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ストレスで疲れた心を休ませるためには、休職制度を利用して自分のペースを取り戻すことが大切です。しかし、休職期間が長引くにつれて「このまま社会復帰ができなかったらどうしよう」「会社に戻ったら、また心を壊してしまうかも……」と不安に感じることもあるでしょう。
そこで利用できるのが、リワーク制度です。今回は、療養後のスムーズな復職をサポートしてくれるリワークについてご紹介します。医療機関や地域の助けを借りながら、心身ともに不安のない状態で社会に戻っていきましょう。
過半数以上が「リワーク」を全く知らなかった|認知度調査結果

株式会社Mentally 「日本のメンタルヘルス支援制度」認知度調査 2022年5月
176名の男女を対象にリワークに関するアンケートを行ったところ、「リワークを知っている」「実際に利用したことがある」と回答した人は全体の17.6%でした。「名前だけ聞いたことはある」と答えた人は30.7%、「まったく知らない」と答えた人は51.7%という結果に。
過半数の人がリワークの制度自体を知らず、実際に利用したことがある人との認識に大きな違いがあることがわかります。
リワークとは
リワークとは「return to work」の略語であり、精神疾患が原因で休職をしている人に向けた復職支援サービスです。
主に職場復帰や再休職防止を目的としており、リワークプログラムで決められた時間に施設へ通ったり認知行動療法などの心理療法を行ったりすることで、精神的に不安のない状態で再び社会で活躍できるようサポートを行います。
リワークは提供する母体によって大きく4つに分かれます。
・医療機関が提供する「医療リワーク」
・地域障害者職業センターが提供する「職リハリワーク」
・民間の企業が提供する「リワーク」
・企業が自社の従業員に対して提供する「職場リワーク」
リワークの種類によって特色や料金、実地母体が違うため、主治医と相談したり、いろいろなところを見学したりして、勤務状況や住居地も加味した上での適切なリワークを選択します。
リワーク利用対象者
リワークの利用対象者は種類によって異なります。それぞれの利用対象者をみていきましょう。
- リワーク:精神疾患で休職中の人のうち復職の意欲がある人が対象であり、主治医にリワーク支援の利用が可能だと判断された場合のみ利用可能です。
- 医療リワーク:利用期間は症状やプログラムの内容によって変わり、数ヵ月で終わる場合もあれば一年以上の利用が必要になる場合もあります。
- 職リハリワーク:会社に所属している人でメンタルヘルスの不調により休職している人が対象となります。ただし、公務員は利用できません。利用期限の上限は基本的に3ヵ月です。
- 職場リワーク:企業ごとに利用条件が異なります。企業により復職支援や提携機関などに特徴があるため、自分で条件を調べる必要があります。
- 民間系のリワーク:他のリワークと違い、復職の意欲があれば失業中でも参加可能です。施設によっては書類選考や面接を設けている場合もあり、その場合は通過することで参加できます。
リワーク利用するメリット
リワークの利用には、復職におけるさまざまなメリットがあります。以下に、主なリワークのメリットをまとめました。ただしリワークの内容は施設によって特色が違うため、享受できるメリットに差があります。
実際に利用予定の施設を見学しながら、どのようなメリットを享受できるか比較することも大切です
- 毎朝決まった時間に遅刻せずに通うことで、社会復帰後の生活リズムをイメージできる
- ソーシャルワーカーや公認心理師、臨床心理士、職業カウンセラーなど、専門的な立場から疾患における正しい知識を得られる
- 似た立場の仲間ができ、支え合いながら社会復帰を目指せる
- 集団で行うレクリエーションプログラムにより、社会で必要なコミュニケーションスキルが習得できる
- リワークを通して仮想的な職場を体験でき、復職後の環境をイメージできる
- 専門機関を通すため、復職において自分だけではなく職場にも安心感を与えらえる
- 復職後も再発予防教育などのフォローがある
医療機関によって行われる医療リワークでは、症状の回復と安定を目指した上で復職支援に特化したプログラムが実施されます。健康保険制度や自立支援医療制度を利用できるため、医学的リハビリテーションを受けながら安心して復職を目指すことが可能です。
