睡眠はビジネススキルのひとつ。睡眠の専門家・矢間あやが提唱するカラダをゆるめるメソッド

睡眠×〇〇

仕事で集中力が続かない、ケアレスミスが多いといった悩みを抱える方は非常に多いです。

日中のパフォーマンスを最大化させるには、十分な休息と質の高い睡眠が欠かせません。しかし、ビジネスパーソンの大半は睡眠をはじめとする健康に関する情報に最も遠い存在であるのが実情といえます。

今回インタビューをしたのは、「カラダをゆるめて最高の睡眠を手に入れる」などの書籍を出版されている矢間あやさんです。理学療法士としての経験を活かし、現在は睡眠の専門家として一般社団法人睡眠body協会代表理事・オフィスculeepの代表として活躍されています。

「頑張らないを頑張ることが大切」と話す矢間さんが生み出した独自の睡眠メソッドが誕生するまでとこれからについて伺いながら、睡眠の重要性について一緒に考えていきます。

睡眠は人が健康であるために欠かせないもの

──睡眠の専門家として活躍されている矢間さん。現在の活動について教えてください。

睡眠の専門家として、睡眠に関する講演やセミナーへの登壇、商品の監修、自身のメソッドである『ゴロ寝リセット』『睡眠bodyメソッド』の伝承者を育成などを行っています。現在は、自身のメソッドを広めることにも力を入れているところです。

また企業向けに「ビジネスパーソンが健康意識を持つきっかけ」になれるような研修も行っています。

他にも、出版した際に、自分で広報PRを行った経験をもとに、組織と社会の人々との間に良い関係性を築き上げるための「経営戦略✖️PR」というサービスも行っています。

──活動のジャンルが多岐に渡っていますね。大切にしている軸はなんでしょうか?

「健康でやりたいことに挑戦する人を増やす」をミッションにしています。

腰が痛いし、歩くのもつらい…といった体の不調があると、どうしても気持ちは後ろ向きになりやすいです。病院で理学療法士として勤めていた頃も、患者さんから「何をやってもダメだ」といったネガティブな言葉を聞く機会も多かったです。

一方で、リハビリを通じて体の不調から解放されて健康な体になっていくと、気持ちも少しずつ前向きになっていき、患者さんが挑戦をして変わっていく姿も同時に見てきました。

挑戦といっても、散歩するようになったとか家庭菜園を始めたといった身近なものです。人が健康であることは、暮らしの豊かさにもつながっていくのだと私は考えています。

体調の変化を実感してから理学療法士を目指す

──理学療法士になったきっかけは、妊娠中の「マタニティエアロビクス」だったとか。

妊娠5ヶ月目のときにマタニティエアロビクスを勧められて、やってみたのが最初ですね。

もともと私は運動が得意な方ではありませんが、「妊婦向けのものなら……。」という軽い気持ちで参加。実際は、想像を遥かに超えるハードさで開始15分以降の記憶がないほどです。

でも、続けるうちに体の調子がいいと感じることが増えていき、「体を動かす楽しさ」や「体調の変化」を実感して、出産後もエアロビクスを続けていました。

──エアロビクスを続けるうちに、体を動かすことへの関心が高まったのですね。

そうですね、はじめは独学で勉強しました。解剖学やストレッチについて学び、解剖学に興味を持つうちに、海外のYogaに傾倒していきいました。

私はアヌサラヨガという日本ではあまり馴染みのないYogaをしていたのですが、海外のYogaコミュニティに入ったことで、「学びは教わるだけでなく、教えることも大切」だと教わり、学ぶだけでなく指導者になる機会が増えました。この頃は、区役所からの依頼で親子体操の先生をする機会もありましたね。

──Yogaや親子体操の先生から理学療法士を目指すようになったのはなぜでしょう?

海外のYogaコミュニティでYogaの先生をする方の中には、外国の理学療法士が多くいました。そこで「理学療法士」というリハビリの先生という仕事を知りました。

当時は、離婚を機に結婚前にしていたグラフィックデザイナーとして働いていくのか、熱量持って取り組んでいる今の先生の仕事を続けていくのかで迷っていた時期でした。

これから医療現場で指導していきたいと思い、まだ幼い息子を抱えながら理学療法士の養成学校に通うことを決意しました。

──その後、理学療法士として入職。現場で矢間さんが大切にされていたことは?

患者さんが主体的に改善できるリハビリ、病院外でも自分でできる方法をお伝えしていました。

医療現場では、リハビリに安易に来られる方も非常に多く、また社会復帰できたかもしれない方が、二度と戻れないということもあり、もどかしさを肌で感じていました。現場で患者さんと向き合う中で、予防することの大切さに改めて気付かされました。

──なるほど。患者さんの自主性を尊重したリハビリをされていたのですね!

そうですね。究極、私がいなくても平気な状態になることを目指していました。患者さんにも「自分の体は自分で改善できるようにする」というのは常々伝えていましたね。

現在提唱しているカラダをゆるめるメソッドも、このときに生まれたものです。

「今のままじゃ何も届けられない」独立を決意

──Global United Pageant2018 Mrs部門で優勝した経歴を持つ矢間さん。出場のきっかけは?

