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仕事など、過度なストレスに襲われたら…
ストレス社会と呼ばれる現代社会では、仕事での人間関係の課題に直面したり、業務のノルマや仕事のプレッシャーに悩まされたりする方も少なくありません。2020年に実施された厚生労働省の労働安全衛生調査によれば、「現在の仕事や職場生活で強い不安やストレスを感じている」と回答した割合は54.2%。
また、仕事によるストレスが長期間にわたることは少なくありません。現代社会では、職場環境の悪化や業務内容の変更などにより過度なストレスに襲われることが多いでしょう。
ストレスを緩和させ、自分の心身の健康を守るための方法に「コーピング」が挙げられます。ストレスを感じたときにコーピングを実践するには、「コーピングリスト」の作成もおすすめです。
本記事では、コーピングへの理解を深めるとともに、仕事によるストレスがもたらす心身への影響を紹介します。自分の実践しやすいコーピング方法を見つけ、リスト作成をしてみましょう。
参考:厚生労働省「令和2年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」
コーピングの意味とは
コーピングについて心理学辞典では「特定の環境や自分自身の内部で生じたストレス反応へ対処すること」と定義されています。「問題に対処する」という意味を持つ“cope”から派生した言葉です。
コーピングは日常生活の中でストレスを感じたときに行う、自分に合った対処方法ともいえます。また、ストレスからくる精神的負担を軽減させ、自分が今よりも働きやすい環境にするために有効な手段でもあります。
仕事に対して過度に不安やストレスがある場合には、コーピングを活用してみましょう。
コーピングを日常に取り入れることは、自身のストレスとうまく付き合えるようになるだけではありません。仕事のモチベーション向上や業務パフォーマンスを高めることにもつながります。
参考:2020年 株式会社有斐閣出版 中島義明他 『心理学辞典』p.276
ストレッサーとは
ストレッサーとは、私たちの心身に影響を与えるストレスの原因を指します。ストレスの原因となる刺激は大きく3種類に分けられます。
- 物理的ストレッサー:気温や室温の暑さや寒さ、騒音や人混みなど
- 化学的ストレッサー:酸素の不足や過剰、過度なアルコール摂取、タバコなど
- 心理・社会的ストレッサー:仕事や家庭の問題、人間関係など
主に生活で感じているストレスの原因は「心理・社会的ストレッサー」です。職場での具体例では、業務量や仕事へのプレッシャー、人間関係の問題が挙げられます。
また、さまざまなストレス要因から心理面、行動面、身体面でストレス反応が起こります。心理面では、活力の低下、気分の落ち込みなどの症状です。行動面では、仕事のミスが増加、飲酒量の増加などが挙げられます。身体面の症状には、頭痛や目の疲れ、食欲不振などさまざまです。
ストレス状態が長期間にわたり、慢性的に症状が重い場合には、専門家に相談することも視野に入れてみましょう。
参考:厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『ストレスとは』」
コーピングの種類
ストレスを感じていることに気づいたとき、自分の心身の健康を守る手段としてコーピングを実践することは大切です。ここでは、コーピングの種類についてご紹介します。
コーピングは「情動焦点コーピング」「問題焦点コーピング」「ストレス解消型コーピング」の3つに分類されます。それぞれの特徴と具体的なコーピング方法を一緒に見ていきましょう。
情動焦点コーピング
情動焦点コーピングとは、ストレス要因に対する考え方や捉え方を変えようとする方法です。職場での失敗体験や対人関係の悩みなどの場合、すでに失敗したことや、相手の考え方や行動を変化させることは難しいです。
ストレスの原因を変化することが難しいケースには、ストレス要因に対する自分の捉え方を変化させることでストレスの軽減を図ることができるのです。他にも、感じているストレスを、家族や友人に話す中で自分の感情を整理することも、情動焦点コーピングの方法に挙げられます。
具体的に「職場での仕事のミスがストレス要因の場合」で考えてみましょう。この場合には情動焦点コーピングが有効です。仕事でミスしたことでストレスを感じ、「自分には向いていない」と落ち込んでいるときにできることは、2つ挙げられます。
1つめに、「自分には向いていない」と自分で捉えた考え方に注目することです。仕事をする上で全くミスしないことは人間には難しいもの。日々の仕事の中では、自分だからできた仕事もあるのではないでしょうか。
1つのミスだけで自己評価せず、日々の仕事への取り組みも見て自分の評価をするようにしましょう。ミス内容を振り返り、今の自分にできることを考えることで、仕事の失敗に対する考え方も前向きになるかと思います。
2つめに、仕事でミスをして感じた感情を家族や友人へ話すことです。他者へ当時の状況を説明することで、次にミスしないようにできることは何かを考えるきっかけにもなり得るのです。
問題焦点コーピング
問題焦点コーピングとは、ストレスの原因に直接働きかけ、ストレス状態の解決を図る方法です。仕事の業務量過多やハラスメントを受けている状況では、環境の改善やストレス要因と距離をとる方法が挙げられます。
具体的に、「仕事の業務量の多さがストレス要因の場合」を考えていきます。業務量の多さがストレス要因のケースでは、仕事を周囲の人へ振り分けることや、業務の取り組み方の改善策を立てるなど、ストレス要因の業務量を変化させることが可能です。他にも一旦仕事を休み、業務自体から自分を離し、距離を置くことも方法として考えられます。
ストレス解消型コーピング
ストレス解消型コーピングは、ストレスを感じてからコーピングを行う方法です。すでに感じているストレスを発散させる方法といえます。日常生活で「気分転換をすること」がストレス解消型コーピングに当てはまります。
職場での人間関係に悩んでいる場合でも、休みの日に友人と電話したり、お気に入りのテレビ番組を見る時間を過ごしたりすることで、人間関係によるストレスは緩和される場合があります。
気分転換をする方法は比較的日常に取り入れやすいコーピングの手段です。