近年ともに働き、ともに家庭を営む夫婦が増えてきています。同時に時間や情報、あらゆるものに追われる毎日を過ごしている人も多いでしょう。また、働く人の約半数がメンタルヘルス不調をかかえているというデータもあります(※)。
※ 厚生労働省 令和2年版過労死等防止対策白書(本文) 「第一章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況 2 職場におけるメンタルヘルス対策の状況」
そこで今回、こころの相談アプリ「mentally」を提供する株式会社Mentally CEO・西村創一朗と、パートナーシップの専門家・あつたゆかによるオンラインイベントを開催。自分や大切な人が不調になったときにどうすればよいのか、不調なときのパートナーシップの維持方法などについて、具体例を交えながら解説しました。パートナーシップにお悩みの方、メンタルヘルスに興味のある方はぜひご覧ください。
登壇者
※イベントは2022年8月6日(土)20:00~〜オンラインにて実施
パートナーの客観的目線が「心の不調」に気づく鍵
風邪を引いたときは「熱が40℃近くあるから病院に行こう」といったわかりやすい指標がありますが、メンタル不調ではそうはいきません。「少し元気がないだけ」と思っていても実はうつ病一歩手前、というケースは意外と多いのです。
1つ目のテーマは「心の不調に気づくためのメンタルケアの基礎知識」について。
西村創一朗氏(以下:西村):今回は自分とパートナーの関係性で考えてみましょう。どちらも心身ともに健康なときもあれば、自分は健康だけどパートナーが不調なときもあります。ふたり同時にメンタル不調に陥るケースもないとはいえませんが、どちらかのメンタル不調に引っ張られてふたりともメンタル不調になるケースも多いです。
そのため、お互いが深刻な状況になる前に自分自身のメンタル不調に気づく、あるいはパートナーが客観的にみてメンタル不調に気づいてあげられるかが重要になります。
メンタル不調にもいくつかの症状がありますが、今回は罹患者数がもっとも多いうつ病のチェック項目を見ていきましょう。当てはまる項目が多く、症状が連続して2週間以上にわたっている場合、うつ病の疑いがあるので注意が必要です。
※上記はDSM-Ⅳ(精神疾患の診断と統計のためのマニュアル第4版)を元に作成しています。このほか、DSM-Ⅳの診断基準に対応した簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)を用いた「うつ病チェック」が厚労省から提供されているので、こちらも参考までにご活用ください。当てはまる項目が多い場合は、専門医のもとで適切な診断を受けることをおすすめします。
あつたゆか(以下:あつた):セルフチェックだと、「自分はそうじゃない」とメンタル不調を否定してしまうこともありそうですね……。
西村:おっしゃる通りで、メンタル不調が深刻化するほどセルフチェックでは気づけないケースも多いです。自分のことを普段から見てくれているパートナーと、客観的目線でチェックし合うことをおすすめします。
ただし、すべてふたりの間での判断は禁物。少しでもおかしいと感じたらカウンセリングを利用したり、病院を受診したりしてくださいね。
あつた:なるほど!メンタル不調のときは病院を探したり、電話をしたりするのもやっとなので、パートナーがいてくれると助かりますよね。「ひとりじゃない」と思えるだけでも心強いです。
レジリエンス強化とオリジナルのコーピングでメンタル不調に対処
実際に自分や家族がメンタル不調になった場合、どうしたら良いかわからない人も多いはず。「メンタル不調ならないためにはどうすれば良いか?」も含め、対処法を知っておくことが大切です。
西村:メンタルケアを行う上で大事な概念が「レジリエンスとコーピング」です。レジリエンスは精神的回復力のこと。ストレスを受けて体力や精神力が消耗しても、レジリエンスを高めることによってメンタルも強くなっていきます。
レジリエンスは鍛えることができる力です。アプローチ方法は睡眠、食事、運動、瞑想、休息などさまざま。しかし、「今日取り組んだら明日にはレジリエンスが強くなる」ことはないので、継続して鍛えていくことが大切です。
一方で、コーピングは受けたストレスを取り除く力のことをいいます。具体的にいうと、メンタル不調の要因となるストレスの根本的原因になるものや、それを受け取る自分の認知などにアプローチすることですね。コーピングにもさまざまなアプローチ方法があります。
出典:公益財団法人日本看護協会「専門職としてのキャリア継続の支援」
大切なのは、「こうすると自分にとって良いコーピングになる」というオリジナルリストを作ることです。そして、メンタル不調を感じたとき試してみる。その癖をつけておくと、ストレスに対して徐々に自分で対処できるようになります。一見メンタル不調の予防に役立ちそうなコーピングですが、実はメンタルダウンした後の回復段階にも活用できる考え方です。
あつた:予防に対する考え方と、メンタル不調になったときの解決策はほぼ変わらないんですね……!コーピングも6種類あることを初めて知りました。私は気晴らし型に偏っているので、たとえば社会支援探索型だったらどんな対処法があるだろう?と書き出していこうと思います。
西村:そうですね。書き出してみるといざというとき取り組みやすいだけでなく、自分のコーピングの特性もわかると思います!
最後に、パートナーがメンタル不調になったときの声がけ、対応のパターンを紹介します。ポイントは2つです。
①基本的に見守るスタンスで必要以上に声をかけすぎないこと
②まずはとことん休養する
相手が「心配をかけてしまっている」と負担に思うこともあるので、過度に声をかけすぎないようにしましょう。また、元気そうに見える場合でも、エネルギーを使うリフレッシュは後回しにしたほうが良いこともあります。最低でも2〜3週間、できれば1ヶ月くらいは休養期間にあてることがおすすめです。
しかし、どのタイミングで外に出ても大丈夫かは自己判断すると失敗することも。一番は「自分たちだけで解決しよう」とせずに専門家に頼ることですね。