知人から「世界が変わるよ、出場してみない?」と声をかけてもらったのがきっかけです。英語も全然話せないけれど、とにかくやってみようと思い出場することを決めました。

当時は、理学療法士をしながら独立も考えていた時期でしたが、今後のビジョンが具体的に見えていなくて……。子どものこともありますし、私はこのままでいいのかと悩みもありましたね。

──そうだったんですね。出場したことでどんな変化がありましたか?

このまま理学療法士を続けていても「誰の力にもなれないままだ」と感じました。この経験は、人生のターニングポイントともいえる、自分が走り出せたきっかけです。

Global United Pageantは、社会貢献の一環であり、小児がんや子どもの啓発のための取り組みです。

病院で理学療法士をしていた当時の私は、正直腰掛けの状態だったと振り返ると感じます。Global United Pageantの受賞はそんな自分を奮い立たせてくれ、独立を決心できました。

独立を決心した後は、まず自分の経験を書籍にすることから始めてみようと出版塾に入りました。

はじめは、Global United Pageantの経験を書籍にしようと考えていたのですが、理学療法士としてお伝えしていたメソッドを出版塾のメンバーや先生から高く評価してもらって。

「カラダをゆるめる」「睡眠」というのは、自分だからこそできるテーマであるのだという発見でした。

──患者さんにお伝えしてた内容がまさに「カラダをゆるめるメソッド」だったのですね!

その通りです。はじめは腰痛や肩こりなどを緩和するためのひとつの方法だったのですが、患者さんからよく眠れるようになったという言葉もあり、睡眠の悩みの解消には「カラダをゆるめること」が欠かせないことがわかりました。

1冊目の著書、「カラダをゆるめて最高の睡眠をてに入れる」の出版を機に、睡眠の専門家として独立し、睡眠の独自メソッドを提唱するために『一般社団法人睡眠body®協会』を立ち上げました。

睡眠を整えることこそがビジネスパーソンには必要

──矢間さんは睡眠や健康を切り口に企業研修される機会も多いそうですが、企業からはどんなお声が多いのでしょうか?

睡眠のテーマでのご依頼が多いです。ウェルビーイングな働き方の実現は企業様も重要な課題であると感じられているのだと思います。

私はハラスメントといった職場内の人間関係、従業員の集中力を高めることなどの根本的な解決には、「睡眠不足の解消」が重要であると考えています。

──睡眠不足が仕事のパフォーマンスに影響を与えているということでしょうか?

その通りです。例えば、職場でパワハラが起きるのも睡眠不足が原因で感情が不安定になっていると考えられます。他にも、仕事に集中できず従業員のケアレスミスが多いのは睡眠の質が悪いことで日中の行動に影響を与えているケースも少なくありません。

従業員のメンタルヘルス向上を目指すのであれば、まずは睡眠というビジネススキルを身につけていくことが欠かせないのです。

寝具や照明といった物や環境だけに依存せずに、まずは体を整える。体をゆるめることこそが睡眠の質を高め、日中のパフォーマンスを最大化させる第一歩であるというのを、今以上に認知を広げていきたいです。

「頑張らないを頑張る」そんな世界を作っていきたい

──今後の矢間さんの展望をお聞かせください。

まずは、法人化を目指して今後も活動の幅を広げていきたいと考えています。あとは、メソッドを伝承できるメンバーを増やしていきたいですね。現在は私ともう1人しかおらず、メソッドを教えられるのは私だけです。今の体制のままでは、広められる範囲にどうしても限りがあります。

企業様向けの研修を通じて、ビジネスパーソンの健康意識を高めていくことは私の掲げているミッションにも通ずる部分です。睡眠やメンタルヘルスのテーマ、睡眠の質のフォーカスした「回復力研修」にも力を入れていきたいです。

──最後に睡眠に悩みを抱えている読者へ向けて、一言お願いします。

睡眠の悩みを解消していくには「頑張らないを頑張る」ことが大切です。

日本人は頑張りすぎてしまう真面目な方も多いので中には、睡眠の質を高めなくてはならない、毎日しっかり寝なくてはならないと頑張りすぎてしまう人もいるのではないでしょうか?「カラダをゆるめる」のも、毎日しなくてはいけないと義務にする必要はありません。

「ねばならない」といった極端な思考はメンタルダウンにもつながりますし、体をゆるめることにも難しさを感じてしまうかもしれません。

また、睡眠不足はメンタルダウンに直結し働けなくなるリスクにもなり得ます。睡眠の課題を放置せずに、早い段階で解決するためのセルフマネジメントができるようになってほしいです。睡眠という名のビジネススキルを身につけながら、やりたいことに挑戦し続ける気持ちを忘れずに過ごしてほしいと願っています。

目黒 真心

目黒 真心

フリーライター・コーチ・メンタルトレーナー|心理学卒、手帳とくま好き。元銀行員営業職。「穏やかな暮らしと心の伴走者」がモットー。

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