【生活保護】「生活していくお金がない…」セーフティーネットとして知っておきたい制度内容や利用方法

メンタルヘルス系支援制度


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生活保護の本来の目的は「最低限の生活の保障」です。生活保護は日本に生きる私たち一人ひとりが活用できる権利であり、決して恥ずかしいことではありません。

今回は、私たちの生活の生命線となる「生活保護」の制度についてご紹介します。金銭的にも精神的にも自分を追い込んでしまう前に生活保護について正しい知識を身に付け、正しい方法で心身の健康と生活の維持をしていきましょう。

生活保護は9割以上の人が知っている制度!

株式会社Mentally 「日本のメンタルヘルス支援制度」認知度調査 2022年5月

176名の男女を対象に生活保護に関するアンケートを行ったところ、「生活保護を知っている」「実際に利用したことがある」と回答した人は全体の77.3%でした。

「名前だけ聞いたことがある」と答えた人は21.0%、「まったく知らない」と答えた人は1.7%という結果になっています。

生活保護は、ニュースで名前を聞いたり学校の授業で習ったりした人も多いのではないでしょうか。9割以上の人が認知している制度であることは、国のセーフティーネットとしては前向きな結果といえるでしょう。

生活保護とは

生活保護とは、自分の資産や能力などをすべて活用しても生活に困窮する人に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度です。また生活を保障するだけではなく、将来的な自立も支援します。

日本で生きている私たちは、憲法によってさまざまな権利が守られています。そのうちのひとつが「生存権」です。生存権とは、国民が国家に対して自己の生存または生活のために必要な諸条件の確保を要求する権利。そして生存権の内容である「健康で文化的な最低限度の生活」が生活保護の基準となっています。

つまり生活保護とは、憲法が保障する権利を具体化したものです。生活保護という言葉の持つイメージにネガティブな印象を持っている人もいるかもしれませんが、決して恥ずかしいことや隠さなければいけないことではありません。

生活保護を受けられる基準となる最低生活費の計算は、【生活扶助(第1類)+生活扶助(第2類)+住宅扶助+その他の扶助=最低生活費】です。生活扶助は申込者と同居家族の年齢、居住している地域および世帯人数によって決定されるため、個々のケースで変動します。

また「生活保護を受けたら近所に知られてしまう」と誤解されているケースがありますが、生活保護の相談先である福祉事務所では守秘義務が課されています。職員や機関から個人情報が漏れることはありません。

生活保護の利用対象者

生活保護は、日本に永住している人であれば誰でも受給できる権利があります。しかし、実際に受給されるためには条件があり、基本的には「世帯収入が厚生労働省の定めた最低生活費以下」であることが前提です。世帯収入の目安は、移住している地域や世帯人数によっても変動します。

住宅扶助や障害者加算、母子加算、生活扶助などを合算した結果、最低生活費を下回っている人・世帯のみが「生命を維持できなくなる危険性がある」と判断され、生活保護の対象となるのです。年齢制限はなく、0歳から何歳までも受けられます。

生活保護法第4条2項により、民法においても「生活保護よりも身内からの援助のほうが優先される」と定められています。申請した場合、生活保護の担当者により3等身以内の直系血族に扶養調査(扶養照会)が行われます。ただし生活保護申請者がDV被害者であるなどの特殊事例の場合は、扶養照会は行われませんのでご安心ください。

また、病気や怪我などで働けない人や収入がなくて困っている人も生活保護の対象です。とはいえ自己申告では認めてもらえないケースが多く、診断書を求められることが一般的です。就労している場合でも、毎月の収入が最低生活費以下だと判断されれば受給が可能です。その際は、最低生活費に達していない分の差額を生活保護費で補う形になります。

生活保護を利用するメリット

生活保護を利用するメリットは2つあります。詳しくご紹介します。

健康で文化的な最低限度の生活をするための生活費を受け取れる

生活保護の最たるメリットは、健康的で文化的な最低限度の生活を送るために必要な金額を国から支給してもらえることです。事情があって働けない人はもちろん、働いていても給料が低く最低限度の生活ができない人も受給できます。

一部の支払いが免除になる

また生活保護を受給することで、国民年金保険料を始めとするさまざまな費用が免除・減免になることも大きなメリットです。食費や光熱費などの日常生活に必要な費用や家賃、医療・介護サービスの費用、葬祭費用なども支給してもらうことが可能です。

利用のためには申請や調査、資料提出などのステップが必要ですが、「すべての能力を活用しても最低限の生活を送ることができない」と正しく証明できれば、誰でも受給できます。

生活保護は生命維持のセーフティーネットになるだけではなく、新しい生活基盤を作るためのサポートにもなります。生活が困窮することを一時的に回避できるため、心身ともに一定の余裕がある状態で将来に向けた準備を進められるのです。

生活保護の利用方法

ここでは、生活保護の基本的な利用方法と注意点についてご紹介します。生活保護を利用する際は緊急性が高いケースもあるため、他の支援制度と比べると必要資料などは少ないことが特徴です。とはいえ利用条件やデメリットはさまざまであるため、自分でも利用できるかを事前に確認しておく必要があります。

