今は健康に暮らしている私たちでも、時間の流れには逆らえません。すべての人に必ず平等に訪れるのが「老後」です。年齢を重ねるほど体力や判断能力は衰え、生活に不安や不便を感じることとなるでしょう。またメンタルヘルスは、老後になっても私たちを悩ませます。
そんなときに利用したいのが、地域包括支援センターです。高齢者の相談先として名前が挙がりやすい地域包括支援センターですが、具体的にどのような役割を担っているのかは知らない人も多いのではないでしょうか。
今回は、地域包括支援センターの特徴やメリット、注意点などをご紹介します。地域包括支援センターは、将来の自分だけではなく両親や親族が利用する可能性もあります。利用目的や利用方法などを学び、安心へとつなげていきましょう。
「地域包括支援センター」は約半数に知られていない!
株式会社Mentally 「日本のメンタルヘルス支援制度」認知度調査 2022年5月
176名の男女を対象に生活保護に関するアンケートを行ったところ、「地域包括支援センターを知っている」「実際に利用したことがある」と回答した人は全体の25%でした。
「名前だけ聞いたことがある」と答えた人は26.1%、「まったく知らない」と答えた人は48.9%という結果になっています。
地域包括支援センターは、高齢者に関連する施設です。家族や身近な親族の中に介護や支援を必要とする高齢者がいない人や、既に十分な支援を活用している人にはあまり馴染みがない施設だといえるでしょう。
しかし、今すぐに利用する予定はなくても将来的には家族や自分が利用する可能性はあります。老後に精神疾患を患ったときのことも考え、今から学んでおくことで将来の安心へとつながります。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターとは、「地域包括ケアシステム」の中核を担っている施設です。
高齢者が要介護になっても住み慣れた地域で過ごすためには、住まいや介護、医療などのサービスが必要です。これらのサービスを地域で提供するシステムを、地域包括ケアシステムといいます。また、精神疾患・障害へのサポートも行っています。
地域包括ケアシステムは2025年までに整備されることを目的としており、それぞれの地域の自治体が活動を行っている最中です。地域包括システムにおいて重要な役割である地域包括支援センターは、以下の4つの業務を担います。
- 介護予防ケアマネジメント
- 包括的・継続的ケアマネジメント
- 総合相談
- 権利擁護
この中でも地域包括支援センターがとくに力を入れているのは、介護関連のサービス。介護保険に関わる相談はもちろん、介護事業所の紹介や要介護認定の申請、介護サービスの手続きを申請するためのサポートなども行っています。
また老後の生活では孤独に苛まれるケースも多く、精神疾患を患ってしまうことも。地域包括支援センターでは高齢者のメンタルヘルスにおける相談機関としての役割も担っています。
地域包括支援センターを運営しているのは、市区町村から委託を受けた社会福祉法人や社会福祉協議会、医療法人など。保健師・社会福祉士・主任ケアマネージャーの3つの専門職が必ず配置されており、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを全うできるようにサポートを行います。
地域包括支援センターは高齢者の生活課題に対応するため、介護以外にも医療や保険などのさまざまな関連機関と連携をしています。地域内にある社会資源を活用した上で、高齢者の生活の困りごとを総合的に相談できる機関だといえるでしょう。
地域包括支援センターの利用対象者
地域包括支援センターは、65歳以上の高齢者とその家族、または介護や支援を行っている人が対象になります。高齢者本人が認知症などで判断能力が低下している場合は、本人の代理として家族などが利用できます。
地域包括支援センターを利用するメリット
ここでは、地域包括支援センターを利用するメリットについてご紹介します。地域包括支援センターは介護の悩みだけではなく、心の悩みの相談にも乗ってくれる施設なのです。
精神疾患を患った高齢者の不安をケアできる
精神疾患を患っていると判断力が鈍り、然るべき機関に相談しづらくなるものです。特に高齢者は加齢による体力・思考力の低下も合わさり、悩みや不安を一人で抱え込んでしまいがちに。地域包括支援センターではメンタルヘルスに悩む高齢者の相談機関としての役割を持ち、不安をケアしながら医療機関との連携を行います。
高齢者の介護に関する不安をケアできる
地域包括支援センターでは、要介護と認定された人や介護が必要になる可能性が高い人に、介護予防を目的とした支援を行います。これにより自立した生活が継続でき、身体症状の悪化を防ぐ手助けになります。
