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私たちが労働により得る収入は、必要経費を差し引いて残った金額が所得となり、所得税の対象となります。ただし、年間で多額の医療費が必要になった場合は、所得から一定の医療費を控除することで税額を下げることが可能です。
今回は、年間医療費の一部を課税対象から外せる「医療費控除」の制度についてご紹介します。診察代だけではなく、検査代や薬代、手術費用などさまざまな医療費を課税対象から外せる医療費控除。体を壊してしまったときに慌てないよう制度の仕組みを理解し、有効活用していきましょう。
【認知度調査】医療費控除は約9割が知っている身近な制度!

株式会社Mentally 「日本のメンタルヘルス支援制度」認知度調査 2022年5月
176名の男女を対象に医療費控除に関するアンケートを行ったところ、「医療費控除を知っている」「実際に利用したことがある」と回答した人は全体の65.4%でした。
「名前だけ聞いたことがある」と答えた人は28.4%、「まったく知らない」と答えた人は6.3%という結果になっています。
医療費控除とは
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が基準額を超えたとき、確定申告を行うことで超過支払い分の医療費が課税対象の所得から控除される仕組みです。
対象となる医療費は世帯ごとに換算され、本来支払う予定だった税金の一部が還付されます。未払いの医療費は、実際に支払った年の医療費控除の対象となります。
医療費控除が可能な時期は確定申告と同時期であるため、通常は毎年2月16日から3月15日までの1ヵ月間です(確定申告と同様に、その年に発生した医療費の控除は翌年の申告時期に提出し、対応してもらいます)。ただし、ビジネスパーソンを始めとする給与所得者による医療費控除の還付申告は、1月からでも受け付け可能です。
医療費控除は、下記の計算式によって算出された医療費控除額に応じて、税金の一部が還付されます。
1年間(1月~12月)に支払った医療費(※)ー10万円または所得総額の5%(いずれかの少ない額)=医療費控除額
医療費控除額の上限は200万円で、医療費控除を利用する場合はセルフメディケーション税制(ドラッグストアなどで販売されている対象医薬品を年間12,000円以上購入した際に、過払い分を所得から差し引き課税対象分から減額する制度)は利用できません。
(※)生命保険などから支給される給付金や健康保険から支給される高額医療費、出産育児一時金、一部負担還元金、家族療養費付加金などは「支払った医療費」に含まれません。
医療費控除の利用対象者
医療費控除の利用対象となるのは、自分・自分と生計を一にする配偶者やその他親族のために医療費を支払った人です。
年間に支払った医療費が10万円または所得総額の5%以上だった場合に適用されます。また、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額が適用されます。
医療費控除を利用するメリット
- 所得税が安くなる
- 住民税が安くなる
- 年末調整が済んでいる人は税額が還付される
医療費控除を利用することで、課税対象の所得から一定の医療費を差し引けます。結果的に所得税が安くなり、納税の負担が軽くなるのが大きなメリットです。
また、所得にかかる住民税の税率は10%であることから、医療費控除を適用するために確定申告をすると「医療費控除額の10%に当たる金額」の分だけ住民税が安くなります。住民税は翌年月以降に納める仕組みであるため、医療費控除で安くなった後の税額を翌年6月以降に納めることになります。
さらに年末調整で既に納税が終わっている人は、医療費控除を利用することで課税対象が減り、減税された分だけ税金が還付されます。