職リハワークは、各県に1ヵ所以上設置されている地域障害者職業センターにて行われます。費用が無料であることもメリットで、休職者と雇用主、主治医の三者合意の上でスムーズな職場復帰を目指せます。
企業内で行われる職場リワークは、復職後に安定した就労ができるかをイメージしやすいのがメリットです。厚生労働省が定めるメンタルヘルス対策のひとつであるEAP(従業員支援プログラム)を用いる場合もあり、医療機関との連携も取れるため安心感があります。
また「試し出勤」の制度を通して職場に慣れることもでき、正式な復職を目指した段階的な行動が可能であることもメリットです。
リワークの利用方法と注意点
すべてのリワークで共通して用意するもの
リワーク利用にあたり、特別に必要なものはありません。
医療リワークを利用する際に用意するもの
普段の通院先以外で医療リワークを利用する際には、紹介状(診療情報提供書)が必要になる場合があります。
自立支援医療制度を利用する際には、申請の際に交付される「自己負担上限額管理表」と申請後に交付される「受給者証」の提示が必要です。
利用方法
- 自宅から通いやすいリワーク施設を調べる
- 施設を見学して、自分に合うか確認する
- 主治医や職場、他の支援機関との連携があるか確認する
- 施設にて申し込みを行う
リワークで通う施設を選ぶためには、まずは「自宅から通いやすいか」が大切です。往復時間が長いとモチベーションの低下につながり、途中で断念する確率が上がってしまいます。無理なく通える範囲の施設の中からいくつか見学し、雰囲気やプログラムが合う場所を選びましょう。スタッフと話しやすいかも重要なポイントです。
復職までの期間の猶予があれば、費用がかからない職リハリワークから探すことをおすすめします。信頼できる主治医からおすすめされた施設で選ぶのもよいでしょう。
どれも相性が悪かったり機関の余裕がなかったりする場合や、復職までのイメージを早く持ちたいと思っている人は職場リワークがおすすめです。企業の復職支援制度を調べ、必要資料や利用方法のリサーチを始めましょう。※企業によっては職場リワークを行っていない場合もあります。
注意点
ここでは、リワークの利用における注意点をご紹介します。
すべてのリワークで共通する注意点
リワークは退職済みの場合や休職していない場合は利用できません。会社に所属しており休職をしている且つ、復職の意欲がある人に向けた制度になります。とはいえ、施設によっては求職中でも利用可能な場合も。求職中の人は、利用予定の施設に事前に相談することをおすすめします。
またリワークは施設や症状によってプログラムが大きく変わります。見学に行っても相性の悪さを感じ、他の施設を見る前にリワーク自体を諦めてしまうケースも珍しくありません。また施設によっては規則が厳しく、人によってはストレスがたまってしまう場合も。複数の施設を回り、自分に合った施設・プログラムを選びましょう。民間系は特色がさまざまなので色々と見学するとよいでしょう。
医療リワークを利用する際の注意点
医療リワークを利用しようと思っても、普段の通院先では実地していない可能性があります。通院先や主治医が変更になるケースもあると理解しておきましょう。
職リハリワークを利用する際の注意点
費用がかからない職リハワークは人気が高いものの、施設数が限られているため満員で利用できない場合があります。申し込みから実際のリワーク開始まで数ヵ月かかることも。職リハワークはプログラムが基本的に3ヵ月で組まれているため、半年程度の時間的猶予が必要であることに中止しましょう。
職場リワークを利用する際の注意点
職場リワークは実際の復職をイメージして通うため、同僚や上司などの周りの目を気にしてしまう可能性があります。人によっては、周囲から向けられる関心や気遣いがストレスになる場合もあるでしょう。
民間系リワークを利用する際の注意点
民間系リワークでは施設利用に書類選考や面接が必要になるケースがあります。審査に落ちると利用できないため、復職や療養などのタイミングや予定が組みづらくなることもあるでしょう。また民間系リワーク施設は都市部を中心に展開されているため、都市部から離れている地域に住んでいる人は通いづらいという難点もあります。