高齢者の持つさまざまな権利を守れる
地域包括支援センターは、高齢者の尊厳の保持も目的としています。尊厳保持の例は、高齢者が虐待被害に遭っていることの早期発見や、被害への対応などが挙げられます。加齢により判断能力が低下している高齢者に対しては、金銭的搾取や詐欺から守るために成年後継制度の活用をサポートすることも。
高齢者の悩みにおける総合的な相談窓口として機能する
高齢になるにつれて「困っているけれどどこに相談したらいいのかわからない」という悩みも増えるものです。地域包括支援センターは高齢者の各種相談に幅広く対応しており、メンタルヘルスの領域以外でも悩みの総合窓口として機能します。悩みに対して必要なサービスや制度を紹介してくれるため、生活の不便を解決・緩和に導いてくれます。
高齢者の家族の安心につながる
地域包括支援センターによって安心を得られるのは高齢者本人だけではありません。高齢者がセンターから適切なサポートや助言を受けることで、離れて暮らす家族の安心にもつながります。
地域包括支援センターの利用方法と注意点
ここでは、地域包括支援センターの利用方法や利用する際の注意点などをご紹介します。地域包括支援センターの利用を検討するタイミングは、実際に生活に不便が生じてからのケースが多いでしょう。いざというときに慌てないように、利用におけるポイントを抑えておくことが大切です。
用意するもの
地域包括支援センターを利用するために、必要なものはとくにありません。すべての高齢者が気軽に相談することができます。
利用方法
- 地域の自治体へ問い合わせる
- 予約をして直接相談に赴く
地域包括支援センターは、原則としてひとつの市区町村に一ヵ所設置されています。高齢者本人が住んでいる地域によって担当センターが決まっているため、地域の自治体へ問い合わせて自分の担当センターの情報を知りましょう。
実際に相談する際は、予約が必要な場合がありますので、事前に問い合わせて確認しておくと安心です。何らかの事情で直接担当センターに赴くのが難しい場合は、スタッフが自宅まで訪問してくれるケースもあります。
注意点
自治体によって呼び名が異なる場合がある
地域包括支援センターは、自治体や地域によって呼び名が異なる場合があります。その際は高齢者相談センターやシニアサポートセンター、高齢者あんしん相談センターなどの名称で呼ばれることが多いですが、詳細は地域のホームページで確認しておきましょう。
高齢者と家族が離れた距離に住んでいる場合は家族が利用しづらい
地域包括支援センターのサポートを必要とする高齢者と家族が遠く離れた場所に住んでいる場合、高齢者が住む場所にある地域包括支援センターを利用することになります。家族が利用する場合は、高齢者側の地域の地域包括支援センターに問い合わせる必要があります。
紹介されるサービスは無料とは限らない
地域包括支援センターの利用は、基本的には無料です。ただし、紹介されたサービスを利用する際には料金が発生する場合があります。例えば地域包括支援センターを通して介護事業所を紹介してもらう場合、相談料金や紹介料金は発生しませんが、実際に事業所を利用する際には事業所への利用料が発生します。
類似する支援制度
居宅介護支援事業所
地域包括支援センターはすべての高齢者の相談を受け付ける施設ですが、居宅介護支援事業所は要介護認定を受けている高齢者のケアプランを作成する事業所です。ケアマネージャーが常駐しており、介護サービス事業所の紹介を行います。また介護全般における質問や相談も受け付けています。
老人介護支援センター
要介護の高齢者や介護が必要になる可能性が高い高齢者、その家族のための相談機関です。相談に対する助言を行いながら、福祉サービスや各種保険が受けられるように必要に応じて関係機関との連絡調整を行います。
介護保険
介護が必要な人に給付される保険料で、40歳になると加入が義務付けられます。原則として、1割の自己負担を担っている人のみがサービスの対象です。前年度の所得に応じ、自己負担率が2割〜3割になる場合もあります。
街の窓口を積極的に活用しよう!
今回は、地域包括支援センターの特徴やメリット、注意点などをご紹介しました。
要介護認定や介護事業所の紹介などライフスタイルに直結する事柄から、日常的な相談、精神疾患における必要機関の斡旋まで受け付けてくれる地域包括支援センター。介護・医療・福祉の観点から、専門的な知識を用いて高齢者の暮らしをサポートしてくれます。
高齢者の心身に寄り添い、すべてのセンターが日常生活圏内に設置されていることも特徴です。自身や家族の将来をより安心なものにするためにも、ぜひ今のうちから最寄りの地域包括支援センターを調べてみてはいかがでしょうか。
最寄りの地域包括支援センターの検索はこちらから(参考:厚生労働省)