「精神疾患があるので、仕事に就くことができない」
「病気の治療のため、経済的に苦しい」
このような悩みを持っている人は、多いのではないでしょうか。
生活をしていくには、少なからずお金が必要になります。しかし、金銭的な問題を口にするのは大きな勇気が必要ですよね。そこで頼りになるのが、障害年金制度の存在です。
この記事では、障害年金の特徴やメリットなどについて解説します。障害の影響で経済的な問題を抱えている人は、ぜひ参考にしてください。
障害年金を知っているのは80%以上!対して利用者は少数
株式会社Mentally 「日本のメンタルヘルス支援制度」認知度調査 2022年5月
株式会社Mentallyが障害年金の認知度について調査を行ったところ、障害年金を利用したことがある人はわずか1.7%という結果でした。つまり、100人いれば約2人しか制度を活用できていないということになります。
一方で、知っている、名前だけ聞いたことがあると答えた人は80%以上を占めています。このデータより、障害年金を認知はしているものの、利用経験がある人はまだまだ少ないということがうかがえました。
障害年金とは
障害年金とは、障害を持っているがゆえに働くことができないなど生活に困っている人に対して、経済的支援を行う日本の制度です。
障害年金は障害の程度によって等級が定められています。障害等級は、1級〜3級までに分けられており、数字が大きくなるほど症状が軽度になる仕組みです。また、障害年金の額は、個人が加入している公的年金の種類や病状の程度などを総合して決定されます。
例えば、初診日に国民年金に加入しており、障害等級が2級だった場合は月額64,941円(2018年度時点)です。ここで言う初診日とは、メンタルの不調によって初めて医療機関を受診した日となります。
障害年金の利用対象者
障害年金は、利用申請時に20歳以上65歳未満および審査を通過した人であれば、毎月障害年金を受給することができます。障害を持っているというだけでは利用対象にはならず、障害年金を受給するには以下の要件に当てはまっている必要があります。
- 外部障害:病気やケガによって、眼や聴覚、手足などの身体の外部に障害を負った人
- 内部障害:がんや糖尿病、心疾患や呼吸器疾患などの身体の内部に障害を持つ人
- 精神障害:統合失調症やうつ病、双極性障害や発達障害などを抱えている人。てんかんや知的障害を持つ人(神経症に含まれるパニック障害や適応障害などの人、パーソナリティー障害の人はその対象に含まない)
障害年金を利用するメリット
障害年金を活用するメリットは大きく分けて3つあります。それぞれのメリットについて見ていきましょう。
経済的な安心感が得られる
障害年金の申請が通れば、毎月決まった額が口座に振り込まれます。その年金は生活費にしたり、医療費にしたりなど自分の希望に沿って自由に使うことが可能です。障害によって働けなくても、お金の心配が少なくなれば、精神的に楽な生活を送ることができるでしょう。
国民年金が法定免除される
障害基礎年金1級もしくは2級に認定されると、その後の国民年金保険料の支払いは法的に免除されます。また、免除された期間は保険料を半分支払ったとみなされるのです。そのため、実際には支払っていなくても、将来受け取る老齢基礎年金に反映されるという強みが生じます。
障害年金は非課税となる
障害年金を受給しても、それは収入にはなりません。障害年金は非課税なので、確定申告の必要もないのです。例え、障害年金以外に収入がある場合でも、年金分は非課税扱いになります。
障害年金の利用方法と注意点
障害年金を利用(申請)する際には、いくつかの書類を用意しなければなりません。同時に、自分の状況が3つの条件に当てはまっているかどうかの注意も必要です。
用意するもの
- 初診状況等証明書:初診日を証明するためのものです。最初に受診した医療機関で作成してもらう必要があります
- 主治医による診断書:申請者の現在の病状について、主治医に記載を頼みましょう。診断書は、障害認定日より3ヵ月以内に作成されたものを提出する必要があります。障害認定日とは、初診日より1年6ヵ月以上が経過し、障害として認められた日のことです
- 病歴・就労状況等申立書:現在までの病気の経過や就労状況を記載する書類です。これは申請者が作成する必要があります
- 年金手帳:加入している年金の種類を確認するために提出します
- 戸籍謄本や住民票など:申請者の本人確認のために必要です
- 通帳:本人名義のものを用意します。障害年金の振込先として使用されます
この他にも、申請者の状況によって揃える書類が異なる場合がありますので、心配な方は市役所や年金事務所に相談してみてください。
利用方法
障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金に分類されます。初診時に、国民年金と厚生年金のどちらに加入していたかで決まります。それによって利用(申請)方法が異なりますので、確認のうえで手続きをしてください。
- 国民年金に加入していた場合
初診日に国民年金に加入していた人は、最寄りの市役所または年金事務所の窓口で申請しましょう。審査に通ることで、障害基礎年金1級または2級に認定されます。
2018年度における障害基礎年金1級は月額81,177円、障害基礎年金2級なら月額64,941円です。申請者に18歳未満の子どもがいる場合は、人数に合わせて加算されます。
- 厚生年金に加入していた場合
初診日に厚生年金に加入していた人は、最寄りの年金事務所に問い合わせてください。審査を通過すれば、障害厚生年金1級〜3級のいずれかに認定されます。
障害厚生年金は、障害基礎年金のように等級に合わせて定額を受給できるわけではありません。なぜなら、厚生年金の加入期間などによって、それぞれの受給額が異なるからです。ただ、障害基礎年金よりも障害厚生年金のほうが受給額は高くなる傾向にあります。
注意点
- 初診日が特定でき、その日から1年6ヵ月以上の経過が必要
障害年金は、初診日から1年6ヵ月以上が経過しても病状が治癒しない場合に、初めて申請が可能になります。つまり、必要な治療を行ったけれど回復せず、固定した状態の障害が残ってしまったがゆえに、社会・日常生活に支障をきたすことになったという考えのもとに成り立っているのです。
- 国民年金保険料を支払っていること
障害年金申請には、初診日の前日において初診日を含む前々月までに国民年金保険料を2/3以上支払っている必要があります。あるいは、初診日を含む月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がない人も対象です。
また、国民年金保険料の猶予や免除の手続きをしていた期間があっても、合算して2/3以上であれば申請ができます。
- 一定以上の障害の状態にあること
障害認定日に障害の状態が障害(厚生)年金1〜3級に当てはまる場合に、障害年金の申請が可能です。また、障害認定日に一定以上の障害の状態にないケースでも、その後に障害の程度が重くなり、障害等級に該当する際も申請ができます。
類似する支援制度
- 障害手当金
障害手当金とは、障害厚生年金3級に当てはまらない程度の障害を持っている人が受給できる一時金です。障害手当金を受給するためには、初診時に厚生年金に加入していなければならず、国民年金加入の場合は対象にはなりません。また、障害年金と同様に、国民年金保険料を一定額以上支払っていることが条件です。さらに、初診日から5年以内に傷病が治癒している必要がありますので、その点にも注意してください。
障害手当金の最低保証額は、2022年度において1,166,800円です。ただし、障害手当金は一時金ですので、1回のみの受け取りになります。
障害年金の活用で生活の苦しさを緩和しよう
障害年金を利用すると、障害を抱えながらもそれぞれのペースで生活をしたり、医療費を気にしすぎず治療に専念したりすることが可能になります。確かに、障害年金申請の際には必要な書類を集める苦労があると言えます。しかし、その作業を乗り越えることで、生活のしづらさを緩和することができるでしょう。
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▼参考資料
厚生労働省、日本年金機構 国民年金「障害基礎年金」
厚生労働省、日本年金機構 「障害年金のご案内」
日本年金機構「障害等級表」