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経営者・ボードメンバーが知っておくべきリスクマネジメント
企業は常にあらゆるリスクを抱えています。
事故や災害、感染症の流行などによる業績悪化、不正アクセスによる個人情報の流出など、さまざまな要因でリスクに直面する可能性があるでしょう。起こりうるリスクに適切に対応するために大切なのが、リスクを管理し、損失を回避もしくは低減させる「リスクマネジメント」です。
しかし、
「リスクマネジメントが重要と分かっていても、何から進めたらいいか分からない」
「リスクマネジメントをより効果的に進める方法を知りたい」
「そもそもリスクマネジメントとは…?」
など、リスクマネジメントについて悩みを抱える経営者やボードメンバーの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、リスクマネジメントの意味とリスクマネジメントの具体的な進め方について詳しく解説します。企業経営にかかわりの深い方やリスクマネジメントの担当者の方はぜひチェックしてみてください。
リスクマネジメントの意味・定義とは
リスクマネジメントとは、企業を取り巻くリスクを組織的に管理し、損失を回避または最小限に抑える経営管理手法のこと。つまり、将来的に起こるかもしれないあらゆるリスクを予測して、リスクが起きないように対策することです。
そして、万が一リスクが起きてしまった場合にも、損害や被害を最小限に抑えられるように適切な対策や対応ができる体制を整えておく。そのための一連のプロセスがリスクマネジメントです。
リスクマネジメントを怠ると、リスクが起きやすくなるのはもちろん、リスクが起きてしまった場合にも被害が深刻化し、企業としての社会的信頼を失うことにつながります。最悪の場合は経営困難に陥ってしまうおそれもあるでしょう。
経営目標を達成し、健全に事業を継続するために必要不可欠なのが、リスクマネジメントなのです。
参考:日本の人事部「リスクマネジメントとは――意味と例、導入時のプロセスやフレームワークをわかりやすく」
リスクヘッジとの違い
「リスクマネジメント」と混同しやすい言葉に「リスクヘッジ」があります。リスクヘッジとは、あらかじめリスクを予測し、それを避けるように対策を図ること。発生したリスクの影響をできるだけ抑える対策や減らす手段もリスクヘッジにあたります。
もともとは金融用語で、「1つの投資先の株価が下落しても、他の投資先でカバーできるように分散して投資する方法」を表す言葉でした。しかし、現代では広く「危険を避けること」を指して使われています。
一方リスクマネジメントは、リスクに対して適切な対策や対応ができる体制を整えるためのプロセス全体を指します。つまり、リスクマネジメントで予測されるリスクへの対応策のひとつがリスクヘッジです。
参考:マイナビニュース「リスクヘッジの使い方と例文 – 違いや英語表現も解説」
リスクマネジメントの主な特徴
リスクマネジメントの主な種類と、その特徴についてご紹介します。
リスクマネジメントにおけるリスクの処理方法には、「リスクファイナンシング」と「リスクコントロール」の2つの手法があります。それぞれの具体的な内容は以下の通りです。
参考:中小企業庁「リスクマネジメントの必要性」
フォーサイト「リスク・マネジメントとは?」
リスクファイナンシング
リスクファイナンシングとは、リスクにより損失が発生した場合に金銭的な補償を行うことです。リスクファイナンシングは主に以下の2つに分けられます。
- 保有:リスクにより発生した損失を自己資金で補填すること。積立金、準備金、引当金、借入金など。
- 移転:契約によって第三者に損失を負担してもらうこと。代表的なものは保険。
リスクコントロール
リスクコントロールとは、リスクそのものの発生を減らす、もしくは発生した際の被害を最小限に抑える手法のことです。リスクコントロールは主に以下の4つに分けられます。
- 回避:リスクを伴う活動自体を行わないこと。車を保有しない、新規事業を中止するなど。
- 損失防止:損失発生を未然に防ぐための対策をすること。機械の定期点検を行う、火災報知機を設置するなど。
- 損失削減:リスクが発生した場合の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策をすること。シートベルトを着用する、耐震工事をするなど。
- 分離/分散:リスクの発生源を1ヵ所に集中させず、分離・分散させる対策をすること。拠点を全国各地に持つ、複数の取引先と契約するなど。
不利益なことに追われないようにしよう
あらゆるリスクが存在するなかで、すべてのリスクに対応することは困難です。また、企業規模が小さいほど、リスクマネジメントに割ける資金や時間、人員などのリソースも限られてくるでしょう。
そのため、リスクの発生頻度や影響度を考慮して、対応の優先度を決める必要があります。ただし注意しなければならないのは、発生頻度や影響度の高いものだけが企業にとって大きなリスクになるとは限らないことです。
企業や組織の規模や状況、環境などによって、何がリスクになるかは変わってきます。リスクに対応できる方法も1つとは限らないでしょう。不利益なことに追われず、リスクマネジメントの効果を最大限に発揮するためにも、リスクを慎重かつ的確に見極めることが大切です。