用意するもの

生活保護の申請・受給において、特別に必要となるものはありません。ただし申請後の調査において、世帯収入や資産の状況がわかる資料の提出が必要になる場合もあります。

また精神疾患が原因で働けないことから生活保護を申請する場合は、医療機関から発行される診断書を準備しておくことをおすすめします。目に見えない疾患は担当者に詳細な症状が伝えづらく、本来は働くことが困難な場合でも「就労能力がある」と判断されてしまう可能性があるためです。

利用までの流れ

生活保護利用までの流れは以下の通りです。

  • 生活保護担当に事前の相談を行う
  • 保護の決定のために調査が実施される
  • 決定後、保護費が毎月支給される

生活保護を利用したい場合は、住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当を訪れます。生活保護の説明を聞きながら、生活福祉資金や各種社会保障施策の活用について検討していきます。

申請をした人には、本当に生活保護が必要であるかを審査するために以下に挙げる調査が行われます。

  • 家庭訪問(生活状況の把握・実地調査)
  • 資産調査(貯金額・保険・不動産など)
  • 年金などの社会保障給付・就労・収入の調査
  • 扶養義務者による扶養が可能であるかの調査(仕送りなど)
  • 就労の可能性の調査

調査の結果、生活保護を受給する条件をクリアした人が保護費を毎月受給できるようになります。保護費は、厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入(年金や就労収入など)を引いた額です。そのため、時代や情勢によっても変化します。

実際に生活保護費が受給されるのは、原則として申請から14日以内です。ただし、調査の過程で資産状況が把握できないなとの場合は30日まで延長する可能性もあるでしょう。できるだけ早く受給を開始するためには、ケースワーカーからの指導に素直に従うことが求められます。

無事に受給が開始された後は、収入の状況を毎月申告しながら、福祉事務所から訪れるケースワーカーの訪問調査に応えていく形となります。

生活保護を利用するときの注意点

生活保護を利用する際にはいくつか注意点があります。ここでは、意識すべき注意点を解説します。

ローン・クレジットカードの利用ができない

生活保護の受給中は、借金を返済することができません。そのため、一時的にお金を借りて後で返すシステムであるローンやクレジットカードは作れなくなります。そもそも、ローンを組まなければならない高価な商品(家・車などを含む)は、最低限の生活費しか与えられない生活保護では購入できないため、当然といえるでしょう。

福祉事務所による家庭訪問がある

生活保護の受給がはじまると、それぞれの世帯に担当のケースワーカーが配属されます。

ケースワーカーが世帯が抱える問題や生活状況、収入などを細かく把握するために、受給者は少なくとも年に2回以上直接面談を行わなくてはいけません。受給者が入院している場合、訪問は年に最低1回以上です。訪問は事前に連絡が来ることはほぼなく、指導が必要と思われる受給者に対しては本門頻度も高くなります。何度か注意や指導を受けたのにもかかわらず生活が改められない場合は、生活保護が停止される可能性があるでしょう。

節約をしなければならない

生活保護受給者には「能力に応じて勤労に励み、保護費を無駄遣いせず節約を図るなどして、生活の維持・向上に努めなければならない」という義務があります。そのため必要以上に贅沢をすることはできず、節度を持って生活をする必要があります。

ギャンブルによって得たお金は申告義務がある

お金を上手にやり繰りした上であれば、手元に残る保護費で嗜好品の購入やギャンブルをすることは可能です。しかし、ギャンブルで得たお金は申告義務があるだけではなく、保護費をつぎ込んでしまうと指導を受けるケースがあります。

貯蓄ができない場合がある

受け取った保護費を貯蓄に回すためには条件があります。例えば本人・家族のための進学費用や、資格取得のための費用など、将来的な自立につながる目的であれば認められています。贅沢品や株の購入のような自立とは無関係の貯蓄は禁止されているため、不安であれば福祉事務所に相談するとよいでしょう。

身内から援助を受けていると利用できない

資金が最低生活費を下回っている場合でも、家族や親族などの身内から援助を受けられると判断された場合には生活保護が受けられません。

所有する財産を調査される

生活保護を受給する際には、貯金額を始めとした財産を所持していないかも重要視されます。貯金がなくても土地や不動産を所持していれば、売却することで生活費をカバーできると判断されるためです(住宅ローンの支払いが終わっていれば、自宅に住み続けることは可能です)。

また、スマートフォンやパソコンの所持については、昨今はインターネットの環境が整っていることやスマートフォンを所持していることが前提の職場が多いため、ひと昔前と比べると許可が下りる可能性が高まっているようです。「就職活動や仕事に必要かどうか」が判断基準となりますが、絶対的な基準があるわけではありません。利用用途を明確にした上で担当者に相談をする必要があります。

しかし、申請において持っている財産すべてを失う必要はありません。例えば通院や通勤に必要な場合は車の所持が許されていますし、自治体に相談することでスマートフォンやパソコン、薄型テレビなども所持できる可能性があります。

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フリーランスwebライター/ボーカリスト。パニック障害やうつ病を患った経験を活かし、悩みを抱える方の心を暖められる記事をお届けします。得意分野はメンタル/恋愛/ペット。月と星と花と猫が好き。

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