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生きづらさを感じている、アダルトチルドレン
皆さんは、アダルトチルドレンという単語を聞いたときに、どんな人のことを思い浮かべますか。どこかで聞いたことがある気もするけれど、実際どんな意味なのかわからない人は多いのではないでしょうか。
言葉だけをみると、「大人になりきれない子どもっぽい人」のことをイメージする人もいるかもしれませんね。実際は子どもの頃に心的外傷(トラウマ)により傷つき、心理的な影響を抱えたまま大人になった人のことを指します。
なぜか仕事やプライベートの人間関係がうまくいかず、現在の対人関係に幼少期の親や家族との関係性が影響していそうな場合には、アダルトチルドレンの可能性が高いといえます。
臨床心理士が解説する、アダルトチルドレンとは
アダルトチルドレンという言葉は、1969年に出版されたマーガレット・コークの「忘れられた子どもたち アルコール依存症の親に育てられた子どもについて」が始まりです。
その後、1970年代から1980年代にかけてアメリカでアルコール依存症の親が子どもに与える精神的な影響が注目され、アダルトチルドレン(Adult Children)概念が広まりました。通常、ACと略されます。
アダルトチルドレンは、元々はアルコール依存症の親に育てられた人を指す言葉でした。現代では意味が拡大し、養育不全の家庭のもとで育った人を意味する言葉になっています。
アダルトチルドレンの主な原因
アダルトチルドレンとは幼少期に自分を養育してくれるはずの親や家族との間で、何らかの心的外傷(トラウマ)を負い、大人になっても生きづらさを感じ、悩み苦しんでいる人のことをいいます。
本来であれば最も信頼できるはずの親や家族からひどい仕打ちを受けた分、人に対する不信感が根深く残ってしまい、対人関係上の悩みを抱えやすくなります。具体的には、極端に引きこもり親密な人付き合いを避けるなどの特徴がみられます。
かと思えば、一旦親密な関係の人ができると過剰に依存し、相手のために自己犠牲を払うようになることも。対人関係を全くきずけないか、きずけても依存してしまうかの両極端になります。
親密な関係になると今度は裏切られ、見捨てられるのではないかという気持ちがわいてきて疑心暗鬼になりがちです。過去の親や家族との関係と同じようなことが起こるかもしれないと構えるあまり、過去の不適切な関係を現在でも繰り返してしまうのです。
アダルトチルドレンの主な特徴
アダルトチルドレンには複数のタイプ分類があります。これは1985年にアメリカの心理療法家であるウェイン・クリッツバーグが発表した「アダルトチルドレン・シンドローム 自己発見と回復のためのステップ」という著書の中にある考え方です。
アダルトチルドレンは「機能不全家族」の中で育ち、家族が成り立つためにさまざまな役割を担うといいます。機能不全家族とは団結し、語り合い、お互いが支え合う家族としての機能が十分に備わっていない家庭のことを指します。
参考:Mentally 毒親の特徴&定義とは|毒親を改善して子どもにとって最高の両親に…
1.ヒーロー(英雄)
ヒーロー(英雄)タイプには、男性だけでなく女性も含まれます。ヒーロータイプは自分が活躍し世間から評価されることで、機能不全に陥る家族へ期待を与え救おうとします。勉強やスポーツをよく頑張る「できる人」「努力家」として周囲からみられるでしょう。
しかしその反面、常に成功し続けなければならないプレッシャーも感じています。
2.スケープゴート(生贄)
スケープゴート(生贄)は、ヒーロータイプと正反対の性質を持ちます。スケープゴートの人は、幼少期に親や家族から虐待を受けた経験のあることが多く、あえて問題児・病弱児となり家族の厄介者となろうとする点が特徴です。
ヒーロータイプは機能不全に陥る家族に期待を与え美化しようとしますが、スケープゴートタイプは自らが「家族の共通の敵」となり、バラバラの家族の結束力を高めようとします。
3.ロストワン(いない子)
ロストワンには迷子、存在感が薄い子という意味があります。他のタイプには際立った特徴が多いですが、ロストワンタイプは存在感をひた隠しにすることで自分の心を家族に傷つけられないように守ろうとします。
ロストワンタイプの人は集団の中で孤独感や疎外感を覚えやすいです。不登校や引きこもり、大人になっても転職が多いなどの問題を抱えやすい特徴があります。
4.ケアテイカー(世話役)
ケアテイカー(世話役)は、リトルナースとも呼ばれます。ケアテイカータイプは献身的で、誰かからお願いされなくても率先して世話を焼きますが、相手の気持ちを無視して世話を焼きすぎるのが特徴です。
幼少期に親の代わって家事をし、兄弟姉妹の世話役をしてきた経験のある人が多いでしょう。最近、話題となっている「ヤングケアラー」に近いタイプであるといえます。
5.ピエロ(道化師)
ピエロ(道化師)は一見明るく陽気な性格にみえますが、幼少期に両親の夫婦関係が悪かった人が多く、自分がおどけ役になることで家族の絆を保とうとします。
大人になっても周囲の人間関係が悪くなることを極端に恐れ、人にネガティブな感情を出せない、悩み事を1人で抱え込んでしまうなどの特徴がみられます。自分が何とかしなければ皆の機嫌が悪くなり、自分の居場所がなくなってしまうと思い込んでいるのです。