悩みや問題点を洗い出します。
このときに結論を急ぎすぎたり自分の意見を押し付けたりしてはいけません。信頼関係を崩さないように、相手の気持ちを尊重しながら丁寧に進めることが大切です。
3.相手が可能な行為や範囲を明確にする
深刻な悩みや問題を抱えている人ほど、自分がどうしたらいいかわからず身動きが取れなくなっていることが多いでしょう。話を聴きながら相手の立場や状況を理解し、現段階でできそうなことを明確にするのが大切です。
相手が自然に気づけるように「まずは今の状況でできそうなことはありませんか?」「簡単なことからで大丈夫ですよ」と問いかけてみましょう。
まずは小さなことからでもできる行為や範囲を明確にし、「今できそうなこと」に自分で気づけるように導くことが問題解決への第一歩です。
4.相手の主体性が向いている方向・事柄に注目する
傾聴で大切なのは、悩みや問題を抱える話し手が自ら解決の道を見つけることです。そのためには相手が主体的に興味を示す事柄や取り組んでいることに注目し、考えや意見を聴きましょう。悩みや問題に直接結びつきそうにない内容でも結論を急いではいけません。まずは相手の主体性を尊重してください。
「どうしてそれをやりたいと思ったのですか?」「どんなところに魅力を感じますか?」といった主体性を促す質問をしてみましょう。質問の答えを考えるうちに話し手自身も気づいていなかった内側にある感情や希望に気づき、前向きな一歩を踏み出せます。